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23 秘密

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そんな様子のラウラの手を引き、休憩室に連れ出した。


パタンとドアを閉めると、彼女を椅子に座らせてその傍らに座る。


「あなた、エリーゼ様について知っていることがあるのね?」


そう聞くと、ラウラは真っ直ぐに私を見て首を縦に振った。


「は……はい、私の母は昔、アイネリス家にメイドとして勤めていました。
そこに私も少しの間だけ、そこで暮らしていたんです。
その時にエリ……っっ!!ぐふっ!!」


急にラウラが喉を押さえて咳き込んだ。


「どうしたの?大丈夫?」


そう聞くけれど、ラウラは喉を押さえたまま首を横に振る。


「ま……まさか」


嫌な汗が流れていくのが分かった。


「ラウラ、あなた……呪魔法を受けているのね。
いいわ、返事はしないで」


肩を震わせるラウラの呼吸は荒い、かなり苦しそうだ。


「回復魔法を掛けるわね」


ラウラに向けて、回復を掛ける。


すると少しずつだがラウラの呼吸が整い、顔色が良くなってきた。


「あ……りがとう、ございます」


「変なことを聞いてしまって、悪かったわ。
もうこの件について、これ以上は探らないことにします。
私もあなたも危険だと思うの。
あなたも何か思うことがあるかもしれないけれど、胸にしまって置いて」


この店と従業員が一番大事だ、危ない話には首を突っ込みたくはない。


「……わかりました、目の前のお仕事に集中します」


「あなたは針子の才能があるわ、うちには欠かせない存在よ。
さぁ、少し休んだらお仕事に戻ってちょうだい」


そう言って、部屋を後にした。












事務室に入ると、ジーモンが書類を作っていた。


「スーザン、ラウラから何を聞いたんだ?」


「ええ、それが……」


事の顛末を話すと、ジーモンは眉間の皺を深めた。


「そうか……なるほどな。
ラウラが口外できないってことは、あの家にとってあの子は極秘事項という訳だ。
それなのに、我々は何の制約もなく会えた。
……とんでもなく、恐ろしいことだ」


ジーモンの頭の回転は速い。


かなりのやり手で商売上手、そんな所に惹かれて私は結婚した。


「確かに……そうね。
何かおかしいわ……」


ジーモンの言う通り、違和感はすごくある。


ラウラに呪魔法が掛けられていた以上、エリーゼ様に会った私達だって呪魔法を掛けられそうなものなのに、特段何もされなかった。


私達は、エリーゼ様がアイネリス家から虐待を受けているという重大な秘密を知ってしまったというのに……だ。


「野放しにされているということは、利害関係上、我々がこの秘密を誰にも喋れない事を見越しているからなのか……まぁ、そんなところだろうな」


彼は結論が出たらしく、椅子にふんぞり返って上を向き、瞼の上に腕を置いた。


ジーモンは隠しているつもりかもしれないが、これは緊張しているときのポーズだ。


「スーザン、この仕事は穏便になるべく早く終わらせよう。
針子達のスケジュールを調整してくれ、ボーナスは出す」


彼の指示はいつも的確だ。


だからこそ、この店は開店から僅か20年で王宮にも出入りできるくらいの店にまでなった。


「わかったわ。
細心の注意を払いましょう。
この店は我が子だもの、絶対に守るわ」


子供ができない夫婦だったけれど、この店と従業員達が子供のようなものだったから。


ジーモンはあの緊張のポーズのまま「ああ」と呟いた。








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