【R15】専属執事に階段から突き落とされたのですが、どうも様子が変です。【完結】

ヨウカン

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8 朝の申し送り

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いや、昨日からずっとおかしいとは思っていた。


でも、昨日の自分の状態が極限過ぎて、フレディのおかしさを正しく理解できていなかった。


性格が変わった……なんてレベルじゃない。


まるで別人が成り代わっているような、それくらいの激変だった。


それにしても、なんと答えればいいのか分からず、口がぱくぱくしてしまう。


恥ずかしい、からかわれてる、いろんな言葉が浮かんでは消えて、何も言えない。


ただ朝日に当たっているその薄緑色の髪が透き通っていて、言葉を飲み込んでしまうほどに美しく見えた。


「さてエリーゼ様、今日のご予定をお伝え致します」


執事服に身を包んだ長身のフレディは、綺麗に背筋を伸ばして朗々と話す。


「え……予定?」


もちろん、こんな申し送りなんて初めてだ。


そもそも、ただこの離れに幽閉されている魔力無しの私に、予定も何もない。


「午前中は髪を切りましょう。
朝食の後、ティータイムが終わった後に来るように屋敷の担当の者に言いつけております」


「えっ?ティータイムがあるんですか?
それに、髪を…………切ってもらえるんですか?」


「はい、さようでございます」


腰まで伸びている箒のようなゴワゴワで縮れた灰色の髪。


今まではなんとなく邪魔になったら自分で切っていた。


当然だが、今まで髪を切ってもらったことなんて一度も無い。


「そして、午後は外商を呼んでおりますので、お召し物をお選びください」


「え………………?
がいしょう?
どういう意味ですか?」


「顧客のもとに出向いて物品を販売してくれる業者のことです。今エリーゼ様が使っている衣服はとても傷んでおりますので、この度、衣服や小物をすべて新調致します。服飾の業者にいくつか持って来させますので、その中からお選びください」


衣服や小物を新調!?


その言葉に胸のときめきを覚えた。


新しい服を買ってもらえるってこと……!?


私の服の状態はかなり酷い。


今までは本邸で使わなくなった服を回してもらっていた。


いつも着ている白い綿のワンピースは所々破けていたり、黄ばんでいたり、毛玉ができていたりする。


まだ着れるけれど、フレディの着ている執事服と比べると、雑巾を着ているようにしか見えない。


それが、服を買ってもらえるなんて!


新しい服……嬉しい!


どうしよう、すごく楽しみ。


「あ……あの、ありがとうございます、フレディ。
とても……楽しみ、です」


なんと言ったら良いか分からず、辿々しくなってしまう。


すると急にフレディは床に膝をつき項垂れる。


「エリーゼ様……」


「え?」


どうしたのだろうか、やはり私を騙して笑っているのだろうか?


フレディは片手を床について蹲っていると思えば、すくっと立ち上がり居住まいを正した。


「どうかしたんですか?」


「いえ……失礼致しました。
もう大丈夫です。
朝食をお持ち致します」


「は、はい……」


……よく分からない。


まぁ、昨日からずっと変なわけだから、どこかおかしくても何ら不思議ではない。


本当にちゃんと髪を切ってくれたり、服を買ってくれるのなら、ありがたいと思った。











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