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第十一章「あなたの人生を委ねてほしい」
第51話 サプライズは突然に
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明日花side……★
結局、あの日から葉月さんと会えない日々が続いていた。電話やメッセージでは変わらない声色で話すけれど、きっと本心は隠されている。
モヤモヤしたスッキリしない日々が過ぎていく。
「明日花さん、どうした? もう11時だけど、まだ寝ないん?」
「あ、ごめんなさい。すぐ行くね」
スマホを充電器に接続して、壱嵩さんの待つベッドに潜り込んだ。明日は壱嵩さんの仕事が休みの日だ。彼の背中に腕を回して力一杯抱き締めて、ねだるように上目で覗き込んだ。
「んー……、今日はちょっと待っててくれないかな?」
二人の距離、あと三センチというところで拒否されてショックを隠さなかった。嘘でしょう、そんな。
大抵のワガママは受け入れてくれる壱嵩さんの否定に、思考がどんどん闇色を染まっていく。込み上がる涙、悲しくてツラくて視界がどんどん歪んでいく。
「明日花さん、違うんだよ。これには理由があって」
「理由って何? ちゃんと言ってくれないと分からないよ」
壱嵩さんは顰め面のまま悩んでいたが、観念したように抱き寄せて心の傷を癒してくれた。彼の大きな手に頭を撫でられて、悲しい気持ちが薄れて消えていくのを感じていた。
「まぁ、これをサプライズにするには無理があるよな……。それに当の本人を悲しませてしまったら意味がないし」
サプライズ……?
首を傾げていると、おもむろにベッドに押し倒されて、両手を押さえられながら唇を塞がれた。温かくて柔らかい感触が全ての感情を奪っていく。
彼の艶かしい指先の動きが肌を刺激する。
「明日花さん。今日は全部、俺がしたいようにさせてもらえないかな?」
「したいように……って?」
突然の提案にゴクリと唾を飲み込んだ。
壱嵩さんのしたいことって、何だろう?
一通りのマニアックな行為が脳内に広がり、緊張で身体が強張った。大好きな彼の為なら覚悟を決めるしかない。
「あ、あまり痛くしないでね?」
「いや、そんな痛いことなんて! いや、違うんだよ……むしろ逆。普段よりも気持ちよくしてあげたいなって思って」
普段よりも気持ちよく?
いや、壱嵩さんは前戯も本番も丁寧で時間を掛けて解して愛撫してくれるから、不満なんて微塵もないんだけれども。
むしろいつも以上に攻められたら、意識を失ってしまう可能性がある。行為の最中に気を失うなんて、それは嫌だ。
「待って、明日花さん。今、変なことを考えてるでしょう? 違うんだよ……そう言うのじゃなくて。ほら、明日花さんは——あと一時間で誕生日だから」
誕生日……?
そうだ、明日は私の誕生日だ。すっかり忘れていた。
「え、自分の誕生日を忘れるもんなの?」
「だって、ここ数年、当日に祝ってもらった記憶がないし。自分の為にケーキを買うのもなんか違うし」
「でも、俺の時にはあんなに気合いを入れて祝ってくれたのに?」
彼氏の誕生日は特別だ。喜んでもらいたかったし、色々計画を立てるのも楽しかった。
でも、そっか……。
今年は私の為に誕生日を祝ってくれる人がいるんだ。こそばゆい感情か心を擽り続ける。ニヤニヤしてしまう口角を止められなかった。
「16日まで、あと五十分……。できればいろんな話をしながら待ちたいけど、明日花さんはどうする?」
壱嵩さんが色々と計画を立ててくれていた中、私は盛ってエッチなことをねだって。あまりにも恥ずかしい失態に穴があったら入りたい気持ちに苛まれた。耳まで真っ赤になった顔を隠しながら、私は壱嵩さんの腕にしがみついて横に座った。
「——何の話をする?」
壱嵩さんは満足そうに笑みを浮かべて「そうだね」と言葉を紡ぎ始めた。
