異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

文字の大きさ
上 下
241 / 243

241 秋です 7

しおりを挟む
 ここは森に囲まれた池の近くです。紅葉こうようがきれいです。

 わたしは、ローラ、陽子さんと一緒におやつを食べています。

ローラ「美しい山と紅葉、美味しいケーキ、最高ね」

 わたしもそう思います。

ローラ「上に乗っている甘栗、美味しいわね」
アンナ「マロングラッセと言います」

 この『マロン』じつは多くの日本人が勘違いをしています。
 マロンとは、英語ではなくフランス語です。英語で栗は、chestnut(チェスナット)と言います。
 そして、フランス語で栗のことをchataigne(シャテーニュ)と言います。
 マロンとは、栗ではなくマロニエの木の実のことです。日本ではとちの実と呼ばれています。

 どうしてこのような勘違いが生まれたのか、それにはこんな話があります。
 明治時代にフランスからマロングラッセが伝わりました。
 栗で作られたお菓子だと知り、マロン=栗という認識になったそうです。
 勘違いをするのも無理はありませんね。

 ではなぜ栗のお菓子がマロングラッセと呼ばれているのか、諸説あります。
 栗で作られたお菓子の見た目が、マロニエの木の実に似ていたので、マロングラッセになった。
 あるいは、当初マロニエの木の実でお菓子を作っていたが、渋抜きが大変なので、栗で代用することになったなどの説があるそうです。

 ちなみにアメリカでマロンは、食用ザリガニをさす言葉です。
 フランスのマロン(マロニエの木の実)が、日本では栗、アメリカではザリガニと呼ばれているわけです。
 言葉の変化は面白いです。

     *

 おやつが終わりました。

三人 「ごちそうさまでした」

 わたしはテーブルとイスを収納します。
 そしてマオをスリングに入れて、たすき掛けしました。

ローラ「このあとはどうするの?」

アンナ「陽子さん、案内をしてください」
陽子 「はい」

陽子 「移動します・・・転移」


*    *    *


 私たちは山の中腹に転移しました。

 わたしが初めて来る場所です。ここも紅葉がきれいです。
 目の前に露頭ろとうが見えています。鑑定しました。

アンナ「これがカオリンですね」
陽子 「はい、そうです」

 以前、ローラからもらった前世の家から磁器が見つかりました。
 磁器の原料は、カオリンなどの鉱石を砕いたものです。
 普段、ツアー客の食事に使う器は、わたしが練金魔法で作ったものです。
 いつかは手作りの器で、おもてなしがしたいと考えていました。
 ツアーの準備で忙しく、磁器のことはしばらく忘れていました。

陽子 「かまにご案内します」
アンナ「はい」

 陽子さんが先頭を歩きます。
 山道は雑草だらけです。

ローラ「三人で食器を作ったわね。
    陶芸・・・と言ったかしら?」
陽子 「はい、そうです。あれが登り窯です」

 私たちは登り窯に近づきました。窯の横には薪小屋まきごやもあります。
 傾斜を利用した窯がいくつも連なっていますが、雑草だらけで、窯の一部は崩れています。

アンナ「鑑定・・・クリーン・・・リペア」

 修復できました。登り窯の横には階段があります。
 手前の窯をのぞいてみましょう。

 窯の中に入りました。なんだか秘密基地みたいです。

アンナ「陽子さん、ここで前世のわたしが陶芸をしていたわけですよね?」
陽子 「はい、そうです」

 まったく記憶がありません。

アンナ「陽子さんは陶芸を覚えていますか?」
陽子 「はい。安奈あんな様に教わりました」
アンナ「今度は、わたしに教えてください」
陽子 「はい」
ローラ「面白そうね。久しぶりに私もやってみたいわ」
陽子 「はい、ローラ様も一緒にどうぞ」

 今日は時間がありません。陶芸をするのは別の機会にしましょう。

陽子 「次は工房にご案内します」

 工房の前に来ました。日本風の建物で、壁は白い漆喰しっくいです。
 周囲に雑草が生えています。

アンナ「鑑定」

 平屋で中の広さは60畳くらいです。
 壁のひび割れ、窓ガラスの破損、雨漏りしている箇所があります。
 外には、トイレと小さな納屋なやがあります。

アンナ「クリーン・・・リペア」

 工房が修復できました。

アンナ「出入り口は二つですか?」
陽子 「小さい方は普段使いの扉です。
    大きい扉は焼き物の出し入れに使います」
アンナ「わかりました。工房の中を案内してください」
陽子 「はい」

 小さな扉から中に入りました。
 周囲よりも少し高くなっていますが、土間になっています。広さは40畳くらいです。
 わたしは土間のある家で暮らしたことはありませんが、なんだかなつかしい感じがします。

ローラ「懐かしいわ」

 工房の奥は板張りの座敷になっています。広さは20畳くらいです。

マオ 「ミャー」

 マオは自分で歩きたいのでしょう。わたしはマオを降ろしました。

陽子 「土間の中をご案内します」

陽子 「この棚は作った焼き物を並べるものです」

陽子 「こちらの三つはろくろです。魔法で回転させます」

ローラ「そういえば、ろくろ以外魔法を使わないで器を作ったわね」

 なんとなくわかります。すこし不便なところにおもむきがあります。

陽子 「こちらは作業で使う道具類です」

 何に使うのかよくわかりませんね。

陽子 「この麻袋には、カオリンや鉱石をくだいて粉にしたもの、
    各地から採取した粘度などがあります」

陽子 「ここに並んだ小さなかめには釉薬が入っています」

陽子 「これが釉薬の色見本です」
アンナ「使える色が豊富ですね」

 他には、作業台や水甕などがあります。
 そして作業場から少しはなれた土間の奥には簡単な仕切りがあります。

陽子 「ここは台所です」

 キッチンと言うより、台所の方がしっくりきます。
 かまど、調理台、石材製の流し、水甕があります。レトロな雰囲気がたまりません。



陽子 「次は、座敷をご案内します」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...