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27 吐息
しおりを挟む「エリーゼ様、まず姿勢からいきましょう。
肩を下ろして、首を伸ばしてください。
少し胸を張って、顎を引いて、ああ、歯を食いしばらないでくださいね」
レイアの指示に従いながら、椅子に座る姿勢を作るけれど、もうすでに汗をかいてプルプルと小刻みに身体が震えている。
「そうですね、姿勢はダンスのレッスンで直していきましょう。
それでは、テーブルの上のナプキンを取ってください。
輪が手前に来るように二つに折って、お膝の上に。
エリーゼ様、手を使う動作はなるべく指先まで美しく、いえ肘はそんなに張らないでください」
「は、はい!」
動きがギクシャクしてしまい、汗ばかりが出る。
体の動きを制御するのって、こんなに難しいことなの?
「さぁ、次は……」
そんなこんなで、私が朝食を食べ終える頃にはもうお昼になっていた。
「エリーゼ様、良く頑張りましたね。
休憩にしましょう。
レイアもご苦労だった、休んでくれ」
フレディがそう告げると、レイアは満面の笑みで頷く。
「エリーゼ様は頑張り屋さんなので、必ず習得できますよ。
それでは明日も頑張りましょう、失礼致します」
「ありがとうレイア」
レイアが退出すると、一気に体の力が抜けた。
「うっ」
鈍い痛みに顔が歪む、背中がもう筋肉痛だ。
「エリーゼ様、肩をお揉み致します」
「だいじょ…あっ!」
私が返事をする前に、大きな手が私の肩を包んで揉んでいた。
「す、すごっ……気持ちいい」
フレディのマッサージは的確だった。
まるで私の背中の固くなっているところが分かるような感じで、どこを揉まれても効く感じがある。
「筋肉の勉強をしたことがあります。
おかげでどこが凝りやすいか、どこをほぐすと血流が良くなるかが分かるんです」
手のひら全体を使って、余す所なく背中が揉みほぐされていった。
力加減もちょうど良くて、かなり上手い。
血行が良くなり、少しずつ背中が軽くなっていくのが分かった。
ふぁーっとしていたその時。
「んっ!!」
固くなっていた筋肉の真ん中にフレディの親指がずっぷりと入って、全身に鳥肌が立つ。
その強い刺激は手のひらや足の裏まで響き渡った。
「ふぁっ……」
感じたことのない刺激に、弓なりに反ってしまう。
なんなの、この刺激……
恍惚としていると、耳元でフレディが囁いた。
「エリーゼ様は……感じやすい体質ですね」
生温い吐息が耳に掛かり、その低音が鼓膜を揺らす。
ーーゾクッ
条件反射の様に、訳も分からず腰が浮いた。
「っ!!」
顔が熱いまま右耳を押さえて振り返ると、フレディが悪戯な笑みを浮かべている。
「ふ、フレディ、からかわないで下さい!」
声がひっくり返ってしまった。
「申し訳ありません、エリーゼ様の反応があまりにも可愛らしかったので」
「~~!!」
恥ずかしさが加速して、声にならない声が出る。
顔の赤さはなかなか引いてくれなかった。
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