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26 強くなりたい
しおりを挟む「おはようございます、エリーゼ様」
赤い髪を高い位置で一つに結び、大きなバスケットを持ったレイアが現れた。
「おはようございます、レイア」
すると、レイアはハイテーブルの上にバスケットを置いて、私に向き直る。
「エリーゼ様、私に敬語は要りませんよ。
それでは、朝の身支度を致しましょうか」
にっこり笑うレイアはとても可愛い。
レイアはテキパキと私をパジャマから水色のワンピースに着替えさせ、髪にいい匂いのオイルを塗って寝癖を直してくれる。
それから、肌にも何かつけてくれて、薄化粧もしてくれた。
「す……すごい!」
大嫌いだった薄いグレーの髪がつるんと綺麗に輝き、くすんだ肌の色も血色の良い肌になり、あれだけ生気の無かった目にもサファイアのような輝きが差している、上品な水色のワンピース姿の女の子がそこにいた。
「エリーゼ様は、元々のお顔立ちがお綺麗な方ですので、このくらいは当然ですね。
あとはもう少しふっくらとして、程よい筋肉がつけば理想的です。
髪もこれだけ短く切ってしまいましたが、今後はお手入れしながら綺麗に伸ばしていきましょうね」
「ありがとうレイア。
私、こんなに綺麗にしてもらって、すごく嬉しいです。
これから、いろんなことができるようになりたい」
勇気をくれるレイアのためにも、残念な人間になりたくない。
テーブルマナーを習得したい!
「それは良かったです。
あと、本当に敬語は無しで大丈夫ですよ」
「ああ、そうだった」
なかなか敬語が抜けないけれど、もっと親しくなりたいので、敬語を抜いて喋ろうと思った。
「さて、朝食に致しましょう。
フレディを呼んでまいります」
「う、うん……」
フレディの名前が出ると、少し体がビクッと反応してしまう。
これがなんの緊張なのか、はっきり分からない。
不安なのか、猜疑心なのか、はたまた信用したい気持ちなのか。
ーーコンコン
「エリーゼ様、失礼致します」
銀のトレーを持って、フレディが現れた。
昨日よりもトレーや食器、カトラリーのグレードが上がっている気がする。
そして、豪華な朝食。
ハイテーブルの上に配膳されると、とても良い香りが鼻腔をくすぐる。
「美味しそう!」
底辺の生活から、最高級の生活に変わった。
執事も侍女もいて、美味しいご飯が出てきて、綺麗な洋服を着れて……そんな人生って幸せだよね。
だからこそ、私を磨きたい。
何もせずに死ぬのを待つだけの、虚しい人間でいるのはやめたから。
生きていることに意味なんて無くても、望まれて生まれて来なかったとしても、それでも自分自身に誇りと希望を持って、楽しく生きていきたいから。
色々なことをできるようになりたい。
「頑張ろう……」
自然とそんな言葉が溢れた。
フレディはそんな私を見て、眼を細める。
「エリーゼ様、では早速テーブルマナー講座を始めましょう!」
「うん、え!?
もう始まるの?」
レイアの目がキラリと輝いた。
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