明日、その花はどんな彩で咲くのだろう——セフレ、浮気、嫌なモノをまとめて捨てた日から運命が変わりました

中村青

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第五章「過去はもういらないです」

第22話 星空イエスタディ【R−15】

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「このタレ肉、美味っ!」

 これも漫画の影響で仕込んでいた肉だったのだが、美味しいのなんの!
 予め食べやすい大きさに切っていた肉を秘伝の漬タレに浸していたのだ。そしてインスタントラーメンにウインナーと卵を落として煮込む。元々美味しいのだから不味くなるわけがない。

 飯盒はんごうで炊いたご飯も美味しいし、キャンプ最高だ。

「これでドラム缶風呂に入れたら最高だったけど」

 実は山本さん御用達のドラム缶が現地にあったのだが、薪やら色々準備不足だった為、やむえず断念したのだ。
 だがこれは初心者キャンプ一回目。仕方ない!

「代わりに朝イチで温泉に行こう。流石に汗を掻き過ぎて気持ち悪いもんな」

 電波も入りにくい山奥なのですることが何もない。焚火の揺らめく火だけを見つめて、星月夜の下でゆっくりした時間を過ごすのもまた一興。

 ——って、なるはずだったんだけどな。
 俗物や娯楽がない社会から隔離された空間に存在するのは自分と愛しい彼女だけ。

 満たされた食欲。そして睡眠も十分取った。
 あとは性欲だけ。

「いやいやいや、俺はいつからこんな節操なしの獣物になってしまったのだろう! 最悪にも程がある‼︎」

 頭を抱えて必死に抗った。確かにシチュエーションは最高だけど、青姦……野外でだなんて、明日花さんも嫌に決まってる!
 今日だけは良い思い出だけで済ませて、数年後にまた行きたいねと語り合えるような記憶を作りたいのだ。

「スゴいね、壱嵩さん……。こんな満天の星空、初めて見た」

 今にも落ちてきそうな眩く輝く星々に感嘆のため息が漏れる。
 焚火が彼女の頬を赤く染めて、綺麗だった。

「だいぶ涼しくなってきたけど寒くない。ブランケット渡そうか?」
「大丈夫だよ。でも手を繋ぎたいかな……。ちょっと手持ち無沙汰」

 いつもより幼顔で笑ってねだるから、彼女に手を伸ばして寄り添うように腰を下ろした。
 パチパチと火の弾ける音が響く。ゆったりとした時間だけが過ぎていく。幸せだ——こんな経験ができるなんて思ってもいなかった。

 心を病んだ母親の介護に追われていた青春時代。仕事も老人介護漬け毎日で、楽しみなんて何一つなかった。
 仕事でも気を使うのにプライベートでも他人に気を使いたくないと、極力関わりを避けていたけれど。

 過去の俺、目を覚ませって言ってやりたい。

「楽しいな……キャンプって面倒だと思っていたけど、全然そんなことなかった。また来たいな」

 俺の肩に頭を乗せて甘えてくる彼女が可愛くて、思わず強く抱き締めてしまった。仕方ないんだ。俺達はまだ付き合って一ヶ月で、楽しい盛りで。時間さえあれば肌を合わせたり、キスしたり交わり合いたい時期なんだ。

 特に俺にとって明日花さんは初恋みたいなもので、気持ちが抑えられない。

 彼女の胸元に手を置いて、ゆっくりと揉みほぐす。ビクッと小さく震えた彼女の耳元に唇を押し当てて、甘噛みして反応を待った。

「待って、壱嵩さん……っ、こんなところで?」
「俺達以外に誰もいないから大丈夫だよ」

 最初は焦っていた彼女も、観念したように俺の首に腕を回して抱きつくような体勢で顔を埋めてきた。パーカーのジッパーを下ろして、厚手のシャツを捲り上げる。二つの膨らみを覆う純白の下着を目前に興奮が込み上がる。

「ちょっと恥ずかしい……っ、こんなの初めてだから」
「——ごめん、我慢できなくて」

 フルフルと否定するように顔を振っていたが、耳まで真っ赤にしながら涙を堪える表情を目前に我慢の限界だった。



 ———  自主規制  ———



 スローセックス、初めてしたけど最高だった。
 真っ裸で抱き合って、ゆっくりと動かずにひたすらキスして、髪を撫で合って。至福の時だった。
 彼女の吐息を間近に感じて、より一層愛しさが増した気がした。

 明日花さんもギューっとしがみついたまま離れない。熱った体に夜風が気持ちよかった。

「最初は恥ずかしいと思ったけど、この開放感は癖になっちゃうね」
「誰かに見られてたら一発で警察沙汰だけど、気持ちはわかる。昔の人もこんなふうにエッチしたのかな」

 流石に真っ裸に夜風は寒くなってきたので、服を着てテントの中へと戻った。寝袋も用意していたのだが、二人で一つの毛布を被って、抱き合うように眠りについた。

「また一緒に来ようね」
「うん、約束。冬のキャンプも良いらしいから二人でこよう」

 小指の約束を交わし合える嬉しさを噛み締めながら、こうして初めてのお泊まりの夜を過ごした。
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