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第八章「この先の未来が広がる」
第39話 それ以上は勘弁して下さい
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壱嵩side……★
瑛太さんに痛いところを突かれて心身共に参っていたのだが、明日花さんの真っ直ぐな言葉を聞いてツッコミを入れる程度には気力が回復してきた。
うん、何を話そうとしているのかな?
場合によっては彼女の口を抑える必要があると妙な緊張感が身体を強張らせた。
「私達の話って言われても、どんな話をしたらいいのかな?」
「いいよ、思いつかないなら話さなくても。ちょっ、二人とも。明日花さんから根掘り葉掘り聞き出そうとしないで下さい」
だが、この二人は変なところで意気投合していてタチが悪かった。瑛太さん一人でも十分強敵なのに、二人して初対面とは思えない息の合ったファインプレーを発揮してきた。
「それなら壱嵩さんでもいいんですよ? ずばり明日花ちゃんのどこが好きなんですか? 遠慮なしに惚気ちゃっていいんですよ?」
「そうそう! こんなチャンス滅多にないからな? 今ならどんな甘ったるい惚気も聞き入れてやろう!」
やろうじゃねーんだよ、コンチクショー!
チラッと横目で見ると「どこどこ?」と期待の眼差しで見つめてくる明日花さんが重圧を与えてきた。
胃が痛い……!
「って、壱嵩さんに聞かなくても十分明日花ちゃんの良さは伝わってるけどね! 一目見た時から、明日花ちゃんの可愛い見た目と性格に心臓射抜かれたし!」
「分かるー! 葉月さん、あんた見る目あるね! 同性同士だと僻みそうなのに寛大なのは、やっぱ葉月さんも可愛いからなん?」
「えー、多分それは私が性的に明日花ちゃんのことが好きだからじゃないですか? って、何を言わせるんですかー!」
あ、瑛太さん。さりげなく葉月さんを褒めたのに軽くスルーされて、受けたショックを必死に誤魔化している。
そして葉月さんは葉月さんで、聞き捨てならない発言をしたけれど?
性的に好きなら警戒するべき対象なんじゃないのか?
「そんな恐い顔しないでくださいよ、壱嵩さん。安心してください、ノン気に手を出すほど落ちぶれていないですから。でも壱嵩さんが明日花ちゃんに酷いことをした時には、遠慮なく口説きますけどね」
最後あたり、鋭い視線で睨まれたけど……冗談だよな?
「えー、葉月さんも参戦するなら俺も! 壱嵩が明日花ちゃんを泣かしたら、お前に卍固めお見舞いしてやるからな?」
「何なんすか、二人して。え、今日って紹介の場じゃないんですか? なんで明日花さん見守り隊が結成されているんですか?」
彼女のことを認めてくれる人が増えるのは嬉しいが、この二人は少し面倒くさい。
強ち冗談に聞こえないのがタチが悪い。
「大丈夫、壱嵩さん。私は壱嵩さんのことが一番好きだからね?」
「うん、それはとても嬉しいんだけど、今は口にしないで欲しいかな? この二人だとどう捉えるか分からないから」
そもそも慣れていないんだ、こんな集まり。
田沼先輩達の集まりは悪意しか渦巻いていなかったし、そもそも自分がこんなに中心になってイジられたり茶化されることがなかった。
「なーんかさ、明日花ちゃんが甘える様子は目に浮かぶんだけど、壱嵩って二人っきりの時もこんな調子なん? 固い固い、固い! 硬くするのは下半身だけでいいんだよ!」
「さり気なく下ネタぶっ込むな、エロ先輩」
でも、確かに。
無意識ってわけじゃないが、明日花さんと二人の時もこんな調子のような気がする。
俺がしっかりしないとって、常に気を張っていた。
「わぁー、マジかよ。え、壱嵩お前さー、彼女の前でくらいは素を見せろよ。そんなんじゃ愛想尽かされるぞ?」
そんなことを言われても、神経質な性格こそが自分の性格のような気もするし。そもそも好きな人だからこそ、大事にしたい人だからこそ、嫌われなくないと気張るものじゃないのか?
「確かにその辺の塩梅って難しいわね。私も本当はガツガツ口説きたいけど、嫌われたくなくてセーブしてるし」
うん、葉月さんは一生自重してて下さい。
「気遣うのって会社くらいでいいだろう? 金が発生しない関係で、気疲れするのって馬鹿らしくない?」
瑛太さんに関しては、もう少し女性に気配った方がモテると思う。せっかく見た目がいいのに勿体無い。
だが俺自身、明日花さんと一緒にいて苦痛にも思わないし、気遣っている気はないのだけれども。それでも直さなければならないのだろうか?
