明日、その花はどんな彩で咲くのだろう——セフレ、浮気、嫌なモノをまとめて捨てた日から運命が変わりました

中村青

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第十章「皆で一緒に楽しい今を」

第50話 過去の男と、今【R−15】

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 明日花side……★

 瑛太さんの家で飲み会があってから、心なしか壱嵩さんの様子がおかしい気がする。ずっと上の空で、私の声が届いていないみたい。

「ねぇ、壱嵩さん。何かあった?」

 瑛太さんと喧嘩でもしたのだろうかと尋ねてみても有耶無耶にされるだけだった。

 初めは何も言わない壱嵩さんに腹を立てていたが、だんだん不安が大きくなっていった。
 もしかして、いつまでも成長しない私に愛想を尽かし始めたのだろうか?

 最初は色々と努力をしていたのもも、長続きしなくて曖昧になっていることも増えてきていた。
 今まで優しく見守っていてくれた壱嵩さんだったが、いよいよ堪忍袋の緒が切れたのかもしれない。

「ヤダな……壱嵩さんに嫌われたら、生きていけない」

 彼ほど私に優しくしてくれた人を知らない。
 どんなことがあっても許してくれた壱嵩さんに甘え過ぎていた面は否定できないが、嫌われるくらいなら改善したい。

 私は壱嵩さんを失いたくない。
 無表情のまま考えにふけている壱嵩さんの手を取って、ギューっと握り締めた。
 そんな私の行動に驚いたように、彼は戸惑いながら身体を起こして見てきた。

「なっ、急にどうした?」

 どうしたじゃない——……。
 何も言わない壱嵩さんが何を考えているか不安だったのに、当の本人は何くわない顔でズルい。

 私は無理やり彼の上に乗り掛かって向き合うように抱き付いた。

「あ、明日花さん?」
「——壱嵩さんは、もう……大丈夫なの?」
「大丈夫って何が? ——あ」

 時間が経っているとはいえ、あれだけの精力促進剤を飲んで何もしないなんて、それはそれで問題ありだと私は思う。

 トイレに行ってから様子がおかしくなったけど、一人でスッキリしてきたのかな?

「壱嵩さん、その……私もイチャイチャしたい」

 ここはもう壱嵩さんの部屋だ。気兼ねなくできる空間なのだから、遠慮しなくてもいいはずだ。

 彼の首筋に顔を埋め、甘噛みするように口を当てた。私の好きな壱嵩さんの匂い。お気に入りのカモミールとシトラスの香りが刈り上げた襟足から鼻腔を刺激した。

「ズルいな、明日花さんは……。俺はさっき、あんなに我慢していたのに」

 服や下着の上からまさぐった指がくにくにと動く。胸元の開いた服だったせいで、簡単に入ってきた指が敏感な場所を弾いてあそび始めた。

「……明日花さんは、俺と出会った時に前の人と比べたりした?」
「え? 前の人って?」

 ポロッと溢した言葉にハッとした壱嵩さんは、気まずそうに顔を顰めた。

 前のって、康介のことだよね?

「急にどうしたの? 康介がどうかした?」
「いや、大したことじゃないんだけど……少し不安になって」

 目線が合わないように逸らす彼を見て『壱嵩さんでも不安になることがあるんだ』って、妙な親近感を覚えながら受け止めていた。

 そりゃ、多少は影がチラチラしたことはある。でも未練とかそういうのじゃなくて、壱嵩さんと出会えて良かったと思い直す感じだ。だってもう、壱嵩さんの方が大事だから。もう前には戻りたくない。

「前よりも今の方が幸せって、比べることはあるけど? 壱嵩さんはどう?」
「俺だって同じだけど……!」

 私は満足そうに笑みを浮かべて、そのまま深くて甘いキスをした。
 貪るような欲張りなキス。

「そんなどうでもいいことで悩むよりも、楽しいことをしようよ」

 元々エッチは好きだったけど、壱嵩さんとする度にもっと好きになっていった。飽きるどころか、もっともっとしたくなる。

「——ズルいな、あんなに悩んでいた自分がバカだったなと思うくらい」
「壱嵩さんの悪い癖だよね。何にでも真面目すぎるんだよ。そこも好きだけど……」

 再びキスを交わし合って、傾れるように快感を求め合った。



 ———  自主規制  ———



「待って、壱嵩さん……! もう腰が……」

 すっかり落ち着いた様子だったので、もう精力剤の効果は切れていると思っていたのに。絶倫とはこのことを言うのだろうか?

「アレを作ったのは明日花さんだし、責任は取ってもらわないと」
「む、無理……! これ以上はさすがに」

 涙目になって訴えていると、笑いを堪え切れなくなった壱嵩さんが噴き出すように笑い出した。

「あははは、冗談だって。もう効き目は薄れているよ。俺もこれ以上は無理」

 力尽きたように寝転んだ彼に安堵を覚えながら、隣に寄り添って横になった。

「ねぇ、もしかして壱嵩さんは——……」

 本当のことを知りたいと口を開いたものの、それ以上の言葉を紡ぐのをやめた。
 私だって、さすがに二人の間に何かあったことくらい気付いた。でも話題に触れないってことは、聞かれたくないと言うことなのだろう。

 やがて静かに寝息を立て始めた彼につられるように、私も目を閉じて眠ることにした。


 ———……★

「………モヤモヤはするけれど、やむ得ない」
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