心の交差。

ゆーり。

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結人の誕生日とクリアリーブル事件2。

結人の誕生日とクリアリーブル事件2⑩

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数分前 都内某所


結黄賊の仲間が、カラオケで楽しんでいる中――――一人の少年は、彼らとは正反対の方向へ足を向けていた。 人が誰も通らない一本道に、一人の影だけが浮かび上がる。
普段なら周りにはたくさんの仲間がいるはずなのに、いつもとは違う雰囲気を感じ少し寂しい思いをしながら――――少年は、ある場所で足を止めた。
そして周りを見渡し誰もいないことを確認すると、突然声を張り上げる。
「おい、いるんだろ!」
数秒後――――一人の少年――――未来の目の前に、ある人物が現れた。 その者を見るなり、未来は微笑みながら言葉を紡ぎ出す。
「この間は色々と世話になったな。 おねーさんのおかげで、無事にクリーブル事件を終わらせることができた。 感謝している」
その言葉を聞いた、未来の目の前にいる人物――――自称お姉さんも、微笑み返しながら言葉を綴った。
「そう。 よかったわ、私の情報が役に立ったみたいで」
「あぁ。 おねーさんの情報を疑わずに、信じてよかった。 
 まぁ、クリーブルのアジトに侵入したせいで色々と厄介なことになっちまったけど、最終的にはちゃんと終わらせることができたんだ。 だから後悔はしていねぇ」
「そう・・・」
そしてお姉さんは、不思議そうな面持ちをして一つの疑問を未来にぶつける。

「もう一人の坊やは、どうしたの? 今日は一緒じゃないのね」

「ッ・・・。 悠斗は・・・今、入院している」
「あらやだ、どこか悪いところでもあるの?」
「・・・いや、クリーブル事件の時に、少し怪我をしちまっただけだ。 そんなことより」
「?」
悠斗の話を持ち出されると同時に、真宮によって彼が刺されたという事実を思い出し――――感情的になってしまわないうちに、お姉さんに向かって違う話を切り出した。
「俺の件は、一応全て済んだ。 だから次は、俺がお前の言うことを聞く番だろ。 えぇと・・・何だっけ? 誰かをやっつけてほしいんだっけ?」
過去に交わした約束を思い出そうと、頭を掻きながら考え込んでいると――――突然お姉さんが、未来に一枚のメモを手渡してきた。
「今週の土曜日、13時半にこの場所へ行ってほしいの。 ここにやっつけてほしい例の人を呼ぶわ。 場所は言っても分からないと思ったから、メモに地図を簡単に描いておいた」
そのメモを受け取り眺めながら、お姉さんに向かって一つの違和感を投げかける。
「おい、土曜日ってクリーブル集会が行われる日じゃねぇか。 それに時間も近い」
「あら、坊やはクリーブルでもないのによく知っているわね」
「おねーさんの件はクリーブル集会と、何か関係があんのか?」
難しそうな表情を浮かべて言葉を放った未来に対し、お姉さんはねっとりとした目付きで少年のことを見つめながら、口角を上げて静かに言い放つ。

「いいえ? 坊やは高校生で平日は忙しいだろうから、休日である土曜日にしてあげたの」





金曜日 クリアリーブル集会前日 路上


「買い出しお疲れー!」
「今月はクリーブル事件のせいでたくさん救急セットを使っちまったけど、大丈夫かな。 ほら、金の方は」
「みんなから集めて買っているんだから、そんなに負担はないでしょ」
学校を終えた放課後、椎野、御子紫、北野は救急箱の中身の買い出しへ行っていた。 
本当は月の初めに買い出しへ行くのだが、今月はクリアリーブル事件があり後輩の分も手当てしていたため消費が激しく、下旬である今買いに行くことになったのだ。
「そう言えば倉庫の鍵がないから、救急セットを補充できないか。 まぁ仕方ない、それはいつかするとして・・・とりあえず暇だから、公園にでも行って時間を潰す?」
「賛成ー!」
「いいよ」

椎野の意見に二人は即賛成し、3人揃って自分たちの基地である公園へ向かっている中、話題は再びクリアリーブル事件となった。

御子紫「そういやさー、クリーブルって集団、マジ何なの? 人数多過ぎじゃね?」
北野「確かに。 あの後もう20人とか来ていたら、俺たちは危なかったよね」
椎野「そうそう。 既にいたあの人数でも、俺たちはギリギリだったしー・・・」
北野「あ、でも、ユイと真宮、悠斗と優がいたら、まだ俺たちは余裕で勝てたんじゃない?」
椎野「あ、そうか。 俺たちはみんな、集合していなかったのか」
御子紫「まぁ4人増えるだけでも、かなり変わるからな」
椎野「でも今回の件で思い知らされたよ。 数だったら、流石の俺たちでも危ないっていうこと・・・」
御子紫「それはまぁ・・・言えてる」
北野「ユイが“後輩を呼ぶまで待て”っていう判断は、正しかったんだね」
御子紫&椎野「「・・・」」

そんなことを話しているうちに公園へ着き、奥にあるベンチへと足を進めた。
「ここもさぁ、レアタイとの抗争がなかったら、もっといい印象になっていたのにな」
「それも言えてる」
椎野が苦笑しながら言うその発言に対し、御子紫も返していく。 
そして彼らより先にベンチへ着いた北野は、その上に買ってきた救急セットを置こうとした瞬間――――あるモノに気付き、動作が停止した。
「? どうしたー、北野」
彼の動作が一瞬にして止まったことに疑問を持った椎野は、そう尋ねながらベンチの目の前まで行き――――椎野も同様、あるモノを見てその場に固まる。
「おい・・・。 これ・・・」
そして続けて御子紫も、ベンチの上に置かれているあるモノを見た。 それは――――たった一枚の、紙切れ。 
飛ばされないよう、紙の上には小石が置かれている。 いや、そんなことはどうでもよく、一番重要なのは――――そこに書かれている、一つの文だった。
「御子紫! すぐにユイへ連絡だ!」
「え? あ、分かった!」
椎野にそう言われ、ポケットから急いで携帯を取り出し電話をかけようとする御子紫。 
この紙には大したことは書かれていないのだが、これから起こる悪いことを前もって伝えているような――――そのような一文だった。
それを見て、この場にいる3人はとてつもない恐怖に包まれる。 そして――――結人がここへ来ることを、大人しく待つことしかできなかった。

ちなみに――――その紙には簡単な地図も描かれており、その上にある一文にはこう書かれてあった。

『明日の土曜日12時45分、結黄賊のリーダーはこの場所へ来い』


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