【R15】専属執事に階段から突き落とされたのですが、どうも様子が変です。【完結】

ヨウカン

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44 胸の奥の夢

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「えっと……」


言葉を濁していると、フレディは椅子を引き席に座るように促した。


そういえば、さっきからずっと立ちっぱなしだった。


「今すぐ答えを出す必要はありません、冷めてしまう前に紅茶をどうぞ」


そう勧められたので、素直に従うことにした。


判断がつかないのだから、少し落ち着いてゆっくり考えよう。


「そうですね、ありがとうございます」


昨夜のフレディとは別人みたい。


いや、昨夜だって紳士的だったけど、なんだかきちっとした執事服と一本に髪を結んだこの姿と、パジャマに長髪の姿とじゃあ全然違う感じがする。


昨夜のことが曖昧だけど、なんだかパジャマの上を脱がされて、抱きしめられたところで意識を飛ばしてしまった。


……本当に同じ人なのかな。


華やかな香りのするティーカップを傾けながら、ちらりとフレディを見る。


窓から柔らかく入る日差しに照らされて、その翡翠色の髪が輝いている、取り澄ました顔には薄い笑みを湛えていて、何もかもが余裕のある大人のそれだ。


すると、フレディはこちらの視線に気付いたのか、にこりと微笑みながら話しかけてくる。


「エリーゼ様、体調がよろしいとの事でしたので、今日からお勉強を始めませんか?」


お、お勉強……!


それは胸がときめく言葉。


知識なんて不要だと言われているようなこの物置小屋での生活を、彩り輝かせてくれるものだろう。


それに……


もし、魔力があって知識もあれば、本当に人生が変わるかもしれない。


私は胸の奥底に、外に出て暮らすという夢を持っていた。


外の世界で生きることができたら、どんなに良いだろうか。


自分の力で仕事をして、自分の家に帰って、自由に暮らすことが、どれほど良いものなのだろうか。


「は……はい、ぜひお願いします」


声がうわずり、少しだけ目が潤む。


フレディは優しく微笑んで頷いた。


「今のエリーゼ様に必要なことは、歴史と魔法の知識です」


「そうなんですね?」


「はい、歴史は非常に大切です。
このアイネリス家のことも関わってきますので、エリーゼ様は知るべき内容ですね。
そして、魔法はエリーゼ様が知らない内容だからこそ、理解しておくことが大切です。
たとえ魔力1か2で過ごすことになっても、魔法の仕組みを理解すれば活用も自衛もできる可能性があります」


「なるほど、分かりました」


「それでは早速、歴史から始めましょう。
隣の部屋から教材を持って参ります」


「ありがとうございます」


こうして、フレディ先生による授業が始まるのだった。


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