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第四章「彼女がいないと、俺は朽ち果てる……」

第18話 キスはココから【R−15】

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 買い物を済ませて家に帰り着いた俺達は、食事を済ませてお風呂に入って、まったりとした時間を過ごしていた。

 明日花さんは生足を曝け出して、足の爪にペディキュアを彩っていた。爪がオレンジとイエローのビタミンカラーに染まっていく。

 一方、手持ち無沙汰だった俺は読みかけていた雑誌に視線を向けつつ、彼女のことが気になって仕方なかった。
 お風呂上がりの乾かしたての柔らかい髪。頸の後れ毛が色っぽい。

 それにしても素っぴんになっても可愛いって、どれだけ素材がいいのだろう。むしろ化粧っ気のない今の方が好きだ。

「壱嵩さん、どうしたの? もしかしてマニキュアの匂いがキツかった?」
「い、いや! 違うから気にしないで」

 お風呂上がりの彼女に欲情していたなんて言えるわけがない。ただでさえ付き合った日からエッチをするという節操なしになっているのに、これ以上幻滅されたくない。

 再び漫画雑誌を開いて読み始めたが、全く内容が入ってこない。一度スイッチが入ってしまうと悶々としてしまうのが情けない所だ。

 雑念を払うように違うことを考え出した。明日の仕事の予定は、たしか田中さんは内科受診があるから——……。

「あの、壱嵩さん」

 耳元で囁かれた声に、全身で反応した。
 背中にシャツ越しの柔らかい感触が伝わってくる。腹部で交差する彼女の指。
 突然のバックハグに思考が停止した。

「今日……壱嵩さんに甘えたいんですけど、甘えてもいいですか?」
「い、いいけど……」

 首を捻って明日花さんの表情を覗き込むと、綻ぶような笑顔を浮かべて喜んでいた。
 そして彼女の指が俺の腹部から胸元に移動して、首筋に唇を押し当てられた。

「今日は、私がたくさんキスしたいです」

 吐息混じりの声。ゾクゾクして高揚した気持ちが収まらならい。耳元に聞こえる肌に吸いつく音が大きくなる。

 これはヤバい、頭がバカになるヤツだ。

 ゆっくりと捲り上げられたシャツ。汗ばんだ肌が、互いにくっついて離れない。摩擦と共に溢れる艶声が脳を刺激する。

「どこが好き? 壱嵩さんの気持ちいいところ……教えてください」

 もう好きにしてください——!

 全部良すぎて、もう何も言えなくなっていた。
 なのに焦らされて勿体ぶらされて、次第に呼吸が荒くなる。彼女の細い指がどんどん濡れて、卑猥な音を立てる。

「待って、もう無理。これ以上は、もう」
「ダメ。だってこの前、壱嵩さんにもやめてって言ったのに、ずっと触ってたもん」

 悪戯に笑う声に観念した。
 こんな意地悪な一面ですら愛しく思ってしまうんだから仕方ない。

 だけど、どうせなら一緒に気持ち良くなりたい。自分だけなんて嫌だ。

 俺は彼女の太ももに手を乗せて、そのまま内腿に滑らせた。指の動きと共に「ひゃっ!」と小さな悲鳴が聞こえたが、無視して弄んだ。
 次第に大きくなる艶めかしく耐える声。互いに顔が見えないまま卑猥な行為を続ける。

「ダメ……っ、もう。壱嵩さん、キスしたい」

 先に諦めたのは明日花さんだった。ねだるように舌を出して、そのまま正面を向き合ってキスを交わし合った。

 温かくて柔らかい感触が脳を溶かす。
 そして半裸になっていた俺達は、衣服を脱ぎ去って甘い一時を堪能しあった。




「——ヤバい、全然自重できない。今日は控えようと思っていたのに」

 毎晩毎晩、獣のように盛る自分に嫌気がさす。きっと男の俺よりも明日花さんの方が負担が大きいのに、どうして我慢ができないのだろう。

「でも、今回のは私からお願いしたことだし」
「だとしても……! いや、分かっているんだけど、俺が鉄の意志を持てば解決することは」

 実際、控えないと仕事に支障が出てしまう。
 社会人としてあるまじき事態なので、対応策を練るべきだろう。

「でもヤッてる人は毎晩のようにしてると思うし」
「人は人。俺達は俺達のペースでしましょう。その、俺としては休みの前の日が助かるんだけど、明日花さんはどう?」
「私は毎晩でもしたい」

 うん、希望は自由でいい……!

 けれど、俺の仕事は体力が必要なのだ。ここは少し協力をお願いしたいです。

「……キスとハグをされると安心するから、それは毎日して欲しいです。あと、胸を触って欲しい時もあるから、休みの前以外でもお願いしたいかも」
「——分かった。明日花さんが望むなら善処します」
「それと壱嵩さんが悶えている姿を見るのも好きなので、今日みたいなこともしたいです」
「それは勘弁してください! 無理無理、さっきのお願いですら我慢できる自信ないのに、俺のを触られでもしたら!」

 クスクスと笑う彼女を見て揶揄からかわれたことに気付いた。
 くっ、明日花さんもこんな冗談を言ったりするのか。

 だが、いつもと違う笑い方に喜びを覚えながら、俺達は色んなことを話しながら腕枕をして眠りについた。

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