心の交差。

ゆーり。

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うそつきピエロ。

うそつきピエロ㊱

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「優。 優が今日向に考えている仕返し。 それを全て聞かせてくれよ」

少し時間を遡ろう。 優が今日、学校で結人と話していた時のことだ。 彼のこの質問に対し、優はこう答えた。 そこから先の会話を、みんなには教えてあげよう。

「いいよ、全部話す」
「さんきゅ。 ・・・で、優は何をする気なんだ? そして、どこまで絡んでいる」
「どこまで、って言われても・・・」
その質問に対して答えに困っていると、結人は今までのことをまとめ上げた。
「今まで日向の身の回りで起こったこと。 俺の知っている限りのことを挙げるぞ。 まずはシスコンというデマ。 そんで、牧野の彼女の写メの流出。 落書きに物隠し。 
 それに、秋元による日向への悪口。 ・・・いや、いじめ?」
「あぁ・・・」
「これ全部、優がやったんだろ。 ちょっとやり過ぎじゃねぇか? 特に、秋元に関しては」
不機嫌そうに言う結人に――――優は、笑顔でこう返した。 そう、これが本当の目的。 今まで日向にしてきたことは――――最終的に、これに繋がるのだ。
「でもね、ユイ。 これはいじめじゃないんだよ? 俺は日向をいじめてなんかいない」
「そうは言っても、優がやっていることはいじめのギリギリライン・・・」

「だって、これはサプライズなんだから」

「・・・は?」
そう――――これはサプライズ。 日向に、サプライズをしただけなのだ。
「それはどういう・・・」
「いやー、未来に日向のことを色々調べてもらってさー! そしたらなんと! 日向の誕生日がもうすぐってことが分かったんだよ!」
「ッ・・・。 ・・・優、まさか」
「そう。 だから考えたんだ。 日向にする仕返しを、全てバースデイサプライズにしようって!」
「優・・・」
でもこれは、優にとってはいい考えだと思っていた。 日向はこれをいじめだと思うかもしれない。 いじめだと思い、先生にチクるかもしれない。 だが、これはサプライズ。 
いじめではなく、サプライズなのだ。 

そう言えば――――日向は、何も言えなくなるだろう? 

優を見つめながら唖然としている結人に、説明をし始める。
「1組のクラスのみんなにも、牧野と秋元たちにも協力してもらったんだ。 クラスのみんなには、日向の退院祝いのサプライズってことで説明を通しておいた。
 そしたらみんなは『楽しそう』とか言って、喜んで協力してくれたよ」
「でも・・・牧野たちは流石に協力しねぇだろ! 日向とダチなんだぞ」
「うん、そうだね。 でも脅したら簡単に協力してくれたよ?」
「脅し?」
「うん。 御子紫がいじめに遭った時のこと、憶えてる? その中で起きた、御子紫の教科書に落書きをされたことあったでしょ?
 あれ、完全には消えていなかったんだよ。 だから御子紫からその教科書を貸してもらって、二人に見せたんだ。
 『この落書きをしたってことを先生に言ってほしくないなら、俺に協力してほしい』 そう言ったら瞬殺だったよ、ははッ」

そう――――これが優の考えた日向への仕返しだ。 まず、日向に仕返してやりたかったこと。 それは優とコウの仲のことだ。 優とコウの友情は永久不滅。 
それを日向にどうしても見せつけたくて、昨日はわざと1組へ行き日向の目の届くところにいた。 
この優たちを見てどう思ったのかは分からないが、優たちの仲のよさを彼に見せつけられたのならそれでいい。 そして、もう一つの仕返し。 それは御子紫の件だ。 
今回もそうだが、御子紫の件も忘れてはいない。 彼がやられたことをそのまま日向にやり返した。 それだけだ。 そして――――最後の仕返し。
それは優が経験した、今まで信頼していた友達に裏切られるということ。 コウに『嫌い』と言われた時は凄く傷付いた。 苦しくて、泣いたりもした。
だからこの苦しい気持ちを、日向も味わえばいい。 自分とコウの関係に亀裂を入れた、最低な日向に。 

―――お前だって、俺たちの気持ちを味わってよ。
―――じゃなかったら不公平だろ! 

自分だけこんな気持ちを味わうなんて、そんなのはおかしい。 日向の思い通りになんてさせたくない。
優がコウに裏切られた時の気持ち、日向には分からないだろうけど――――今回で、分からせてやりたかったのだ。
「優・・・」
これらの説明を聞いて戸惑っている結人に、更に説明を付け足していく。
「ユイ。 日向をいじめているって先生や日向自身に思われないように、隠した物もちゃんと返した。
 それにシスコンのデマだって、クラスのみんなには『暴言は吐かないように』って予め言っておいた。 だから、これはいじめじゃないよ。
 あー、でも、秋元から日向に言った言葉に関しては除いてね。 友情を壊すことについては、暴言を吐いたりしても構わないと思っているから」
「・・・」
「で、コウが次に日向から呼び出された時、ネタばらしをする。 コウがまた殴られたりしたら嫌だからね」
「優」
未だに困った表情をしている彼に向かって、優は少し微笑みながらこう言い放した。
「どう? とってもいい、バースデイサプライズでしょ。 ・・・これは全て、ドッキリなんだ」
優が今まで話したことについてそうまとめ上げると、結人は苦笑いをしながらこう言葉を口にする。
「優・・・。 何ていうか・・・流石だな。 まぁ・・・優らしくて、いいんじゃね?」

―――・・・よかった。 
―――ユイも認めてくれた。 
―――でもユイは今、俺のことを“卑怯な奴だな”って思ったでしょ? 
―――・・・思ったよね、きっと。 
―――自分でも、そう思うからさ。

「ユイ」
「ん?」
「最後に一つだけ、頼みたいことがあるんだ」
「何だよ」
「日向をさ、○○○○○○○○?」
「・・・分かった、いいよ」
「ありがとう、ユイ!」

そう礼を言った後、コウがやって来たのだ。 その時に『日向に呼ばれた』と言われた。
やはり結人はこの仕返しがあまり気に食わなかったのか、この知らせを喜んでいた。 日向に呼ばれた、つまり彼への仕返しはもう終わり。 
優は結人に投げやりに言葉を言い捨て、1組へ向かった。 そしてこの時、みんなに言ったのだ。 
『今日の放課後退院サプライズのことを日向にネタばらしするから、明日からは普通に接してほしい』と。 

どうだろうか――――優が考えた、このサプライズ。 

―――我ながらにいいアイデアだと思っている。 
―――だって『いじめだろ』って言われても『これはサプライズだから』と言って誤魔化せるんだ。 
―――もう最高じゃん。 
―――まぁ、自分でもやっていることは最低だとは思うけどね。 

だが最初にやっていた仕返しなんて、本当はどうでもいい。 一番大事なのは、牧野と秋元から裏切られること。 
このことに関して、日向が少しでも優の気持ちが分かってくれたのならそれでいい。 こんなことまでしたくはなかったが、彼を痛め付けるにはこうするしかなかったのだ。 

―――仕方ないだろ? 
―――自業自得だよ、自業自得。 
―――でもちゃんと、俺は日向の誕生日を祝ってあげるからさ。 
―――もちろん心を込めて。

―――さて・・・日向は、これはサプライズだと言ったらどんな反応をするのかな?


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