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みんなでキャンプ。
みんなでキャンプ⑤
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「手分けして捜そうぜ。 もうすぐ暗くなるし」
「そうだな、そうしよう」
未だに戻ってこない藍梨たちが心配なため、結人は真宮のその意見に賛成した。
「じゃあ、ユイと伊達はここで待ってて! それでもし未来たちが戻ってきたら、連絡して!」
「あぁ、分かった! みんな電波が届くところにいろよ! それと、必ず二人以上で行動しろ!」
「「「了解!」」」
みんなが返事をし、バラバラになってこの場から離れていくのを最後まで見届ける。
―――・・・無事でいてくれよ。
―――藍梨、未来、悠斗。
結人と伊達は特にすることもなく、家族連れの人が次々と帰っていくのをただぼんやりと眺めていた。
ここで藍梨たちのことを心配しても、今の自分は動いてもいないため意味がない。 だから3人が戻ってくることを、そして仲間が無事に戻ってくることを待つしかできなかった。
未だに何も話さず、少しずつ時間が過ぎていく中――――伊達は静かに口を開き、こう言葉を発する。
「・・・ユイ」
「ん? どうした」
「・・・どうして、みんなは俺に優しくしてくれるんだよ」
「え?」
―――何だよ、その質問。
―――・・・みんなはそういう奴だから、答えようがないじゃないか。
その問いに何も返すことができず黙っていると、彼は続けて発言する。
「・・・ユイが、俺に優しくするようみんなに命令したのか?」
「は? 何だよそれ」
―――いや・・・待てよ。
―――その言葉、どこかで聞いたことがあるような・・・?
―――・・・そうか。
―――藍梨に言われた言葉と同じか。
―――俺が藍梨に、結黄賊みんなのことを紹介した後に言われたんだっけ。
結人が『みんなは藍梨のことを大切にしてくれるよ』と言ったら、藍梨は『そうみんなに命令したの?』と返してきたのだ。
―――何で、藍梨と伊達の言葉が重なるのかな。
―――・・・こんな時に限って。
そのことが気に食わなくて、少し伊達に八つ当たりするよう言葉を返す。
「俺はみんなにそんなことは言ってねぇよ。 それに命令もしてねぇ。 伊達は、みんなのことをそんなに信用できないのか」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「別にいいよ、無理しなくて。 伊達はまだ、俺たちと出会ってばかりだしそう思われても仕方ないからな」
「だから違うって!」
「じゃあどういう意味なんだよ」
冷たい口調でそう言い放つと、彼は少し困ったような表情をした。
「・・・ただ、俺がみんなと交ざってこの場にいて、迷惑じゃないのかなって」
―――・・・そっか。
―――伊達は、みんなが伊達に対して異様に優しくしてくれるから、違和感を感じていただけなのかな。
そんな彼に、気持ちを切り替えて明るい口調で言葉を綴る。
「そう思いながらダチの関係を保つドロドロとした友情は、女だけだっつーの。 俺たちは男だぜ? そんな難しいこと、考えんなよ」
「・・・」
何も言おうとしない伊達に、結人は続けた。
「それに、俺たちは伊達がいて迷惑だなんて思っていない。 寧ろ歓迎する。 いて迷惑な奴を、キャンプになんて誘わねぇよ。
・・・俺たちには、伊達みたいな存在も必要だからさ」
最後の発言に伊達は再び困った表情を見せたが、それは一瞬にして消え去った。 彼はその言葉を聞いて安心したのか『そっか』と言いながら微笑んでくれる。
その時――――聞き慣れた声が、ふと遠くから耳に届いた。
「結人ー!」
―――え・・・?
―――藍梨?
声のした方へ振り返ると、そこには藍梨がこちらへ向かって走ってくる姿が目に入った。 彼女の後ろには、未来と悠斗もいる。
―――・・・あれ、未来はどうしてあんなに服が汚れてんだ?
「俺、みんなに連絡するよ」
「あぁ、ありがとう」
伊達に“見つかった”という連絡を任せ、結人は彼女のもとへと走った。
「藍梨! 無事だったか? 心配していたんだぞ」
「ごめんね? でも楽しかったよ」
「楽しかった?」
藍梨と会話をしていると、未来と悠斗も遅れてやって来た。 そして悠斗から口を開く。
「遅くなってごめん。 電波も届かなかったみたいだね、藍梨さんの携帯にたくさん連絡がきていたみたいだけど」
「みんなはー?」
「みんなはお前らを捜しに行ったよ。 つか、今までどこへ行っていた」
「これは全部未来が悪いんだ」
「未来が?」
そのことについて、悠斗に詳しく聞いてみた。 未来は彼らの後ろでふてくされた態度をとっているため、話が聞ける状態ではないと思ったからだ。
「3人で歩いていたらさ。 未来が突然『出たー!』とか言いながら、一人で騒ぎ出して。 何が出たのか聞き出そうとしたら、走ってどこかへ行っちゃったんだよ。
それで未来がいなくなって、追いかけて捜そうとしたら、俺と藍梨さんの目の前に突然白いワンピースを着た小さな女の子が現れてね。
だからきっと、未来はその子を幽霊だと思って勘違いしたのかなって」
「勘違いじゃねぇ! あれは本物だ!」
「本物じゃないって。 あの後、女の子の後ろから家族が付いてきていただろ」
「そんな家族、俺は見てねぇ」
「未来が走ってどこかへ行った後に来たんだよ」
「でもアイツは地面から浮いていた!」
「浮いていないから」
悠斗は身体を結人の方へ向けたまま、顔だけを後ろへ向け未来と言い合っていた。 そんな二人の会話の中に、結人も割り込む。
「でッ! 未来をどうやって見つけたんだ?」
そう尋ねると、悠斗が再び視線を戻し口を開いた。
「俺と藍梨さんで、一緒に未来を捜し回っていたんだ。 未来がどんどん山の中へ入っていくから、きっと電波が届かなかったんだと思うよ。
しばらく捜していると、遠くから『悠斗ー!』って叫ぶ声が聞こえて。 声を頼りに足を進めていったら、未来はこんな姿になって見つかったよ」
そう言って、悠斗は泥だらけの未来を見た。
「何があったんだよ、未来」
「・・・転んだ」
「転んだ?」
「走っていたら滑って崖から落ちそうになったんだ! 俺はマジ危なかったんだからな!」
「あぁ・・・。 はいはい」
―――そういうことか。
―――未来の今の姿は醜いけど、無事ならよかった。
―――でもまぁ、未来らしい理由だな。
―――いい冒険ができたんじゃないか?
―――3人もちゃんと、戻ってきてくれたことだし。
「未来ー!」
すると遠くから、優たちが走って戻ってきた。
「お前らどこへ行っていたんだよ」
「うわ、何で未来そんなに汚れてんの!?」
「誰かにいじめられた?」
「いじめられてねぇ」
「誰かに泥でも投げられた?」
「だから投げられてねぇ!」
みんなが無事に戻ってきて、再集合した。
―――みんな、ちゃんといるよな。
未来と悠斗が相変わらずの仲でよかった。
未来が遠くから『悠斗ー!』と叫び助けを求めるのは“やはり未来は子供だな”と思うが、これは相手が悠斗でないときっと呼ばなかっただろう。
みんなのくだらない会話に耳を傾けながら少し楽しむと、結人はみんなをまとめ上げた。
「よし! それじゃあみんな、キャンプ場へ戻るか」
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