【R15】専属執事に階段から突き落とされたのですが、どうも様子が変です。【完結】

ヨウカン

文字の大きさ
上 下
55 / 69

54 逃げたい

しおりを挟む


「ここは身の危険を感じるので、私の部屋に戻りたいです。
あと、飲み物をください」


「わかりましたよ、お姫様」


そう言うと、フレディはドアを開けてくれた。








エリーゼ自室


「あの、何かあったんですか?」


ティーセットを持って現れたのはレイア。


ハイテーブルに向かい合って座る私とフレディの空気感を見て何かを察知したようだ。


「全然、何も」


「口、尖ってますよ?」


レイアに言われてフレディはハァと溜息をついた。


「一悶着あったが、落ち着いたところだ」


「そうですか」


そう言って、レイアは香りのいい紅茶を出してくれる。


華奢なカップの紅茶をひとくち含むと、ほっと落ち着いてきた。


「それと、サンダース商会からオーダーした服の納品のお知らせが来ました」


「それはちょうどいいな。
今日中に来てもらってくれ、それもなるべく早くだ」


「わかりました、それでは連絡してきます」


そう言って、レイアは退出する。








ドアが閉まり、二人きりになるとフレディは指を組んでこちらを見た。


「さて、エリーゼ様はこんな人生逃げたいとおっしゃいましたね?
ここで生活するのは、お辛いですか?」


その問いかけに、素直に言葉が出てくる。


「……フレディやレイアが助けてくれるようになってからは、楽しい毎日でした。
でも、私は親から嫌われて幽閉されていることに気づいてしまった。
このままここに居続けるのは、なんだか居心地が悪いし辛いです」


もちろん、嫌われ者を閉じ込めたこの離れに、ふんぞり返って生活することだってできる。


でも、気分が悪いのだ。


そうやって生きていくことが、とても辛い。


「なるほど、お気持ちはよく分かりました。
私も、魔封じの呪いは想定外でした。
魔力を徐々に貯めていく作戦は失敗です。
あれだけ強力な呪魔法であれば、私やレイアでは手も足もでない。
ここにいても、解呪は不可能でしょう。
そして、このままここで生きていても、エリーゼ様の精神衛生上良くない」


フレディの言っていることは何もかも的確だった。


私も、それを感じている。


「であれば……私のおすすめのプランは国外逃亡です」


「え???」


何を言い出すかと思えば、国外逃亡?


もう、フレディの言葉に驚いてばかりだ。


「私の調査結果ではエリーゼ様と、ご両親ご姉妹きょうだいとは今後分かり合える見込みは極めて少ないと言えます。
エリーゼ様にあのような非人動的な仕打ちをした以上、深い遺恨によって傷つけ合うだけでしょう。
ですが、アイネリス卿はエリーゼ様を手放すことは絶対にしません」


「そうなの?」


「その話は込み入るので後ほどお話ししますが、アイネリス卿はエリーゼ様の自由を望みませんし、結婚も望みません。
生き続ける限り、ここに幽閉するおつもりです」


「そんな……」


やはり、本物の地獄だった。


ほとんど面識がないお父様……そんな風に思っているなんて……


「つまり、この状況を変えるためには、一家の暗殺もしくは国外逃亡です。
しかし、一家を暗殺して自由になったところで、エリーゼ様の望む未来にはならないでしょう。
そんな大罪を犯してこの国で生きていくことは、更なる地獄でしかない。
そうなれば、国外逃亡が最良かと」


暗殺だなんて、もちろん出来ない。


「まぁ確かに、そういうことなら……」


国外逃亡しかなさそう。


「もし、国外逃亡に抵抗がなければ、決行は早ければ早いほど成功率が上がるでしょう。
というのも、クリストフ医師に私とレイアの呪いが解けたことが伝わっているからです」


「え?
どういうこと?」


「その……申し上げづらいのですが、クリストフ医師は奥様の愛人です。
医師は奥様に私たちの呪いが解けていることを報告するでしょうから、当然警戒されてしまいます。
再び、私とレイアに呪いを掛けられる可能性は高いです」


「クリス先生がお母様の愛人?
もう、頭ごちゃごちゃになってきた」


「申し訳ありませんが事実です。
一旦、飲み込んでください」


この家どうかしてるかも……本当に逃げないといけない。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】お兄様の恋路を本気で応援するつもりだったんです。。

かがみもち
恋愛
題名変えました。 ※BLを醸しますがBLではありません。が、苦手な方はお気をつけください。。。🙇‍♀️💦💦  リーゼ・ロッテ伯爵令嬢は、ある日見てしまった。  自身の兄であるアッシュ・ロッテと、その友人レオ・カーネル伯爵令息の秘め事ーーキスの現場をーー。  戸惑い以上に胸がドキドキして落ち着かない謎の感情に支配されながらも、2人の関係を密かに楽しむ。もとい応援していたリーゼ。  しかして事態は次第にリーゼの目論見とは全く違う方向へ動き出して行きーー? ホットランキング最高38位くらい!!😭✨✨ 一時恋愛の人気完結11位にいた……っ!!😱✨✨ うん、なんかどっかで徳積んだかも知れない。。。笑 読んで下さりほんっとにありがとうございます!!🙇‍♀️💦💦 お気に入りもいいねもエールも本当にありがとうございます!!  読んで下さりありがとうございます!!  明るめギャグ風味を目指して好き放題書いてます。。。が、どうかはわかりません。。。滝汗  基本アホの子です。生温かく見て頂けると幸いです。  もし宜しければご感想など頂けると泣いて喜び次回に活かしたいと思っています……っ!!  誤字報告などもして下さり恐縮です!!  読んで下さりありがとうございました!! お次はドシリアスの愛憎短編のご予定です。。。 落差がエグい……😅滝汗

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

処理中です...