「え、でも壱嵩さん。普段は優しいけどエッチの時にはドSになるよね?」
——ん? 待て、明日花さん。
目の前の二人の眼光が鋭く輝き出した。
「なになになにー? もっと詳しく!」
「壱嵩、お前……実はサディストだったのか」
ニヤニヤするな、この変態エロ先輩め!
二人の誘導尋問に更に口を割ろうとする明日花さんの口を塞いで、必死に食い止めた。
くっ、どのタイミングで爆弾を落とされるか分からないから、油断ならない!
「けど、本当にいいね。私も二人の姿を見て、恋人欲しくなったなー」
葉月さんの言葉に、いち早く反応を示した瑛太先輩は、調子を整えるように咳払いをして視線を向け直した。
「それなら、ここにいい物件がありますけど? 俺と試しにお付き合いしてみるのはどうかな?」
いつもは自分から口説かない瑛太さんが、珍しくアピールを発動した。
傍から見ていた感想はお似合いだったが、葉月さんはどう思っただろうか?
「あー、瑛太さんのことはいいなーとは思うんですけど、今は明日花ちゃんみたいな可愛い子を愛でたい気分なのでゴメンナサイ」
「えぇー、マジで? けどその気持ち、分かるから許す! かく言う俺ももっとこのメンバーで飲みたいから、連絡先交換し合わねぇ?」
——えぇー……? 俺、この二人を捌きながら飲みに付き合っていかないといけないのか?
頭がキレる厄介な二人なので気乗りはしなかったが、明日花さんが楽しそうに笑っていたから連絡先を交換し合った。
「壱嵩さん、今日の飲み、とても楽しかったね。また皆で集まりたいね」
「………うん、そうだね」
結局、明日花さんのことを甘やかしすぎているのかと反省していたが、結果的に甘やかすメンバーが増えただけだった。
———……★
「……待て、壱嵩。お前にはもっと聞きたいことがあるんだからな? このままで終わると思うなよ?」
「あの、本当にもう勘弁して下さい」
瑛太さんに痛いところを突かれて心身共に参っていたのだが、明日花さんの真っ直ぐな言葉を聞いてツッコミを入れる程度には気力が回復してきた。
うん、何を話そうとしているのかな?
場合によっては彼女の口を抑える必要があると妙な緊張感が身体を強張らせた。
「私達の話って言われても、どんな話をしたらいいのかな?」
「いいよ、思いつかないなら話さなくても。ちょっ、二人とも。明日花さんから根掘り葉掘り聞き出そうとしないで下さい」
だが、この二人は変なところで意気投合していてタチが悪かった。瑛太さん一人でも十分強敵なのに、二人して初対面とは思えない息の合ったファインプレーを発揮してきた。
「それなら壱嵩さんでもいいんですよ? ずばり明日花ちゃんのどこが好きなんですか? 遠慮なしに惚気ちゃっていいんですよ?」
「そうそう! こんなチャンス滅多にないからな? 今ならどんな甘ったるい惚気も聞き入れてやろう!」
やろうじゃねーんだよ、コンチクショー!
チラッと横目で見ると「どこどこ?」と期待の眼差しで見つめてくる明日花さんが重圧を与えてきた。
胃が痛い……!
「って、壱嵩さんに聞かなくても十分明日花ちゃんの良さは伝わってるけどね! 一目見た時から、明日花ちゃんの可愛い見た目と性格に心臓射抜かれたし!」
「分かるー! 葉月さん、あんた見る目あるね! 同性同士だと僻みそうなのに寛大なのは、やっぱ葉月さんも可愛いからなん?」
「えー、多分それは私が性的に明日花ちゃんのことが好きだからじゃないですか? って、何を言わせるんですかー!」
あ、瑛太さん。さりげなく葉月さんを褒めたのに軽くスルーされて、受けたショックを必死に誤魔化している。
そして葉月さんは葉月さんで、聞き捨てならない発言をしたけれど?
性的に好きなら警戒するべき対象なんじゃないのか?
「そんな恐い顔しないでくださいよ、壱嵩さん。安心してください、ノン気に手を出すほど落ちぶれていないですから。でも壱嵩さんが明日花ちゃんに酷いことをした時には、遠慮なく口説きますけどね」
最後あたり、鋭い視線で睨まれたけど……冗談だよな?
