異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

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074 甘いです

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 ここは旧スラムの村にある集会所です。
 中にいるのは、代表者ジミーさんと商会主のアキノさん、わたしの三人です。

アンナ「もう一つ、作ってほしいものがあります」

 わたしは、生クリームを片付け、飛行島で収穫された甜菜てんさいとコンロを出しました。
 鍋に水を入れて、火にかけます。

アンナ「これは、甜菜という作物です。これから砂糖を作ります。」
二人 「砂糖!」

 わたしは甜菜を小さく切り、鍋に入れました。
 沸騰しないように火加減に注意します。とろ火で1時間ほど煮込みます。

 その間にわたしはカフェオレをいれて、乳製品や玉子を使ったお菓子を数種類出しました。
 私たちは食べながら、村の現状と今後について話をしました。

 1時間後、

 わたしは甜菜を取り出し、煮詰めていきます。

ジミー「それを食べてもいいですか。」
アンナ「はい。どうぞ。」

 ジミーさんは、甜菜を一切ひときれ食べました。

アキノ「私も」

ぱくっ。

二人「甘い」
ジミー「けど、あまり美味しくはないですね」
アキノ「ええ」

 甜菜自体は美味しいものではありません。

アンナ「それは、家畜の餌にでもしてください」

ジミー「はい。」
アンナ「そしてこの甘い液体を煮詰めれば、砂糖が完成します」
アキノ「すばらしい。ジミーさん私に砂糖を売ってください」
ジミー「はい。ですが肝心の甜菜はどこに・・・」
アンナ「それをこの村で作ります」

 わたしはプランターを出しました。

アンナ「これが甜菜の苗です。これを畑に植えてください。
    秋には収穫できます」
ジミー「わかりました」
アキノ「楽しみですね」

 わたしは、作りかけの鍋を残し、コンロを収納します。

アンナ「鍋は残していきます。後で煮詰めて砂糖にしてください。
    村の皆さん、喜ぶと思います」
ジミー「はい」

 わたしは、砂糖作りに必要な鍋をたくさん出しました。
 その後畑に行って甜菜の苗を出し、食料庫に行って木箱に入った甜菜を大量に出しました。

 後はジミーさんにお任せします。

 わたしは二人と別れ、街に転移しました。

*    *    *

 次に向かったのは、猫耳亭です。朝食の評判を聞くためと、昼食を食べるためです。

アンナ「ノエルちゃん、こんにちは」
ノエル「いらっしゃいませ」
アンナ「これ、お土産です」

 わたしは、マリトッツォが6個入った、バスケットをノエルちゃんに渡しました。

アンナ「お父さんとお母さんにもあげてください」
ノエル「どうもありがとう」

エマ 「アンナさん、こんにちは」
アンナ「エマさん、こんにちは」
エマ 「今朝、オープンサンドを出しましたよ。好評でした。
    ありがとうございます」
ノエル「お母さん、これ。アンナお姉ちゃんから」
エマ 「いつもすみません。いただきます。
    お昼ごはん、食べていきますか?」
アンナ「今日は持参したものをお昼に食べます。部屋空いてますか?」
エマ 「奥の一人部屋が空いています」
アンナ「昼食の間、その部屋を借ります」
エマ 「はい。どうぞ」

     *

 わたしは、宿の部屋を借りました。イスに座って、テーブルに昼食を出します。
 深皿に入ったごはんとレトルトカレーです。

 カレーは、作るものではありません。ましてや飲み物でもありません。
 カレーは買うものです。100円コンビニに売っています。

 わたしは、カレーを魔法で温めて、ごはんにかけました。いいにおいです。

アンナ「いただきます」

 ぱくっ。

 久しぶりのカレーは、美味しいです。

 コン、コン、コン。

ノエル「ノエルです」
アンナ「はい。どうぞ」

  ノエルちゃんが部屋に入ってきました。

ノエル「お母さんが、これ持っていきなさいって」

 それは、カツレツと蒸し野菜でした。

ノエル「いいにおい」
アンナ「食べてみますか?」
ノエル「うん」

 わたしは小さなスプーンを出しました。
 そしてカレーライスをすくって、ノエルちゃんに一口あげました。

ぱくっ。

ノエル「・・・・・・お父さーん」

 ノエルちゃん、カレーは持って行かないで。

     *

 わたしの前に、こうべを垂れ、手のひらを組み、
 ひざまづいている宿の主人ザックさんがいます。
 それ、神様の前でするものですよね。
 ノエルちゃんも真似しないでください。

アンナ「わかりました。後で作り方教えます」

     *

 ザックさんとノエルちゃんは戻っていきました。

 カレーは家庭科実習のときに作ったことがあります。
 材料を煮込んでカレーのルウを・・・
 あ、どうしましょう。ルウで作るわけにはいきません。迂闊うかつでした。

     *

 昼食が終りました。

アンナ「ごちそうさまでした」

 いまはランチタイムで忙しい時間帯です。
 カレーの件は、一旦保留です。

 とりあえずわたしは、100円コンビニでレトルトカレーをお取り寄せしました。

 他にもすることがあるので、そちらを先に片付けることにします。

 わたしは、猫耳亭を出ました。



 次は孤児院に向かいます。
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