異世界ツアーしませんか?

ゑゐる

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010 異世界ツアー初日です 8

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 ここは、宿の中です。

 わたしは1階に降りていきました。食堂内に客はいません。
 外の様子を見ると人が並んでいます。ダノンさんの食堂と同じ状況です。
 わたしは厨房に行って、尋ねました。

アンナ「まだお客さんを入れないんですか」
エマ 「食事は、宿のお客さんが先なんです」
アンナ「各部屋に運ぶんですか」
エマ 「はい」
アンナ「わたし、手伝います」
エマ 「すみません。お願いします」

 宿が忙しくなったのは、多分わたしの責任です。
 わたしはエプロンを借りて、料理を運ぶことにしました。
 出来上がった料理をアイテムボックスに入れます。

エマ 「アンナさん、これもお願いします」

 それは火のついたあかりです。夜になったら、室内やトイレで使用するそうです。
 全てアイテムボックスに入れて、2階の廊下に・・・

アンナ「転移」

 各部屋に運び終わり、令奈さんの部屋に行きました。

 部屋のテーブルは小さいのでアイテムボックスに片付けます。
 代わりにアイテムボックスから、私物のテーブルと椅子を出しました。

 1階がざわざわしています。食堂にお客さんが入って来たようです。
 まだ忙しさは続くと思いますが、わたしは、ツアー客が優先です。

 わたしは、アイテムボックスから食事を出しました。

 夕食は、ウクライナ料理です。
 メニューは、チキンキエフ、ボルシチ、パンプーシュカ、ヴァレニキです。

美波 「ちょっと待って。写真撮りたい」

カシャ。

アンナ「食事にしましょう・・・いただきます」
四人 「いただきます」

 ぱくぱく・・・

四人 「美味しい」

 わたしは、料理の説明をしました。皆さんは食べながらわたしの説明を聞いています。

     *

チキンキエフ(キエフ風カツレツ)
 ハーブバターを鳥ムネ肉で包み、衣をつけて、揚げ焼きにしたものです。
 キエフという首都の名前がついていますが、発祥については諸説あるそうです。

ボルシチ
 ビーツ、野菜、肉を煮込んだスープです。
 ロシア料理として有名ですが、実はウクライナ発祥の料理です。

パンプーシュカ
 小さな丸いパンです。
 オーブンで焼き上がった後に、にんにく・香草・塩・食用油で作ったソースをパンの上に塗ります。
 今回はオーブンで焼きましたが、油で揚げるものや甘いパンプーシュカもあるそうです。

ヴァレニキ(ワレニキ)
 ウクライナの水餃子です。店や家庭ごとに、入れる具材や味付けが違うそうです。

ヴァレニキの作り方
 今回の具材はジャガイモです。
 まず小麦粉をねて皮を作り、ジャガイモは蒸して潰しておきます。
 次に、フライパンに油をひき、みじん切りの玉ねぎを炒めます。
 飴色になったら、香草や調味料を加えてオニオンソースを作ります。
 このソースをは半分だけ、ジャガイモと混ぜて、皮で包んででます。
 茹で上がったら、残しておいたオニオンソースをからめて完成です。

     *

アンナ「ここにスメタナというサワークリームがあります。
    水餃子に付けたり、ボルシチに入れると美味しいですよ」

 今回、カトラリーはわたしが用意しました。
 わたしは、この世界でスプーン以外のカトラリーを見たことがありません。
 中世のヨーロッパ同様、スープ以外は手で食べるようです。

美波 「この焼きたてのパン、すごく美味しい」
秋恵 「パンとボルシチの相性がいいよね」
菜々子「このボルシチ、私が以前食べたのと色が全然違う」
アンナ「多分それは、トマトで作ったボルシチもどきだと思います」

 かつて日本では、ビーツの入手が困難だったので、トマトで代用したという話を聞いたことがあります。

令奈 「この水餃子、味がしっかり付いているから、
    タレがなくても美味しいね」

 皆さん、ウクライナ料理が気に入ったようです。
 日本人が知らない料理を作るのは大変ですが、魔法とインターネットがあればなんとかなります。

     *

 食事が終わりました。

私たち「ごちそうさまでした」

 わたしは食器をアイテムボックスに片付けて、人数分の紅茶を出しました。

 コンコンコン。

エマ 「エマです。アンナさんはいらっしゃいますか?」
アンナ「はい。どうぞ」

 エマさんが部屋に入ってきました。

エマ 「アンナさん、先ほどはありがとうございました。
    これはサービスです。皆さんで召し上がってください」
アンナ「はい。いただきます」

 テーブルの上にヴァレニキ(水餃子)が置かれました。
 わたしは人数分のフォークを出しました。

アンナ「皆さん食べてください。これはデザートです。甘いですよ」
四人 「甘い?」

 皆さん、おしゃべりしながら食べ始めました。

アンナ「エマさん、宿が忙しくなったみたいですけど、
    原因はわたしが教えた料理ですか?」
エマ 「はい・・・そうです。
    最近では料理目当てに宿泊されるお客さんもいて、
    毎日満室になってます。」
アンナ「ご迷惑でしたか?」
エマ 「いえ、とんでもないです。
    むしろ売り上げが増えて、家族全員喜んでいます」
アンナ「そうですか。よかったです」
エマ 「少し前に一人雇ったんですけど、
    もう一人雇うことを考えています」
アンナ「そのほうがいいと思います」
エマ 「はい・・・それでは、失礼します」

 わたしはエプロンをエマさんに返しました。エマさんは受け取り、1階に戻っていきました。

     *

 皆さん、デザートのヴァレニキ(水餃子)を食べています。

 今回の甘いヴァレニキの中には、チェリージャムとカッテージチーズが一緒に入っています。
 ウクライナでは、甘いヴァレニキも人気があるそうです。

令奈 「これ美味しい」
菜々子「甘くて、美味しい」
美波 「デザート水餃子も美味しいよね」
秋恵 「うん・・・もうお腹いっぱい」



 デザートが食べ終わりました。
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