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第四章「彼女がいないと、俺は朽ち果てる……」
第19話 失ってから気付く。俺は彼女が好きだった。
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康介side……
セフレだった明日花に振られた日から何に対してもヤル気が出なくなった俺は、抜け殻のように過ごしていた。
そう、魂が抜けたような屍のような。
充電の切れたスマホのような。
「もう情けなさすぎ。そもそもアンタが彼女のことを蔑ろにしていたのが悪いんでしょ? バカじゃない?」
「そんな言ったってよー……。まさか明日花が俺から離れるなんて思ってもいなかったから」
明日花と疎遠になるキッカケになった彼女、葉月と共に飲みながら、俺は盛大な愚痴を溢していた。
結局葉月とも破局。明日花とも復縁できず。
まさに踏んだり蹴ったりとはこのことだろう。
「普通、元カノにセフレのことを話す? 頭おかしいんじゃない?」
「いや、そもそも俺達はセフレというよりも幼馴染で……。エッチしたのも成り行きだったから付き合わなかっただけで! そう、俺は付き合うつもりだったんだよ? けど——」
幼馴染だったからこそ、反対されたのだ。
俺の母親は教育ママというか、とにかく世間体を気にする人だった。
昔から普通の子よりも落ち着きがなかった明日花のことを毛嫌いしていたことは、幼心に気付いていた。
それでも友達を続けていたのは俺の意地だった。
でも彼女には——できなかった。
『康介ちゃんには賢い女性が似合うわ。ママのような聡明な女性とお付き合いするのよ』
俺が好きなのは明日花だったのに。
でも明日花を好きだって言えば、きっと母さんは引き離す。
だから俺は——明日花との関係を続けるためにカモフラージュするしかなかった。
「好きだったんだよ、本当に……! 彼女はいつか別れるけど、付き合ってなければ別れないと思っていたんだよ! なのに、何で……!」
「アンタ、バカじゃない? そりゃ嫌でしょ。好きな人が他の女にうつつ抜かすとか。私だったら即捨ててやるわね。むしろ良かったんじゃない? 素敵な彼氏ができたんでしょ? 私でもそっちを選ぶわ」
くっ、俺の味方だったはずの葉月まで裏切るようなことを言い始めた。
けど俺は……将来、高給取りになって明日花を愛人にして匿う予定だったのに。それが俺なりの愛だと信じていた。彼女さえいてくれれば、それでいいと思っていたのに。
「——キモ! キモキモキモォーっ! それって彼女の気持ち丸っきり無視じゃん! ついでにセフレがいることを隠されていた私もショックだっつーの! 本当に自分勝手でしょ、康介って!」
うぅ、傷心に塩が揉み込まれていく。
「けどそんなに好きなら、もう一回くらい告白したら? そうじゃないと踏ん切りがつかないでしょ?」
「で、でも、明日花にはイケメンの彼氏がいるのに?」
「だから木っ端微塵に振られにいくのよ。だーれがアンタみたいなイジケ虫を選ぶと思っているの? そんで幸せになった彼女におめでとうって祝福してあげれば?」
葉月の言葉に対し、静かに頷いた。
確かに俺は——明日花に対して酷いことしかしていない。
「とは言いつつも、彼女からしてみれば『二度とその面を見せんな屑虫!』って感じかもねー」
何が面白いのか腹を抱えながら高笑いする葉月に殺意を抱きながら、ジョッキのビールを飲み干した。
「くそっ! 頭じゃ分かっているのに……まったく俺ってやつは……!」
その後もヤケ酒を続けていた俺はいつの間にか酔い潰れて、葉月にタクシーに乗せられていた。
葉月side……
「運転手さん、すみません。吐きはしないと思うんですけど」
「あいよー。こんな献身な彼女がいて、彼氏が羨ましいねぇ」
「アハハハハ、そんなんじゃないですよ? 何かね、ここまでバカだとかえって気になってしまうというか。放っておけないんですよ。こいつも大概だけど私も大馬鹿野郎なんですよね」
とは言え、康介の想い人の明日花さんのように、他の女とエッチしてるような男のことを想い続けることはできないけれど。
「でも気になるなぁ、明日花ちゃん。どんな子なんだろう」