———……★
「そして私たちは、もっと互いのことを知るために言葉を交わし合った」
結局、あの日から葉月さんと会えない日々が続いていた。電話やメッセージでは変わらない声色で話すけれど、きっと本心は隠されている。
モヤモヤしたスッキリしない日々が過ぎていく。
「明日花さん、どうした? もう11時だけど、まだ寝ないん?」
「あ、ごめんなさい。すぐ行くね」
スマホを充電器に接続して、壱嵩さんの待つベッドに潜り込んだ。明日は壱嵩さんの仕事が休みの日だ。彼の背中に腕を回して力一杯抱き締めて、ねだるように上目で覗き込んだ。
「んー……、今日はちょっと待っててくれないかな?」
二人の距離、あと三センチというところで拒否されてショックを隠さなかった。嘘でしょう、そんな。
大抵のワガママは受け入れてくれる壱嵩さんの否定に、思考がどんどん闇色を染まっていく。込み上がる涙、悲しくてツラくて視界がどんどん歪んでいく。
「明日花さん、違うんだよ。これには理由があって」
「理由って何? ちゃんと言ってくれないと分からないよ」
壱嵩さんは顰め面のまま悩んでいたが、観念したように抱き寄せて心の傷を癒してくれた。彼の大きな手に頭を撫でられて、悲しい気持ちが薄れて消えていくのを感じていた。
「まぁ、これをサプライズにするには無理があるよな……。それに当の本人を悲しませてしまったら意味がないし」
サプライズ……?
首を傾げていると、おもむろにベッドに押し倒されて、両手を押さえられながら唇を塞がれた。温かくて柔らかい感触が全ての感情を奪っていく。
彼の艶かしい指先の動きが肌を刺激する。
「明日花さん。今日は全部、俺がしたいようにさせてもらえないかな?」
「したいように……って?」
突然の提案にゴクリと唾を飲み込んだ。
壱嵩さんのしたいことって、何だろう?
一通りのマニアックな行為が脳内に広がり、緊張で身体が強張った。大好きな彼の為なら覚悟を決めるしかない。
「あ、あまり痛くしないでね?」
「いや、そんな痛いことなんて! いや、違うんだよ……むしろ逆。普段よりも気持ちよくしてあげたいなって思って」
普段よりも気持ちよく?
いや、壱嵩さんは前戯も本番も丁寧で時間を掛けて解して愛撫してくれるから、不満なんて微塵もないんだけれども。
むしろいつも以上に攻められたら、意識を失ってしまう可能性がある。行為の最中に気を失うなんて、それは嫌だ。
「待って、明日花さん。今、変なことを考えてるでしょう? 違うんだよ……そう言うのじゃなくて。ほら、明日花さんは——あと一時間で誕生日だから」
誕生日……?
そうだ、明日は私の誕生日だ。すっかり忘れていた。
「え、自分の誕生日を忘れるもんなの?」
「だって、ここ数年、当日に祝ってもらった記憶がないし。自分の為にケーキを買うのもなんか違うし」
「でも、俺の時にはあんなに気合いを入れて祝ってくれたのに?」
彼氏の誕生日は特別だ。喜んでもらいたかったし、色々計画を立てるのも楽しかった。
でも、そっか……。
今年は私の為に誕生日を祝ってくれる人がいるんだ。こそばゆい感情か心を擽り続ける。ニヤニヤしてしまう口角を止められなかった。
「16日まで、あと五十分……。できればいろんな話をしながら待ちたいけど、明日花さんはどうする?」
壱嵩さんが色々と計画を立ててくれていた中、私は盛ってエッチなことをねだって。あまりにも恥ずかしい失態に穴があったら入りたい気持ちに苛まれた。耳まで真っ赤になった顔を隠しながら、私は壱嵩さんの腕にしがみついて横に座った。
「——何の話をする?」
壱嵩さんは満足そうに笑みを浮かべて「そうだね」と言葉を紡ぎ始めた。
———……★
「そして私たちは、もっと互いのことを知るために言葉を交わし合った」
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