【R15】専属執事に階段から突き落とされたのですが、どうも様子が変です。【完結】

ヨウカン

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19 化粧

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ランチの用意のためフレディは部屋を退出すると、レイアは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせてこちらを見る。


「さぁ、エリーゼ様、お着替えをしましょう!」


侍女としての初仕事だからか、はたまた私をすごく着替えさせたかったからなのか、目が燃えているように気合が入っている。


「よ、よろしくお願いします!」


まずはこちらを……と言いながら、レイアは旅行鞄のような大きさの鞄から、一着のワンピースを取り出した。


か……可愛い!


「こちらは新品ではないのですが、バスローブのままでお過ごしになられるわけにもいきませんので、急場凌ぎですがお召しください」


薄ピンク色のワンピースは裾に色とりどりのお花の刺繍がしてあって、すごく可愛い。


「こんな素敵な服は、初めて着ます!」


ツヤツヤした光沢のある高級そうな生地にうっとりしてしまう。


「お気に召していただき、ありがとうございます。
エリーゼ様はこのような淡い色合いがお似合いになりますよ」


レイアの見立ては完璧で、このくすんだ灰色の髪とこの暗い青の瞳は重い印象になるらしく、淡い色の明るい色を着ると柔らかくて可愛らしくなるらしい。


ドキドキしながらレイアに着せてもらうと、本当に陰鬱な印象が和らぎ、不思議と本物のお嬢様みたいになってきた。


「レイア、ありがとうございます。
こんなに嬉しいことはないです」


「ふふふ、エリーゼ様、次はアクセサリーですよ」


ニヤニヤしながら、レイアは旅行鞄の中から可愛らしい箱を取り出す。


「こちらでいかがでしょうか?」


レイアが箱を開けると、白くて大きな球にキラキラの石がついたものが2つ並んでいる。


「すごい、何ですかこれ?」


「こちらはイヤリングと言いまして、耳の装飾品です。
今回はパールに石をあしらってあります」


耳の装飾品!?パール?


全然意味はわからないけれど、キラキラの可愛い装飾をつけてもらえるらしい。


「ありがとうございます!
嬉しいです」


装着はあっという間で、頭を振るとその装飾が揺れるのが楽しかった。


「思ったとおり、とてもお似合いになります。
あと……シューズはこちらをお履きください」


レイアが鞄から取り出したのは、またしても可愛らしいルームシューズだ。


薄いグレーに、白いリボンが装飾されてある。


「す、素敵すぎて、倒れそうです」


履かせてもらうと、かつてないほどの可愛いシューズは足にぴったりと馴染んだ。


「サイズもぴったりですね、こちらは新品のものですのでご安心ください。
それと、これは廃棄致しますね」


レイアはゴミ袋を取り出すと、今まで履いていたボロボロのシューズとクローゼットに掛かっていた黄ばんだ白のワンピースや毛玉だらけのパジャマを捨てていく。


それを見て、何だか胸がスッキリしてきた。


自分が生まれ変わっていくのが分かる。


「午後にはサンダース商会との打ち合わせですね。
顔色のカバーのために、少しだけお化粧をしましょう」


「お、お、お化粧!」


「お嫌ですか?」


「い、いえ、初めてなので、すごく……嬉しいです」


感極まって、最後の方は小声になってしまった。


お化粧……すごく憧れていたけれど、私には遠い世界のものだった。


人前に出ることのない人生だったので、こんなに飾ってもらえるのが嬉しくて仕方がない。


「ふふ、それは良かったです。
リラックスしていてくださいね」


「は、はい!」


レイアは私の首の周りにタオルをかけると、手際のいい筆捌きでお化粧を施していく。


筆に顔を撫でられる感じは心地よくて、うたた寝してしまいそうになった。


「はい、できました!」


「ふぁ、はい、ありがとうございます!」


半分寝かけていたところに鏡を渡されて見ると、朝とはまるで別人の私がいた。


「す……すごい!これが私なの!?」


朝からずっと変貌を遂げているけれど、これが一番衝撃的だった。


かつてないほどに血色が良く、顔色が明るい。


そして、流れるようなシャープな眉と印象的な程にぱっちりとした目。


あんなに嫌いだった暗い青の瞳が、宝石のように輝いて見える。


少し頬はこけているけれど、耳にキラキラのパールがついて、顔色の良いオシャレなショートカットのお嬢様がそこにいた。


「エリーゼ様は元が良いですから、お化粧も楽です」


「いえ、これはレイアの力量が素晴らしいです。
本当に……生きてて良かったです」


「ふふ、そんな風に言われたのは初めてです。
エリーゼ様は褒め上手ですね」


レイアが吹き出すように笑うので、つられて笑ってしまう。


レイアは初めて私に優しくしてくれた女の子だということに気付き、心の中に嬉しさと温かさが広がっていった。





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