異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

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121 代官 3(別視点)

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* 別視点 代官ポール side *

 ここはアンナ村の集会所。

ポール「うまい。なんという料理だ」
ジミー「クリームシチューです」
ポール「初めて食べる味だ」

 ぱくっ。

ポール「うまい。変わった風味のパンだ」
ジミー「ソバで作ったパンです。」
ポール「ソバ・・・家畜が食べる雑穀から、
    こんなうまいパンが作れるのか」
ジミー「はい。シチューとパンの作り方は、
    アンナという女性の教わりました」
ポール「はやりそうか」

ジミー「あの・・・税の取り立てでしょうか」
ポール「いや、まだそこまで考えてはいない」

ポール「ワウラ伯爵は廃爵となり、この領は王家の直轄領になった。
    私は代官として村の様子を見に来ただけだ。
    詳しい話は食事のあとにしよう」
ジミー「はい」

     *

ポール「馳走ちそうになった」

 コン、コン、コン。

女性 「お茶を持ってきました」
ジミー「どう。」

 女性は茶菓子を配り、集会所を出て行った。

ジミー「どうぞ。ソバ茶とプリンです」

 ごくっ。

ポール「風味がいい。ソバで茶が作れるとは知らなかった。
    菓子もうまそうだな」

 ぱくっ。

ポール「うまい。玉子を使った菓子か?」
ジミー「はい。玉子、牛乳、砂糖で作りました。
    食材はこの村で作ったものです」
ポール「そうか。この黒いシロップはなんだ?」
ジミー「このシロップは、砂糖を作る際に火加減を間違えて焦がした
    ものです。アンナさんに相談したところ、プリンにかけて
    食べると美味しいと言われ、自分たちで食べております」
ポール「そうか。失敗作とは思えない味だ」
アキノ「私もそう思います。
    ジミーさん、このシロップも売ってください」
ジミー「はい。わかりました」
ポール「そういえば、商会主であったな。
    なにを取り扱っているのだ?」
アキノ「主にアンナ村の特産品を取り扱っております」
ポール「そうか。ちょうどよい。明日にでも屋敷に来てくれ」
アキノ「はい。ありがとうございます。伺います」

     *

 プリンはうまい菓子だ。気に入った。

ポール「早速だが、村を案内してほしい。まずは砂糖作りからだ」
ジミー「はい。わかりました」
アキノ「私もご一緒してよろしいでしょうか」
ポール「好きにすればよい。」
アキノ「ありがとうございます」

     *

 ここが砂糖作りの工房か。

ジミー「これが甜菜という作物です。これを小さく切って鍋で煮ます。
    そして糖分を抽出させ煮詰めて砂糖にします。」
ポール「なるほど、こうやって作るのか。
    この作物もここで栽培しているのか?」
ジミー「はい。あとで畑をお見せします」

 そのあと、乳製品の工房や鶏舎、牧場などを見て回った。
 ここが元スラムであるとは信じられない。

     *

ジミー「ここが畑です。甜菜、ソバ、芋類、野菜、香草などを
    栽培しています。秋には、食用油を生産するため、
    菜種の栽培を始める予定です」

ポール「小麦は栽培していないのか?」
ジミー「はい。今のところ栽培する予定はありません。
    ここで栽培している作物は近隣の村で作っていないものばかり
    です。同じ作物を作ると価格が下がり、近隣の農家に迷惑が
    かかるとアンナさんから言われました」
ポール「そういうことか」

 今後、街を訪れる人や移住する人が増えるかもしれない。
 小麦の生産量は考えておく必要があるだろう。

     *

 私はアンナ村の視察を終えて教会に向かった。
 教会での女神顕現けんげんについて、直接聞く必要がある。


*    *    *
 

 教会で話を聞いたが、軍の一次調査と差異はなく、新しい情報は得られなかった。

 そのあと、アンナが直接指導した4つの店をまわり、視察と試食をした。
 宿と食堂は、王都の店よりもうまい。
 パン屋と肉屋は、どこも同じだと思っていたが、まるで違う。
 これで毎日の食事が楽しみだ。


*    *    *


 私は屋敷に戻った。

 私は街での話を振り返っていた。
 女神顕現と神罰を始め、この街の変化、発展の全てにアンナが関わっている。
 料理のレシピ、技術特許、街の清掃、魔物討伐、盗賊の捕縛、スラムの解消、開拓村など。
 アンナは、普通の領主以上に領主らしい存在だ。本当に使徒かもしれない。

 アンナに会って話がしてみたい。しかし不敬だと思われ神罰が下るのは困る。
 女神様のお怒りで国が滅びたという昔話はたくさんあるからな。

 今は報告書をまとめ、料理レシピと特許発明品を国王陛下に献上する準備をしよう。



 陛下は、きっと驚かれることだろう。
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