異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

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204 修学旅行初日です 12

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 ここはサンローラの街です。

 私たちA組は商業ギルドを見学しています。
 いまギルド本館の裏側にある商品取引所に来ています。

アンナ「すみません、見学させてください」
職員 「はい、どうぞ」

アンナ「ここが商業ギルドの取引所です」

女子 「人や馬車、物がいっぱい」
女子 「活気があるね。それに広い」

アンナ「ここは、冒険者ギルドよりも多くの物品を取り扱うため
    取引所の敷地も広いです。
    午前中は、今よりも多くの人や物で混雑しています」

アンナ「ここで取り扱っている商品は、生鮮品以外に加工食品や
    職人が扱う素材、建築資材、雑貨など様々です。
    そのため荷捌場もかなり広く、倉庫の数も多いです」

女子 「なんか面白いね」
女子 「日本にはギルドないからね」
女子 「だよね」

     *

 商業ギルドの見学が終了しました。
 次は職人街に向かいます。

 ここは大通りから奥に入った路地裏です。

アンナ「ここは職人街です。 木工職人、鍛冶かじ職人、
    機織はたおり職人、石工いしくなどの工房が
    のきを連ねています」

 わたしは木工所に向かいました。

アンナ「モックさん、こんにちは」
モック「アンナさん、いらっしゃい」
アンナ「見学してもいいですか?」
モック「いいけど、見てもつまらないぜ」
アンナ「そんなことはありませんよ」

 ここは、猫耳亭で導入したキララ窓とトイレを作った木工所です。
 私たちは奥の工房に入ります。今回も半数ずつの見学です。
 従業員は五人います。わたしが最初に来たときは一人でした。

アンナ「ここでは、大工からの注文に応じて扉や窓などの建具を
    作ったり、トイレを作っています」

アンナ「これがキララ窓です。最近この街で普及しているものです」
男子 「さんが多い」
アンナ「はい。大きなキララは、数が少なく高価です。そのため
    普通は小さなキララを使うので桟の数が多くなります」
男子 「なるほど」
女子 「キララ窓が普及する前は、どんな窓だったの?」
アンナ「よろい窓と呼ばれる木製の窓です」
女子 「それって、窓を閉めたら、部屋が真っ暗っていうこと?」
アンナ「はい。風雨の強い日や真冬は室内が暗いそうです」
女子 「キララ窓って革命的じゃん」
モック「そう言うことだ。今度の冬は明るく過ごせる。今から
    楽しみだ」

     *

 次はトイレの説明をします。

アンナ「これがトイレです。日本の仮設トイレより大きいです」

 日本の仮設トイレは狭すぎです。

アンナ「この街には元々トイレがありませんでした。
    それではツアー客が困るのでわたしが作りました」
女子 「ちょっと待って。以前はトイレがなかったの?」
アンナ「はい。空き地でするか、オマルに用を足して
    捨てていたそうです」
女子 「信じられない」
男子 「トイレがなかったら、ドン引きだな」

アンナ「ちなみにこのトイレは、日本の山小屋にあるバイオトイレと
    ほぼ同じ構造です」

アンナ「便座の下には、おがくず、枯れ草、腐葉土を入れます。
    そして、微生物が排泄物を分解して堆肥たいひになります。
    堆肥は畑にく肥料に利用されます」
男子 「トイレをきれいにするスライムは、いないのか?」
アンナ「あれはアニメの話です。そんな都合のいい生き物、
    現実には存在しません」

 わたしは生徒を入れ替えて、同様の説明をしました。

     *

 次は鉄工所に向かいます。

アンナ「アインさん、こんにちは」
アイン「アンナさん、いらっしゃい」
アンナ「見学してもいいですか?」
アイン「どうぞ」

 私たちは奥の工房に入ります。今回も半数ずつの見学です。
 ここは、先割れスプーン、スライサー、ホイッパー、ファイヤースターターを作ってもらった鉄工所です。

アンナ「ここでは、鍋やフライパンなど、調理に必要な道具類を
    作っています」

アンナ「今あちらで作っているのが、先割れスプーンです」

アンナ「実は、この大陸にはフォークがありません。スープやシチューは
    スプーンで食べますが、それ以外は手で食べます」
男子 「そうなんだ」
アンナ「それでは、ツアー客が困るので、先割れスプーンを作りました」

アンナ「先割れスプーンを作る工程を説明します。
    まず、最初に作った金型で、ステンレスの板を先割れスプーンの
    形に打ち抜きます。次にプレス機で湾曲を作り、
    最後にふちを削れば完成します」

アンナ「ちなみにステンレスは鉄とクロムで作る合金です」

     *

女子 「あれは、なに?」
アンナ「あれは、ファイヤースターターと言って火を起こす道具です。
    火打石では、火を起こすのが大変なので作ってもらいました。
    わたしも同じものを持っています」

 わたしはアイテムボックスから、小さなテーブルとファイヤースターターを出しました。
 テーブルの上には、鉄板とおがくずをのせます。

男子 「これ知ってる。キャンプで使ったやつだ」
アンナ「このロッドはマグネシウム合金で出来ています。
    実際に火を着けるところをお見せします」
男子 「俺にやらせて」
アンナ「はいどうぞ」

 男子は、ロッドをストライカーでこすり、激しく火花を出します。

男子 「ふー、ふー」

 息を吹きかけると火が着きました。

女子 「すごーい」
女子 「火が着くのが早いね」

 男子はドヤ顔です。

 そして男子が数人、ファイヤースターターを気に入り、その場で買っていました。

 わたしは生徒を入れ替えて、鉄工所の説明をしました。

     *

 私たちは鉄工所を出ました。
 他にも面白い工房がたくさんありますが、すべてを見る訳にはいきません。

志村 「有意義な見学でした。日本ではものづくりの見学をする機会は
    なかなか無いですから」
アンナ「そうですね」

アンナ「次はこの街の人気店を何件か回ります」



 私たちは氷屋に向かいました。
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