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うそつきピエロ。
うそつきピエロ⑬
しおりを挟む翌日 休み時間 沙楽学園1年4組
この教室では、未来と悠斗が一緒に昨日の出来事について話し合っていた。
「昨日は牧野たちから、何か情報を得られた?」
「あー、それがさぁ・・・。 ・・・あんま、いい情報は得られなかった」
「何て二人に聞いたんだよ」
「えーと。 ・・・あぁ『二人はコウのいじめに関わっているのか』って聞いたら『関わっていない』って言われた」
「え? じゃあ実際いじめに関わっているのは、日向だけってこと?」
未来はそのことについて、悠斗に全てを話した。
「怖くて怖気付いた・・・。 何か、弱いな」
「弱いよなー。 あー、あとは『どうしてコウをいじめの対象にするんだ』って、聞いたわ」
「で、何だって?」
彼らはあぁ言ってはいたが、本当なのだろうか。 本当に――――コウが自己犠牲する少年だと知らずに、標的にしたのだろうか。
「まぁ・・・。 クラスが隣で近かったってのと、コウをいじめたら優が仕返しに来るって普通思うだろ?
だから喧嘩に弱そうな優が仕返しに来てもいいように、優じゃなくてコウを選んだんだと」
「へぇ・・・。 何か日向の奴、最後の最後まで運が悪いな」
「だよな、悠斗もそう思うだろ! 優の仕返し、マジ怖ぇのにな」
「あまり大袈裟なことにならないといいんだけどね」
そして未来は、これらの話を一言でまとめた。
「つまり、日向はまだ諦めていなかったということだ!」
「・・・え、そこ?」
「え? そこってどこ?」
「・・・」
未来のその一言により、二人の間には気まずい空気が流れ込む。 だがこの雰囲気には耐えられず、未来は慌てて違う話題を悠斗に振った。
「あぁ、そうだ悠斗! 悠斗は昨日、大丈夫だったのかよ。 コウをちゃんと引き止めることができたのか?」
「できたよ。 昨日は夜遅くまで、コウと一緒にいたし」
「へぇ。 何て言って引き止めたんだよ?」
「ん? いや・・・。 別にそれは、聞かなくてもよくね?」
「そう言われると余計気になるじゃん。 何つって引き止めたんだー?」
未来が前のめりになってそう尋ねると、悠斗は言いにくそうな表情をしながら静かにこう口にする。
「・・・『未来が藍梨さんのことをまだ諦めていないらしいんだけど、どうしたらいいと思う?』って聞いた」
「・・・はぁ?」
「コウなら、人の悩みとかちゃんと聞いてくれるだろ? だから、相談事を持ちかけた方が引き止められるかなって」
―――だからって、何でそんな内容の相談なんだよ。
「そんなもん、真面目に聞いてくれるわけがねぇだろ」
「そうでもなかったよ? コウは親身になって、その悩みを聞いてくれたし」
「え・・・。 マジで?」
「うん。 あまりにも真剣に考えてくれるから、少し申し訳ない気持ちになったけど」
「・・・で、最終的にはどんな結論に至ったんだ?」
「『まぁ、別に無理して諦めなくてもいいんじゃないかな』ってことで、話は終わったかな」
「なッ、おい悠斗! そんな結果はもうとっくに出ているだろうがぁッ!」
「お二人さん、何話してんのー?」
「!?」
突然そのような言葉が聞こえ、未来は声がした方へ勢いよく振り返った。 そこには、4組の教室の窓から顔だけを覗かせている、真宮の姿が目に入る。
「・・・何だよ、真宮か。 驚かせんな!」
「悪い悪い。 で、二人は何を話していたんだ?」
「それはー・・・。 テレビだよテレビ! 昨日見たテレビについて、悠斗と話していたんだ!」
「そんな難しい顔をして?」
「なッ・・・」
―――・・・くそッ。
―――何なんだよ真宮は。
―――どうしてこういい時に限って、首を突っ込んでくるんだ。
「・・・何だよ真宮。 また俺らを止めにきたのか?」
彼には自分たちがしようとしていることがバレていると確信し、そう口にした。
「いや、別に? 二人が話しているのって、どうせ優たちのことだろ?」
「え・・・。 どうして分かるんだよ」
とりあえず“バレてしまった”的なフリをする。
―――・・・やっぱり、真宮にはバレていたんだな。
―――真宮には敵わねぇわ。
「ははッ。 顔に出ているよ、未来」
そう言って、真宮はいたずらっぽく笑った。
「じゃ。 もう俺にはバレたってことで、俺にも話してくれるか?」
「いいけど・・・。 俺たちも詳しくは知らないぜ? コウと優からも、直接は聞いてねぇし。 俺たちが勝手に予測した結論だ」
「いいよ。 それでもいいから、聞かせて?」
そんな真宮のことを信用し、優たちにおそらく今起こっているだろうこと、そして未来たちがこれからしようとしていることについて全て話した。
結果、全て彼は相槌を打ちながら真剣に話を聞いてくれ、未来たちに協力するとも言ってくれた。
未来たちはこれからしばらく、日向を尾行して何をするのか監視する。 そして日向がコウをいじめている現場を目撃しても、自分たちからは手を出さないということに決めた。
本当は無理してでも止めたいのだが、ここは優の役目だと思ったからだ。 ここで自分たちが手を出すと、今まで頑張ってきた優に何か申し訳ない気がするから。
流石に日向がコウを銃で撃とうとでもしたら、止めに入るが―――― そんなこんなで、未来と悠斗と真宮は日向に視点を置き、しばらく様子を見守ることにした。
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