159 / 365
文化祭とクリアリーブル事件。
文化祭とクリアリーブル事件②
しおりを挟む放課後 路上
「ユイー! 5組は文化祭の出し物、何に決まったんだよー」
帰り道、みんなと一緒に公園へ向かいながら歩いていると、未来が突然結人の背中に乗りかかりそう言ってくる。
「ユイー! ねぇねぇ、聞いてよ! 俺たちのクラスで決まった出し物ー!」
未来の質問に答えようとすると優もいきなり目の前に現れ、怒っているのか喜んでいるのかよく分からない表情でそう言ってきた。
「何だよ、優たちの出し物は」
本当は未来の問いを先に答えたかったのだが“早く聞いてほしい”という雰囲気を醸し出している優を優先し、仕方なく聞いてみる。
「あのね! 俺たち、男装女装コンテストをやるんだって!」
「男装女装?」
詳しく内容を聞くと、その名の通りクラスのみんながそれぞれ違う性別の衣装を着て、ステージの上を堂々と歩く――――というものらしい。 メイクも兼ねて。
結構本格的なコンテストだ。
「何だよ、優にピッタリじゃねぇか」
先程まで結人の背中に乗っかっていた未来はいつの間にか隣へ来ていて、笑いながら優にそう言った。
「俺は好きで女装したんじゃないし!」
「俺だってやりたくねぇよ」
優が怒っている中、コウも結人たちの会話に不機嫌そうに入り込んでくる。
「あぁ、そうか。 コウもやんのか。 イケメンであるコウが女装をしたら、どうなんのかねー? 今からでも楽しみだわー」
未来は相変わらずこの場に合わない発言をし、更に彼の機嫌を悪くさせた。
「未来、いい加減にしろよ」
「悪い悪い」
コウの声が突然低くなりそのことに怯えたのか、やっと未来も調子に乗っていたことを自覚したようだ。
「まだそっちの方がいいよ! 俺たちなんて合唱だぜ? やってらんねー」
そう言ってきたのは椎野。
―――3組は合唱か。
―――練習が大変そうだな。
「歌が上手い女子がいるから、その人がリーダーとなってやるんだって。 俺もあまりやりたくないけど」
北野が苦笑いをしながら、そう言って話に入ってくる。
「女装より合唱の方が恥ずかしくないじゃんー!」
優は頬を膨らましながら、椎野たちに向かってそう言った。
―――優がそれをやると、何か可愛いな。
「御子紫は何をやるんだー?」
そこで未来は、近くにいる御子紫にさり気なく話題を振る。
「んー? 俺たちはお笑いだって。 いくつかのグループに分かれてさ。 それで、それぞれのグループでお笑いのネタを考えて、ステージで披露!」
「へぇ、何それめっちゃ面白そう!」
「御子紫のグループ、期待してっから」
未来と椎野がお笑いということで、すぐに食い付いてきた。
―――お笑いかぁ。
―――その案は出てこなかったな。
―――1組は俺から見て元気なクラスだから、ピッタリかも。
「そんで? ユイたちは何をやんだよ」
話がひと段落したところで、改まって未来がそう聞いてくる。 そして、やっと結人はその問いに答えた。
「俺たちは劇だよ」
「お、マジで!? 俺たちも劇!」
「え、まさかの被り!? じゃあ、どっちの劇の方が完成度高いか勝負だな」
「望むところだ」
―――4組と被ったか。
―――まぁ、ステージでやるもんって言ったら劇は定番だからな。
―――4組のも楽しみだ。
―――どんな内容の劇をやるんだろう。
みんなと話しているうちに公園へ着き、みんなはまた他愛のない話で盛り上がる。 そんな中、またあの少年が口を開いた。
「なぁ! 俺たちも、文化祭のいい思い出を作ろうぜ!」
そう――――未来だ。 未来がブランコの上に立ちながら、みんなに向かって笑顔でそう言った。
「文化祭のいい思い出?」
「例えば?」
「ユーシって、あるだろ? あれに参加するんだよ。 俺たちが二つのグループに分かれて、勝負しようぜ!」
ユーシ。 それは沙楽学園の文化祭内で行われる、イベントの一つだ。 そのユーシというのは、誰でも参加がOKで何をやってもいい。
ステージの上で目立ちたい人が、何かしらを披露する。 定番なのはバンドやダンスだ。 自分の得意なものをみんなに披露する者もいた。
そのユーシは1年の出し物が終わった後に行われる。 そしてユーシが終わった後、よかったチームに一人一票を投票する仕組みだ。
それも終わった後は生徒は皆解散し、2年の教室へ行ったり模擬店へ行ったりして文化祭の残りの時間を楽しむ。
そして文化祭の終わりに、上位3位のチームが発表されることになっていた。
そのユーシに、未来は『出よう』と言っている。 どうやらみんなも、その意見に賛成しているようだ。 披露する内容は、みんなの意見により歌とダンス対決に決まった。
「よし決まり! チーム分けは責任を持って、この関口未来が平等に決める。 それでいいな!」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる