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第四章「彼女がいないと、俺は朽ち果てる……」
第17話 ルーティン・ルーティン
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「明日花さん、今日は一緒に買い物に出かけようか?」
すっかり俺の家に住み着いた彼女に、生活する上で必要な物を用意しようと声をかけた。
元々物に執着しない俺の日用品は必要最低限しか備えていないけれど、お揃いの食器とか歯ブラシとかに憧れがないわけではない。
「何を買うの? ベッドシーツとか、枕とか? ルームウェアやスリッパもお揃いで買いたいな」
「ルームウェア? スリッパ?」
「あのね、好きなフォロワーさんがアップしてたんだけど、ほら……カップルコーデで着てて。私も壱嵩さんと一緒に着たいなって思ったの」
そこには人気海外キャラクターをモチーフにした恋人向けのパジャマ。ソファーでイチャイチャしながら撮った写真からは甘い空気しか伝わってこない。
これを俺と明日花さんで?
「ネットで売ってるけど、ポチッと買ってもいいかな?」
「あ、待って! そのネットショッピングだけど、少し控えてもらえないかな?」
実は明日花さんの片づけられない要因の一つに、衝動買いがあった。
手軽に購入できるのがネットショッピングの良さだが、それが仇となっているのだ。本当に必要な物なのか、一旦保留にしてから購入することが望ましい。
「だから欲しいと思ったものがあった時は、実際に店舗で確認して決めよう。それでも欲しいと思った時は買ってもいいから」
「そうなんだ……。うん、分かった」
少しシュンと落ち込んで見せたが、こういう積み重ねが大事なのだ。
とはいえ、可愛い。
このパジャマを着て甘えてくる明日花さんを想像しただけで胸がトキめく。
絶対に可愛い。
両手いっぱいに抱き締めて愛で続けたい。
「買いたいのは山々だけど、ここで俺が折れたら意味がない……! よし、早く買い物に言って検討しよう!」
———……★
「——と、言ったものの、実際に必要なものって少ないんだよな」
無駄な購買意欲を抑える為に、予め必要な物をリスト化しておくことが重要だった。
今日買うものは歯ブラシ、コップ、シャンプー、タオル。そして箸、食器、グラスくらいだろう。
「壱嵩さんの部屋ってシンプルですもんね。なんであんなに綺麗に出来るんですか?」
「いや、心掛けているのは物を置かないこと。あとはちゃんと決められた場所に直すこと。案外この二つを守っていれば片付くんだよ」
放ったらかしにするから散らかるのだ。
床にものが落ちていなければお掃除ロボットが清掃もしてくれるし、無駄な労力を割かれずに済む。
食器もこだわらずワンプレートで済ませれば食洗機に入れるのも楽だし、服も乾燥まで済ませたものを脱衣所に纏めれば収納場所にも困らない。
これが数年、一人暮らしをした結果の集大成だ。
「あとシャンプーやボディソープなんだけど、あまりゴチャゴチャさせたくなくて。俺は拘りないから明日花さんが使っているものを一緒に使わせてもらいたいんだ。お金は俺が出すから」
「え、いいけど……結構高いよ?」
「うん、いいよ。その方がストック管理や掃除とかが楽なんだよね」
妥協はできる方がすればいい。
こうして一通りの買い物を済ませた俺達は、カフェに入ってランチをすることにした。
「可愛いコップとかコースターが買えて良かったね。壱嵩さんとお揃い、すごく嬉しい」
結局お揃いのものを全部新調することになり、思ったよりも大荷物になってしまった。
だが嬉しそうな明日花さんを見ていると、これはこれで有りだと思ってしまってるから、俺も甘いのだろう。
「帰ったらセットしよう。あと俺、やることをタスク化してるんだよね。月曜は台所の掃除、火曜日はランドリーって感じで。それも伝えておくから」
「え、スゴい! 私はそんなことしてなかったよ? 汚れたら掃除をって感じだった」
それでも構わないんだけど、時間が経っても「まだ大丈夫」と流しがちになってしまうのだ。このタスクに関しては自分でしようと思っていたのだが、周知していた方が明日花さんの為になると思い、伝えたのだ。
「明日花さんが抱えていた大変なことってデコボコだと思うけど、それが少しでもなくなるように手助けさせて。俺は明日花さんと一緒にこれからを歩んで行きたいから」
彼女は恥ずかしがるように眉を八の字に垂らして、何度も小さく頷いていた。
「ありがとう、壱嵩さん。でも、私にも壱嵩さんを幸せにさせてね?」
やっぱり可愛い。
この傲慢じゃない健気さがドストライクだったんだ。
そして焼き上がったパンとスープを食べながら色んな話を語り合った。
本当は美容師とかネイルアートなど専門職に就きたかったけど断念したこととか、映画を見るのも好きだけど音が大きすぎるのが苦手で映画館に行けないことなど。
まだまだ知らなかった一面を知ることができて嬉しかった反面、どうすればいいのか頭を悩ませた。
「ネイルもするのは好きだけど、お客さんと話すのが苦手だし。学校も交友関係が億劫で、結局途中で辞めちゃったんだ」
自分の爪しか彩ることができない歯痒さ。
夢を諦めないといけないことに、胸が痛んだ。
「——映画はさ、ホームシアターを買って一緒にみようか。ポップコーンを用意して、壁をスクリーンにして」
「え、いいの? そんなこと出来るの?」
「二人で見る分には音量気にしなくていいし。最近のプロジェクターは安いからね」
ネイルも、最近はフリマアプリとかで付け爪を販売している人もいる。きっと明日花さんなら可愛いネイルを作ることができるんじゃないだろうか?