ダメだと頭では分かっていても。私は康介のスマホのロックを解除して、明日花さんの連絡先をメモした。
セフレだった明日花に振られた日から何に対してもヤル気が出なくなった俺は、抜け殻のように過ごしていた。
そう、魂が抜けたような屍のような。
充電の切れたスマホのような。
「もう情けなさすぎ。そもそもアンタが彼女のことを蔑ろにしていたのが悪いんでしょ? バカじゃない?」
「そんな言ったってよー……。まさか明日花が俺から離れるなんて思ってもいなかったから」
明日花と疎遠になるキッカケになった彼女、葉月と共に飲みながら、俺は盛大な愚痴を溢していた。
結局葉月とも破局。明日花とも復縁できず。
まさに踏んだり蹴ったりとはこのことだろう。
「普通、元カノにセフレのことを話す? 頭おかしいんじゃない?」
「いや、そもそも俺達はセフレというよりも幼馴染で……。エッチしたのも成り行きだったから付き合わなかっただけで! そう、俺は付き合うつもりだったんだよ? けど——」
幼馴染だったからこそ、反対されたのだ。
俺の母親は教育ママというか、とにかく世間体を気にする人だった。
昔から普通の子よりも落ち着きがなかった明日花のことを毛嫌いしていたことは、幼心に気付いていた。
それでも友達を続けていたのは俺の意地だった。
でも彼女には——できなかった。
『康介ちゃんには賢い女性が似合うわ。ママのような聡明な女性とお付き合いするのよ』
俺が好きなのは明日花だったのに。
でも明日花を好きだって言えば、きっと母さんは引き離す。
だから俺は——明日花との関係を続けるためにカモフラージュするしかなかった。
「好きだったんだよ、本当に……! 彼女はいつか別れるけど、付き合ってなければ別れないと思っていたんだよ! なのに、何で……!」
「アンタ、バカじゃない? そりゃ嫌でしょ。好きな人が他の女にうつつ抜かすとか。私だったら即捨ててやるわね。むしろ良かったんじゃない? 素敵な彼氏ができたんでしょ? 私でもそっちを選ぶわ」
くっ、俺の味方だったはずの葉月まで裏切るようなことを言い始めた。
けど俺は……将来、高給取りになって明日花を愛人にして匿う予定だったのに。それが俺なりの愛だと信じていた。彼女さえいてくれれば、それでいいと思っていたのに。
「——キモ! キモキモキモォーっ! それって彼女の気持ち丸っきり無視じゃん! ついでにセフレがいることを隠されていた私もショックだっつーの! 本当に自分勝手でしょ、康介って!」
うぅ、傷心に塩が揉み込まれていく。
「けどそんなに好きなら、もう一回くらい告白したら? そうじゃないと踏ん切りがつかないでしょ?」
「で、でも、明日花にはイケメンの彼氏がいるのに?」
「だから木っ端微塵に振られにいくのよ。だーれがアンタみたいなイジケ虫を選ぶと思っているの? そんで幸せになった彼女におめでとうって祝福してあげれば?」
葉月の言葉に対し、静かに頷いた。
確かに俺は——明日花に対して酷いことしかしていない。
「とは言いつつも、彼女からしてみれば『二度とその面を見せんな屑虫!』って感じかもねー」
何が面白いのか腹を抱えながら高笑いする葉月に殺意を抱きながら、ジョッキのビールを飲み干した。
「くそっ! 頭じゃ分かっているのに……まったく俺ってやつは……!」
その後もヤケ酒を続けていた俺はいつの間にか酔い潰れて、葉月にタクシーに乗せられていた。
葉月side……
「運転手さん、すみません。吐きはしないと思うんですけど」
「あいよー。こんな献身な彼女がいて、彼氏が羨ましいねぇ」
「アハハハハ、そんなんじゃないですよ? 何かね、ここまでバカだとかえって気になってしまうというか。放っておけないんですよ。こいつも大概だけど私も大馬鹿野郎なんですよね」
とは言え、康介の想い人の明日花さんのように、他の女とエッチしてるような男のことを想い続けることはできないけれど。
「でも気になるなぁ、明日花ちゃん。どんな子なんだろう」
ダメだと頭では分かっていても。私は康介のスマホのロックを解除して、明日花さんの連絡先をメモした。
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