「えー、葉月さんも参戦するなら俺も! 壱嵩が明日花ちゃんを泣かしたら、お前に卍固めお見舞いしてやるからな?」
「何なんすか、二人して。え、今日って紹介の場じゃないんですか? なんで明日花さん見守り隊が結成されているんですか?」
彼女のことを認めてくれる人が増えるのは嬉しいが、この二人は少し面倒くさい。
強ち冗談に聞こえないのがタチが悪い。
「大丈夫、壱嵩さん。私は壱嵩さんのことが一番好きだからね?」
「うん、それはとても嬉しいんだけど、今は口にしないで欲しいかな? この二人だとどう捉えるか分からないから」
そもそも慣れていないんだ、こんな集まり。
田沼先輩達の集まりは悪意しか渦巻いていなかったし、そもそも自分がこんなに中心になってイジられたり茶化されることがなかった。
「なーんかさ、明日花ちゃんが甘える様子は目に浮かぶんだけど、壱嵩って二人っきりの時もこんな調子なん? 固い固い、固い! 硬くするのは下半身だけでいいんだよ!」
「さり気なく下ネタぶっ込むな、エロ先輩」
でも、確かに。
無意識ってわけじゃないが、明日花さんと二人の時もこんな調子のような気がする。
俺がしっかりしないとって、常に気を張っていた。
「わぁー、マジかよ。え、壱嵩お前さー、彼女の前でくらいは素を見せろよ。そんなんじゃ愛想尽かされるぞ?」
そんなことを言われても、神経質な性格こそが自分の性格のような気もするし。そもそも好きな人だからこそ、大事にしたい人だからこそ、嫌われなくないと気張るものじゃないのか?
「確かにその辺の塩梅って難しいわね。私も本当はガツガツ口説きたいけど、嫌われたくなくてセーブしてるし」
うん、葉月さんは一生自重してて下さい。
「気遣うのって会社くらいでいいだろう? 金が発生しない関係で、気疲れするのって馬鹿らしくない?」
瑛太さんに関しては、もう少し女性に気配った方がモテると思う。せっかく見た目がいいのに勿体無い。
だが俺自身、明日花さんと一緒にいて苦痛にも思わないし、気遣っている気はないのだけれども。それでも直さなければならないのだろうか?
「え、でも壱嵩さん。普段は優しいけどエッチの時にはドSになるよね?」
——ん? 待て、明日花さん。
目の前の二人の眼光が鋭く輝き出した。
「なになになにー? もっと詳しく!」
「壱嵩、お前……実はサディストだったのか」
ニヤニヤするな、この変態エロ先輩め!
二人の誘導尋問に更に口を割ろうとする明日花さんの口を塞いで、必死に食い止めた。
くっ、どのタイミングで爆弾を落とされるか分からないから、油断ならない!
「けど、本当にいいね。私も二人の姿を見て、恋人欲しくなったなー」
葉月さんの言葉に、いち早く反応を示した瑛太先輩は、調子を整えるように咳払いをして視線を向け直した。
「それなら、ここにいい物件がありますけど? 俺と試しにお付き合いしてみるのはどうかな?」
いつもは自分から口説かない瑛太さんが、珍しくアピールを発動した。
傍から見ていた感想はお似合いだったが、葉月さんはどう思っただろうか?
「あー、瑛太さんのことはいいなーとは思うんですけど、今は明日花ちゃんみたいな可愛い子を愛でたい気分なのでゴメンナサイ」
「えぇー、マジで? けどその気持ち、分かるから許す! かく言う俺ももっとこのメンバーで飲みたいから、連絡先交換し合わねぇ?」
——えぇー……? 俺、この二人を捌きながら飲みに付き合っていかないといけないのか?
頭がキレる厄介な二人なので気乗りはしなかったが、明日花さんが楽しそうに笑っていたから連絡先を交換し合った。
「壱嵩さん、今日の飲み、とても楽しかったね。また皆で集まりたいね」
「………うん、そうだね」
結局、明日花さんのことを甘やかしすぎているのかと反省していたが、結果的に甘やかすメンバーが増えただけだった。
———……★
「……待て、壱嵩。お前にはもっと聞きたいことがあるんだからな? このままで終わると思うなよ?」
「あの、本当にもう勘弁して下さい」
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