「諦めなくても、いろんな方法があったんだね」
「全部が全部叶わけじゃないけど、最善のことを一緒に考えよう。一人じゃ思いつかないことも二人でなら解決するかもしれないし」
俺も明日花さんのおかげで解決した悩みもたくさんある。持ちつ持たれつつだ。
「あ……それじゃ、壱嵩さん。一つ相談なんだけど」
「ん?」と首を傾げて尋ねると、彼女は言いにくそうに告白した。
「やっぱりお揃いのルームウェア……欲しいです」
きっと明日花さんは買い物をすると言われた時から、欲しくて堪らなかったのだろう。その件に関しては俺も同意だ。
「さっきの写真を見せて。俺も一緒に選びたいから」
二人で肩を寄り添えながらスマホ画面を眺めた。最終的に違うデザインを購入したのだが、お互い満足のいく買い物ができてご満悦だった。
———……★
「俺、何回可愛いって言ってるんだ? いくら可愛いとはいえ、節度が無さすぎる!」
親バカならず、彼氏バカ?(どんまい)
すっかり俺の家に住み着いた彼女に、生活する上で必要な物を用意しようと声をかけた。
元々物に執着しない俺の日用品は必要最低限しか備えていないけれど、お揃いの食器とか歯ブラシとかに憧れがないわけではない。
「何を買うの? ベッドシーツとか、枕とか? ルームウェアやスリッパもお揃いで買いたいな」
「ルームウェア? スリッパ?」
「あのね、好きなフォロワーさんがアップしてたんだけど、ほら……カップルコーデで着てて。私も壱嵩さんと一緒に着たいなって思ったの」
そこには人気海外キャラクターをモチーフにした恋人向けのパジャマ。ソファーでイチャイチャしながら撮った写真からは甘い空気しか伝わってこない。
これを俺と明日花さんで?
