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第六章「お母さんとの約束」
第29話 夢の中で
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明日花side……
その日、私が見たのは真っ白い空間で、ただただ立ち竦んでいた夢だった。
どこまでも果てしなく続く空虚な白にも関わらず、恐さを感じないのは何故だろうと首を傾げながら周りを見渡した。
「……変な夢」
目を覚ましたいけれど動かない。
身体が重くて、まるで金縛りにあったようだ。
「——明日花。久しぶりね」
ふっ……と、温かい風が頬を掠めた気がした。
そんなことありえないと思いつつ、懐かしい言葉に耳を傾けた。
これは夢、とても自分にとって都合のいい夢。
だから、これは——……
「お母さん……? お母さん」
ずっと、夢でもいいから会いたいと願っていた。
でもそれすら叶わなかったのに、なんで今になって?
後ろから包まれるように感じた感触に、温かい雫が頬を伝って落ちた。
会いたかった。
ずっとずっと、会いたかった。
「お母さん、私……ずっとお母さんに謝りがかった。私のせいで本当にごめんなさい。ごめんなさい……」
「何を言っているの? お母さんはね、明日花を守れて良かったと思ったわよ。でも、ごめんね……。ずっとずっと明日花の一番の味方で居続けたかったのに、死んじゃって。悲しい思いをさせてごめんね」
私は横に顔を振り、そっと手を重ねた。
「お母さん、私……お母さんが助けれくれたおかげで、壱嵩さんに出逢えたんだよ。私、今……すごく幸せ」
そう告げた瞬間、重たくて開かなかった瞼が開いて、私は目を覚ました。
母の体温だと思っていたのは、背後から抱き締めていた壱嵩さんの体温だった。
でもきっと、あれはお母さんだ。
お母さんが会いに来てくれたんだ。
「ありがとう、お母さん。私をずっと守ってくれて」
そう言葉を呟いて、私は再び瞼を閉じた。
その日、私が見たのは真っ白い空間で、ただただ立ち竦んでいた夢だった。
どこまでも果てしなく続く空虚な白にも関わらず、恐さを感じないのは何故だろうと首を傾げながら周りを見渡した。
「……変な夢」
目を覚ましたいけれど動かない。
身体が重くて、まるで金縛りにあったようだ。
「——明日花。久しぶりね」
ふっ……と、温かい風が頬を掠めた気がした。
そんなことありえないと思いつつ、懐かしい言葉に耳を傾けた。
これは夢、とても自分にとって都合のいい夢。
だから、これは——……
「お母さん……? お母さん」
ずっと、夢でもいいから会いたいと願っていた。
でもそれすら叶わなかったのに、なんで今になって?
後ろから包まれるように感じた感触に、温かい雫が頬を伝って落ちた。
会いたかった。
ずっとずっと、会いたかった。
「お母さん、私……ずっとお母さんに謝りがかった。私のせいで本当にごめんなさい。ごめんなさい……」
「何を言っているの? お母さんはね、明日花を守れて良かったと思ったわよ。でも、ごめんね……。ずっとずっと明日花の一番の味方で居続けたかったのに、死んじゃって。悲しい思いをさせてごめんね」
私は横に顔を振り、そっと手を重ねた。
「お母さん、私……お母さんが助けれくれたおかげで、壱嵩さんに出逢えたんだよ。私、今……すごく幸せ」
そう告げた瞬間、重たくて開かなかった瞼が開いて、私は目を覚ました。
母の体温だと思っていたのは、背後から抱き締めていた壱嵩さんの体温だった。
でもきっと、あれはお母さんだ。
お母さんが会いに来てくれたんだ。
「ありがとう、お母さん。私をずっと守ってくれて」
そう言葉を呟いて、私は再び瞼を閉じた。
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