明日、その花はどんな彩で咲くのだろう——セフレ、浮気、嫌なモノをまとめて捨てた日から運命が変わりました

中村青

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第十章「皆で一緒に楽しい今を」

第45話 男子会【ちょい下ネタあり】

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 6月16日——……
 俺はホテルのレビューを見ながらため息を吐いていた。どのホテルも綺麗に見えるし、同じに見えて、イマイチ決め手に欠けていた。

 皆は何を基準に選んでいるのだろうか?

「何だ何だ? どうした壱嵩、ため息なんか吐いて」
「瑛太さん……オススメのホテルってあります? 利用したことがないから分からなくて」
「ん、ホテル? ラブホか? それなら街中にあるノットミモザってホテルがオススメだぞ」

 ラブホじゃない、このエロ先輩め!

「明日花さんの誕生日をホテルで祝ってあげたいんです。だって、付き合って初めての誕生日なんですよ? 俺は明日花さんに喜んでもらって『壱嵩さんと付き合えて、私とっても幸せ♡』って言われたい!」
「——お前って、明日花ちゃんが絡むとバカになるよねー。IQが低下しちゃってるわ。っていうかさー、お前の誕生日はどんな感じだったの?」

 俺の誕生日……。
 そう、実は先々月誕生日を迎えた俺は、人生初めてサプライズで誕生日を祝ってもらったのだ。

 部屋に帰ってきた瞬間、色とりどりのバルーン装飾が飾られていて、大好物のトマト生パスタや唐揚げ、シーザーサラダ……。
 そして両手いっぱいに花束を持った明日花さんが「壱嵩さん、お誕生日おめでとう」ってお祝いしてくれて。

「あんな幸せな誕生日は初めてでした。生きてて良かったと思うほど。いや、明日花さんという存在が尊すぎて、もう神……触れることすら恐れ多く思えるほど」
「触れることを躊躇うどころか、バコバコ盛っているくせに、ふざけんなクソエセ野郎」
「だって、あんなに可愛いくせにエロいんだから仕方ないじゃないですか! 毎朝、目が覚めるたびに可愛い寝顔と無防備な谷間に感謝しながら起きてますよ」
「マジで一回ビルの屋上からヒモなしバンジーやってくんねぇーかなー、壱嵩くんよォ!」

 誰が死ぬかよ、僻み先輩め!

「それより瑛太先輩、葉月さんとはどうなったんですか? あの後、二次会に行ったんですよね?」
「え、あぁ……うん。行ったよー、行ったけど」

 どうも歯切れが悪い。うまく行かなかったのだろうか?
 瑛太さんはミント入りのモヒートを飲みながら、一際大きなため息を吐いた。

「いや、あの後……お互いの今までの経験や性癖について語り合ってな? お酒の力もあって、もうグダグダよ」

 ぶはっと、思わず口に含んでいたビールを吹き出してしまった。何だ、そのマニアックな語らいは? 確か初対面、初めましての間柄だったよな? さすが変態同士!

「ほら、俺ってオラオラ系と見せかけて、強気な女性を好む傾向があるじゃん? まさに葉月さんみたいな人が好みなんだけどさー。そういう女性って、好意を向けられると逆に逃げる傾向があるからさー」

 ——いやいやいや、知らないし。
 知りたくもないし!

「逃げられる前に百聞は一見にしかずってことで、ホテルに誘ったんだよ! そしたら平手打ちして去っていったー……」
「それって、前振り必要でした? 普通にホテル誘って振られたでいいんじゃ?」
「それじゃー、俺がただのヤリ目的モクに聞こえるだろう⁉︎ 違うんだよ、俺は葉月さんと真剣に付き合いたくて誘ったのに!」
「いや、その言い訳、俺じゃなくて葉月さんにすればいいのに」

 二人きりで二次会に行ったところを見ると、葉月さんも満更じゃなかったはずなのに。本当に瑛太さんっていう人は……真性のアホである。

「もう葉月さんじゃないと嫌だー! 俺も壱嵩達みたいにイチャイチャラブラブパコパコアンアンしたいー!」
「人のことを変態みたいに言うな、エロ先輩!」
「実際ヤリまくってるだろう、お前達は! くっ、リア充め! なぁなぁ、壱嵩ー……また4人で飲もうぜー? 頼む、俺にチャンスを、お恵みをー」

 瑛太先輩には色々お世話になったから、多少なら。それに明日花さん自身が飲み会を楽しみにしていた。

「あ、そうだ! んじゃ、明日花ちゃんの誕生日会を俺んちでしない?」
「ん、何で?」

 せっかく最高の誕生日を計画する為にホテルを探しているのに、何で瑛太さん家で過ごさないといけないんだ?
 しかも瑛太さんと葉月さんのお膳たての為に?

 人の彼女の誕生日を利用するな!

「違う違う! 当日じゃなくて後日! 当たり前だろう? それなら明日花ちゃんも飲めるし、仮に酔い潰れても部屋が余ってるから泊まって行ってもいいし」

 泊まる前提で部屋飲みを提案するなんて、この男……かなりのヤリ手だ変態だ。

「壱嵩、そんな目で見るな。でもな、実際家飲みの方が楽だぞ? お前もこの前大変だっただろう? 飲み足りないけど彼女を寝かせてあげたいって時にベッドがあると楽だぞ?」
「いや、その考えがもうエロ野郎。酔い潰して寝込み襲おうとしている浅ましさ大爆発」
「うっせーな、このどエロ小僧。お前にだけは言われたくない」

 でも確かに。
 瑛太先輩の実家が金持ちなのかよく分からないが、無駄に広いタワマンに一人で住んでいる。
 税金対策で親が買った部屋とか言っていたが、羨ましい限りである。

「頼む頼む! もう俺には金持ちの息子っていうステータスを見せつけるしか葉月さんを振り向かせる要素がないんだよ!」
「嫌味しか感じないステータスだな! けどそれを惜しみなく言える先輩は嫌いじゃない!」

 やむ得ない……これが最後の慈悲だ。
 明日花さんが了承してくれたら、協力してやろう。

 でも、うん。どんな返事がくるかは容易に想像できるけど。


「瑛太先輩の部屋で飲み会? するする! 私、葉月さんに連絡するね!」

 興味があることに関しては深く考えない明日花さんは、その場で葉月さんに連絡を送っていた。
 そして、何故か明日花さんの誕生日の前に飲み会が開催されることとなった。

 ———……★

「あれ、壱嵩。明日花ちゃんが20歳になってから飲み会するんじゃなかったのか?」
「——知らないッス。俺の知らないところで勝手に日程が決まってました」
「あちゃー……でも誕生日当日じゃなくて良かったなー」
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