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28 恋の話
しおりを挟む午後になり、家の補修屋さんが次々とやってきた。
フレディが付き添いながら指示を出しているらしく、一階からトンチンカンと修繕の音が聞こえてくる。
忘れ去られたような古い離れが、着々と再生されていくのがわかる。
こんなにも私の環境をフレディが整えてくれる。
恐くて仕方がなかったあのフレディが……
「エリーゼ様、カモミールティーでございます」
自室ではレイアがハーブティーというものを入れてくれた。
「ありがとう」
すっとした爽やかな味わいに気分が落ち着いてくる。
「……美味しい」
温かさと香りに、少し緊張していた頬が緩んだ。
リラックスしているせいか、何気なく気になることをレイアに質問してしまう。
「ねぇ、レイア。
フレディって、どんな人なの?」
「どうでしょう、私もそこまで関わりがなかったので、良くわかりませんが……メイドの中では結構人気がありますね。
かっこいいとか優しいとか」
「そうなんだ……」
優しい……ね。
昔のフレディのあの悪態は、やっぱり私にだけついていたことが分かった。
……メイドからも人気あるんだ。
フレディは確かにかっこいい。
その翡翠色の長髪も、すらりとした体躯も、長細い指も。
「エリーゼ様は、執事フレディのことが気になるのですね」
レイアは楽しげに目を細めて私を見た。
「そ、そ、そんなこと!」
「いえ、隠さなくても分かります。
私から執事フレディのことを少し探ってみましょうか?
たとえば、今恋人はいるのか、とか……」
こ、恋人……!?
カアっと顔が熱くなっていく。
「そんな!べ、別に!」
気になるわけじゃないから、と言いたかったけれど、言葉が続かない。
フレディに恋人はいるのかな……いてもおかしくないよね。
「ふふ、可愛らしいですね。
後でこっそり聞いておきますよ。
エリーゼ様は磨けばどんどん輝く素質があります。
ですから、これからは美容と健康と気品を身につけていきましょうね。
そうしたら、フレディはきっとエリーゼ様の虜になってしまいますよ」
「や、そんな……」
レイアは恥ずかしげもなくつらつらと私を焚き付けるようなことを言う。
そんな女子トークをひとしきりしたところで、この部屋の家具の交換の時間になった。
ーーコンコン
「はい」
「失礼致します。
エリーゼ様のお部屋の家具を交換いたしますので、一階のダイニングでお寛ぎください」
「わ、わかりました」
フレディの顔をなんとなく見られなくて、適当に返事を返す。
「レイア、お連れして」
「はい」
その後私とレイアは一階に降りて、キッチンダイニングスペースで、レイアの過去の恋愛話で盛り上がった。
レイアは私に、過去の恋愛のときめきを惜しげもなく話してくれて、その話し方が上手いせいか小説よりも遥かに面白い。
女の子との会話がこんなに楽しいものだったなんて、初めて知った。
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