心の交差。

ゆーり。

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うそつきピエロ。

うそつきピエロ㉞

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時はほんの少し遡る。 結人と日向が廊下でぶつかっている間、瀬翔吹優は教室で一人この状況を楽しんでいた。
―――あぁ、楽しみだなぁ楽しみだなぁ! 
―――もう楽し過ぎて彼を見るたびに、ついにやけちゃうよ。 
―――これでも頑張って、無表情を作るようにはしているんだよ?
日向への仕返し計画が始まってから二日が経つ。 彼は優の考えた計画に、見事ハマっていた。 本当、素直過ぎて笑ってしまう程。
―――さーて・・・。 
―――これからは何をしてやろうかな。 
―――クラスのみんなの前で笑われ者にする? 
―――だったらもっと面白い噂を考えないと。
―――じゃあ、何か物を隠す? 
―――んー、でも隠す系はもうネタ切れ。 
―――・・・まぁ、いいや。
―――しばらくは日向の様子を見ていようじゃんか。 
―――どんどんと苦しんでいく無様な姿を、さ。 
―――さぁて・・・。

「日向は、どこまで耐えられるのかな」

「優」

にやけながら小さくそう呟くと、突然目の前に結人が現れた。
―――マズい、今の聞こえていないよね? 
―――聞こえていたら、俺のキャラが崩れちゃうよ。
「何? ユイ」
「体操服、ちゃんと日向に返してきたよ」
「あぁ、ありがとう。 ・・・えっと、それだけ?」
そう聞くと、結人は何とも言えない難しい顔をしながら言葉を口にしていく。
「なぁ・・・優? 優は、どこまで関わっているんだ?」
「どこまでって?」
「日向の身の回りで起こっていること、優はどこまで関わってんだよ。 ・・・ちょっと、やり過ぎじゃねぇか?」
「日向の身の回りで起こっていること・・・? んー、ほとんどが俺のせいかな」
「もう止めておけよ、そろそろアイツ暴れ出すぞ」
「まだ時間はあるもん! まだまだ日向にやり返したいことは山ほどある。 それに、ユイからも許可は貰ったはずだ!」
「そうだけどさぁ・・・」
そうだ、これで終わるわけにはいかない。 自分とコウは今の日向以上に苦しんだのだ。 

だからもっともっと、彼に痛い目を――――

そんなことを考えていると、結人は優にこう尋ねてきた。
「優。 優が今日向に考えている仕返し。 それを全て聞かせてくれよ」
その言葉に、少し戸惑う。
―――んー・・・。 
―――別にいいけど、ユイは何て思うのかな。 
―――・・・俺のこと“卑怯な奴だな”って思うのかな。 
―――・・・まぁ、いいや。 
―――ユイを信じよう。
迷った挙句、彼に全てを話すことにした。
「いいよ、全部話す」
結人にことの全てを話している同時刻。 優の知らない間に、彼は動いていたのだ。

「・・・神崎。 今日の放課後、いつものところへ来いよ」
「・・・分かった」

彼らの会話になんて全く気付かずに、優は結人に向かって話をしていた。 彼に全てを打ち明けている時も、優はとてもワクワクしている。
改めて日向にしてきたことを振り返ってみると“結構壮大なことをしているなぁ”と、感じながら。 

そして――――結人に話をし始めてから、5分後。
「・・・分かった、いいよ」
「ありがとう、ユイ!」
優が結人にあることについて感謝していると、突然誰かが話に割って入ってきた。
「優」
「ん?」
声のした方へ振り向くと、そこにはコウが立っている。
「コウ! どうしたの?」
先程からの笑顔を絶やさずに、コウに向かってそう口にした。 だが、彼の発する次の一言によって――――優の笑顔は、一瞬で消え去ることになる。

「・・・日向に、呼び出された」

「・・・え」

―――え・・・もう? 
―――もう終わり?
優が唖然として何も言えずにいると、結人はコウからのその一言が嬉しかったのか笑いながらこう言ってきた。
「優、分かっているよな?」
―――何だ・・・もう終わりなのか。 
―――・・・つまんないの。 
―――もっとやりたいことがたくさんあったのに。
「ゆーうー?」
何も返事をしない優の顔を、下から覗き込みながら結人は呼んでくる。 そしてこの空気に耐えられず、優は結人に向かって頬を膨らまし声を上げた。
「もう、分かったよ! 俺1組へ行ってくる」
―――あーあ。 
―――もっと楽しみたかったなぁ。 
―――早いよ日向、ギブアップするの。 
―――もうちょっと耐えてほしかったのに。
―――・・・まぁ、いいか。 
―――日向自身がこの仕返しによって少しでも苦しんでくれたのなら、それで許してやろう。

優は1組へ着き、日向がこの場にいないことを確認して口を開く。
「みんな、聞いて!」


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