「ネットで売ってるけど、ポチッと買ってもいいかな?」
「あ、待って! そのネットショッピングだけど、少し控えてもらえないかな?」
実は明日花さんの片づけられない要因の一つに、衝動買いがあった。
手軽に購入できるのがネットショッピングの良さだが、それが仇となっているのだ。本当に必要な物なのか、一旦保留にしてから購入することが望ましい。
「だから欲しいと思ったものがあった時は、実際に店舗で確認して決めよう。それでも欲しいと思った時は買ってもいいから」
「そうなんだ……。うん、分かった」
少しシュンと落ち込んで見せたが、こういう積み重ねが大事なのだ。
とはいえ、可愛い。
このパジャマを着て甘えてくる明日花さんを想像しただけで胸がトキめく。
絶対に可愛い。
両手いっぱいに抱き締めて愛で続けたい。
「買いたいのは山々だけど、ここで俺が折れたら意味がない……! よし、早く買い物に言って検討しよう!」
———……★
「——と、言ったものの、実際に必要なものって少ないんだよな」
無駄な購買意欲を抑える為に、予め必要な物をリスト化しておくことが重要だった。
今日買うものは歯ブラシ、コップ、シャンプー、タオル。そして箸、食器、グラスくらいだろう。
「壱嵩さんの部屋ってシンプルですもんね。なんであんなに綺麗に出来るんですか?」
「いや、心掛けているのは物を置かないこと。あとはちゃんと決められた場所に直すこと。案外この二つを守っていれば片付くんだよ」
放ったらかしにするから散らかるのだ。
床にものが落ちていなければお掃除ロボットが清掃もしてくれるし、無駄な労力を割かれずに済む。
食器もこだわらずワンプレートで済ませれば食洗機に入れるのも楽だし、服も乾燥まで済ませたものを脱衣所に纏めれば収納場所にも困らない。
これが数年、一人暮らしをした結果の集大成だ。
「あとシャンプーやボディソープなんだけど、あまりゴチャゴチャさせたくなくて。俺は拘りないから明日花さんが使っているものを一緒に使わせてもらいたいんだ。お金は俺が出すから」
「え、いいけど……結構高いよ?」
「うん、いいよ。その方がストック管理や掃除とかが楽なんだよね」
妥協はできる方がすればいい。
こうして一通りの買い物を済ませた俺達は、カフェに入ってランチをすることにした。
「可愛いコップとかコースターが買えて良かったね。壱嵩さんとお揃い、すごく嬉しい」
結局お揃いのものを全部新調することになり、思ったよりも大荷物になってしまった。
だが嬉しそうな明日花さんを見ていると、これはこれで有りだと思ってしまってるから、俺も甘いのだろう。
「帰ったらセットしよう。あと俺、やることをタスク化してるんだよね。月曜は台所の掃除、火曜日はランドリーって感じで。それも伝えておくから」
「え、スゴい! 私はそんなことしてなかったよ? 汚れたら掃除をって感じだった」
それでも構わないんだけど、時間が経っても「まだ大丈夫」と流しがちになってしまうのだ。このタスクに関しては自分でしようと思っていたのだが、周知していた方が明日花さんの為になると思い、伝えたのだ。
「明日花さんが抱えていた大変なことってデコボコだと思うけど、それが少しでもなくなるように手助けさせて。俺は明日花さんと一緒にこれからを歩んで行きたいから」
彼女は恥ずかしがるように眉を八の字に垂らして、何度も小さく頷いていた。
「ありがとう、壱嵩さん。でも、私にも壱嵩さんを幸せにさせてね?」
やっぱり可愛い。
この傲慢じゃない健気さがドストライクだったんだ。
そして焼き上がったパンとスープを食べながら色んな話を語り合った。
本当は美容師とかネイルアートなど専門職に就きたかったけど断念したこととか、映画を見るのも好きだけど音が大きすぎるのが苦手で映画館に行けないことなど。
まだまだ知らなかった一面を知ることができて嬉しかった反面、どうすればいいのか頭を悩ませた。
「ネイルもするのは好きだけど、お客さんと話すのが苦手だし。学校も交友関係が億劫で、結局途中で辞めちゃったんだ」
自分の爪しか彩ることができない歯痒さ。
夢を諦めないといけないことに、胸が痛んだ。
「——映画はさ、ホームシアターを買って一緒にみようか。ポップコーンを用意して、壁をスクリーンにして」
「え、いいの? そんなこと出来るの?」
「二人で見る分には音量気にしなくていいし。最近のプロジェクターは安いからね」
ネイルも、最近はフリマアプリとかで付け爪を販売している人もいる。きっと明日花さんなら可愛いネイルを作ることができるんじゃないだろうか?
「諦めなくても、いろんな方法があったんだね」
「全部が全部叶わけじゃないけど、最善のことを一緒に考えよう。一人じゃ思いつかないことも二人でなら解決するかもしれないし」
俺も明日花さんのおかげで解決した悩みもたくさんある。持ちつ持たれつつだ。
「あ……それじゃ、壱嵩さん。一つ相談なんだけど」
「ん?」と首を傾げて尋ねると、彼女は言いにくそうに告白した。
「やっぱりお揃いのルームウェア……欲しいです」
きっと明日花さんは買い物をすると言われた時から、欲しくて堪らなかったのだろう。その件に関しては俺も同意だ。
「さっきの写真を見せて。俺も一緒に選びたいから」
二人で肩を寄り添えながらスマホ画面を眺めた。最終的に違うデザインを購入したのだが、お互い満足のいく買い物ができてご満悦だった。
———……★
「俺、何回可愛いって言ってるんだ? いくら可愛いとはいえ、節度が無さすぎる!」
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