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ゑゐる

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191 王都 3(別視点)

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* 別視点 ポール side *

 王都に到着して3日が経った。

 今日はこれから叙爵の儀が執り行われる。
 いま私は、王城内、控えの間にいる。さすがに緊張する。

 コン、コン、コン。

ポール「どうぞ」
職員 「お時間です。ご案内します」
ポール「頼む」

 私は職員誘導され、ついて行く。向かう先は謁見の間。
 その大扉の前に着いた。

職員 「お待ちください」

 しばらく待つと・・・

 コン・・・コン。
 謁見の間内側から合図があった。

 おお扉が開く。

職員 「ポール・カベスカ殿、入場」(大きな声)

 通路の左右には多くの貴族がいる。
 私は玉座に向かって歩みを進めた。
 そして国王陛下の前でひざまずきき、こうべを垂れる。

国王 「おもてを上げ、起立せよ」

ポール「御意ぎょい

 私は顔を上げて立ち上がる。

宰相 「奏上そうじょう」(大きな声)

宰相 「ポール・カベスカ殿の功績を申し上げます。
    サンローラの発展、キララ発掘、スラム解消、村の開拓、
    砂糖の製造、国家に有益な発明品の献上、料理レシピの献上」

宰相 「この功績に相応しき爵位を任命すべきと進言いたします」

国王 「国王ルイ・タマイサの名において、
    ポール・カベスカを子爵に任命する」

ポール「御意、謹んで受命いたします」

 パチパチパチ・・・
 拍手が起こる。

宰相 「爵位章、任命書、恩賜おんし目録の授与」

 私の横に職員が二人現れた。
 えりのラペルホールに爵位章を着けてもらい、任命書と恩賜目録を受領した。

宰相 「ポール・カベスカ子爵、退場」

 私は陛下に一礼したあと、きびすを返して退場する。
 謁見の間の大扉が閉まった。

 叙爵の儀が無事に終了した。

     *

 謁見の間では引き続き領主との謁見がある。
 そのあと通常であれば貴族が集まり、お茶会になるのだが、今回は大広間でお茶を飲みながらの歓談になるらしい。
 そして大広間でサンローラの特産品が披露される。
 私は大広間に向かった。

 大広間に入ると妻のクレアが待っていた。

ポール「リリーはどこだ?」
クレア「あそこにいます」

 リリーは貴族の子供達に囲まれていた。
 子供達は、娘が持っている黒猫のぬいぐるみが気になり注目しているようだ。

 大広間には、式典に参加出来なかった貴族の子息や令嬢がいる。
 特産品を見学している者や歓談している者、遊戯盤ゼンセンに興じている者もいる。

ポール「正式に叙爵した。子爵だ」
クレア「おめでとうございます。あなた」
ポール「ありがとう。これが任命書だ」
クレア「拝見します」

 任命書は革製の豪華な装丁になっており、開くと左に任命書、右に記念メダルと恩賜の品名が記されている。

ポール「お茶にしよう」
クレア「はい」

 私はクレアから任命書を受け取った。そして空いているテーブルに向かう。
 リリーが私たちに気付いて、一緒について来た。

 私たちが着席すると職員がワゴンを押して来た。

職員 「お飲み物は、いかがでしょうか?」
ポール「コーヒーはあるか?」
職員 「はい。ございます」
ポール「ではコーヒーを、砂糖とミルク入りで」
クレア「わたくしは、カフェオレを、砂糖入りで」
リリー「ここあ」
職員 「かしこまりました」

 飲み物が配り終わると・・・

職員 「お菓子は、いかがでしょうか?」

 ワゴンには数種類の菓子が乗っている。サンローラでは見慣れた菓子ばかりだ。

ポール「リリー、チーズケーキがあるぞ」
リリー「たべたい」
クレア「わたくしも」
ポール「チーズケーキを三つくれ」
職員 「かしこまりました」

 チーズケーキが配られて、職員は下がった。

ポール「うん、コーヒーがうまい。街と同じ味だ」
クレア「チーズケーキも美味しいですわ」
リリー「おいしい」

 コーヒーとケーキはサンローラと変わりない。さすが王城だけのことはある。

ポール「リリー、先ほどぬいぐるみが注目されていたようだな」
リリー「うん、かわいいって」
ポール「そうか、それは良かったな」
リリー「うん」

     *

 謁見を終えて貴族達が大広間に入ってくる。
 やはり、サンローラの特産品が気になるようだ。

 貴族達は熱心の特産品を見て、説明書を読んでいる。
 食材で注目されているのが、卵と砂糖だ。
 通常、卵を入手するには、野鳥の卵を採取する。定期的に入手はできない。
 そのため高級食材になっている。
 砂糖は、外国からの輸入に頼っている。こちらも高級品の扱いだ。

 食材以外で注目されているのが、キララ、遊戯盤ゼンセン、そろばんだ。

 今回、キララは小さな窓枠にはめ込んで展示したある。
 板ガラスはこの国で生産していない。製造方法も不明、当然高級品だ。
 王城でさえも、全ての窓を板ガラスにすることはできない。
 多くの貴族にとって、板ガラスの窓は憧れだ。その代替品のキララに注目が集まるのは当然と言える。

 遊戯盤は、陛下がたしなむと言う話が伝わっている。
 これから社交の場で必要になることを多くの貴族が理解しているはずだ。

 そして、計算道具のそろばんも多くの貴族が熱心に見ている。
 領の運営、税収の計算業務に必要なのは明らかである。
 そろばんは、ギルドだけではなく、各領主も導入するに違いない。

     *

 大広間に人が増えてきた。



 私たちは中庭に行くことにした。
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