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48 形代
しおりを挟む「今夜も、少し昔話をしましょうか」
こういう時、フレディは饒舌になる。
私の気を紛らわしてくれる配慮が素直に嬉しいし、聞いていて楽しい。
「ええ、お願いします」
「そうですね……私は学生の時、実のところ騎士団を目指しておりました。
ですが、なかなか成績が足りなくて」
「そうだったんですか?
意外……なんとなくフレディは万能なイメージがありますけど……」
物知りに感じるのは、私が学校に行ったことがないからかもしれないけど。
「いえ、全然でしたよ。
その頃の私は勉学も平凡、戦闘力も平凡もしくはちょっと低いくらいで、なんとなく友人と遊んで過ごしている、至って普通のどこにでもいる学生でした」
「そんな頃もあったんですね」
「ええ。
学生らしく、とても充実はしていましたよ」
「そうなんですね、楽しそう」
フレディは懐かしそうに目を細めて微笑む。
「その頃は友人とイタズラで王立図書館の禁書庫に入って怒られたり、度胸試しで王宮に潜り込んだりと……」
そんな頃のフレディを想像して、笑ってしまう。
「ふふっ、想像できないっ」
手のひらのグラスを傾ければ、いつの間にか中身は空になっていた。
「お下げしますね」
ごく当たり前の動作で私からグラスを受け取り、ハイテーブルに置いてきてくれる。
……これも、あの薄い紙切れがやっているのかしら。
どう見たって、人間の動作のそれだけど。
不思議には思うけれど、別に私の見ている世界に違和感はない。
「さて、横になりましょうか」
「は……はい」
ベッドに座る姿勢から布団の中に入って横になる。
肌にあたる布団が皮膚の上を滑ると、やんわりとした刺激を感じ始めてきた。
胸の鼓動がどんどん早くなって、身体がしっとりと汗ばみ始める。
フレディはそばに座ると、大きな手のひらを私に伸ばし髪を撫でた。
さらりと優しく触れる指。
その刺激に、ゾワっと身体中が粟立つ。
「っく!」
「効いてきたみたいですね」
薄く笑うと、その指で私の頬を撫でた。
何もかも、余裕のある大人。
気づけばどんどん好きになってる。
「それでは失礼します」
当たり前のように、パジャマ姿のフレディはベッドに入って来た。
その重みもベッドの軋む音も、幻には思えない。
身を固くして待っていると、フレディは私と向かい合うようにして寝そべり、私の肩をぎゅっと抱き寄せた。
「っ~~!!」
声にならない声を上げてしまう。
背中に回る手の感触も、頭や顔に触れるフレディの首元の皮膚の感じも、何もかもクラクラする。
何よりも、不思議とあったかい。
「昨夜、どうやって意識を飛ばしたのか、覚えていらっしゃいますか?」
どうか耳元で喋らないで欲しい、その低音を聞くたびに腰が砕けてしまう。
「わ、から…」
「エリーゼ様は可愛らしい方です。
昨夜、濡れたパジャマを着ていらっしゃったので、私が脱がせました。
もちろん、思春期のお嬢様に対して、男の私が着替えさせたことは本当に申し訳ないとは思っております」
「や、耳元やめ……」
「失礼しました。
それでは、再現してみましょうか?」
パッと体を離すと、フレディは器用にも片手で私のパジャマのボタンを一つずつ外していく。
「っ!」
その長い指でボタンを弾かれるたびに、体が弓形に反ってしまう。
恥ずかしすぎる!
ついにボタンは外されて、パジャマの前をはだけさせてしまった。
子供体型の下着姿が晒されていると思うと、恥ずかしさにどんどん顔が熱くなっていく。
「お綺麗ですよ、エリーゼ様」
「~っ!」
羞恥心から、目にはうっすら涙が浮かんできた。
こんな子供相手にもかかわらず、フレディは私を大人の女性みたいに扱ってくれていた。
「さて、今夜はどこまで耐えられるんでしょうね」
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