異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

文字の大きさ
上 下
119 / 243

119 代官 1(別視点)

しおりを挟む
* 別視点 代官ポール side *

 ここはワウラの街、馬車の中。

 馬車に乗っているのは新任の代官ポール。

 ポールは、カベスカ公爵家のの三男、21歳。
 王城からこの街に派遣され、先日、代官として着任したばかりであった。

 ポール・カベスカは、馬車で冒険者ギルドに向かっている。


*    *    *


 ここが冒険者ギルドか。行くとしよう。

ヒルダ「お代官様でしょうか?」
ポール「そうだ」
ヒルダ「奥の部屋にご案内いたします」
ポール「その前に掲示板が見たい」
ヒルダ「かしこまりました。ご案内いたします」

ヒルダ「こちらでございます」

 ギルドの掲示板を見れば街のことがよくわかると友人から聞いていたから、見ておく必要がある。

ポール「宿、食堂、大工の求人が多いな」
ヒルダ「はい。街を訪れる人が増えたので、どこも忙しいです。
    それと宿が足りないので、現在数件の宿を建築しております」
ポール「そうか」

ポール「清掃の依頼は、前の領主が出したものか?」
ヒルダ「いいえ。アンナという女性冒険者の依頼です」
ポール「アンナ? ひょっとして黒髪の女性か?」
ヒルダ「はい。そうです」
ポール「・・・・・・」

ポール「魔物討伐の依頼が少ない」
ヒルダ「はい。アンナさんが定期的に討伐しているので、
    魔物の被害はほとんどありません」
ポール「そうか」
ヒルダ「詳しい話は後ほど」
ポール「わかった。ギルドマスターと話がしたい」
ヒルダ「はい。ご案内します」

     *

 コン、コン、コン。

ヒルダ「お代官様をお連れしました」
テッド「どうぞ」

テッド「ギルドマスターのテッドです」
ポール「代官のポール・ベスカだ」
テッド「おかけください。」

 私は国家の方針をギルドマスターに説明をした。
 ワウラ伯爵が廃爵になったこと。この領が王家の直轄領になったことなど。

ポール「この街について、話を聞きたい」

 私はギルドマスターから街の状況を聞いた。

     *

 コン、コン、コン。

ヒルダ「ヒルダです」
テッド「入れ」

ヒルダ「失礼いたします。コーヒーとお菓子です」
ポール「コーヒー? 随分ずいぶん黒い」
ヒルダ「苦味がありますので砂糖とクリームを入れて、お飲みください」

 紅茶とは全く違う香りだ。

 ごくっ。

ポール「うまい」
ヒルダ「ありがとうございます」

ポール「これは焼き菓子か」

 私は猫の形をした菓子を食べた。
 うまい。

ポール「これはチョコレートの菓子か?」
ヒルダ「はい。そうです。」
ポール「この菓子はどこで手に入れた?」
ヒルダ「街の宿屋、猫耳亭です。
    チョコレートは商業ギルドでも取り扱っております」
ポール「そうか。わかった」

 アンナ、チョコレート・・・なるほど。

 王都では幻の菓子と呼ばれているチョコレートが、この街では簡単に手に入るようだ。

 私はコーヒーと菓子を堪能しながらテッドの話を聞いた。

     *

ポール「次は、街の治安と盗賊について聞きたい。」
テッド「はい。治安は良くなりました。
    以前いた不良の集団は、いなくなりました。
    街道の盗賊はアンナが捕縛して以降、
    出没したという話を聞きません」

ポール「そうか。聞きたいことは以上だ。ギルドから何かあるか?」
デッド「はい。領主様が失踪してから、
    衛兵の給金を冒険者ギルドが立て替えております」
ポール「そうか。屋敷に請求書を回してくれ」
デッド「はい。お願いします」
ポール「領主不在の間、よくやってくれた。感謝する」

 冒険者ギルドの話でこの街のことはある程度わかった。
 次は商業ギルドに向うとするか。


*    *    *


 ここが商業ギルドか。訪れる人が多い。扉の外にまで行列ができている。

 アポイントメントは取ってある。行列に並ぶ必要はない。中に入るか。

マギー「お代官様でしょうか?」
ポール「そうだ」
マギー「ご案内いたします」
ポール「たのむ」

     *

 コン、コン、コン。

マギー「お代官様をお連れしました」
ジーナ「どうぞ」

ジーナ「ギルドミストレスのジーナです」
ポール「代官のポール・カベスカだ」
ジーナ「どうぞ。おかけください」

ポール「商業ギルドを訪れる人が多いが、まずはそれから話を聞きたい」

 私は、ジーナから街の状況や技術特許、料理のレシピについての説明を聞いた。

 どおりで人が多いわけだ。

     *

 コン、コン、コン。

マギー「マギーです」
ジーナ「どうぞ」

 ワゴンで茶菓子が運ばれてきた。

マギー「失礼します。コーヒーとお菓子をお持ちしました」
ポール「コーヒーは、先ほど飲んだので知っているが、
    その菓子はなんだ?」
マギー「チーズケーキでございます」
ポール「チーズ? あのくさい乳製品で菓子が作れるのか?」
ジーナ「とても美味しゅうございます」
ポール「そうか」
ジーナ「その小さなアンナスプーンで切って、お召し上がりください」
ポール「わかった」

 ぱくっ。



ポール「うまい・・・」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた! ※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています

処理中です...