【R15】専属執事に階段から突き落とされたのですが、どうも様子が変です。【完結】

ヨウカン

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16 エステ

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レイアに怪しい素振りは無かったけれど、フレディと連携できていなくて、身動きが取れなかっただけかもしれない。


であれば、もう少しこちらから隙を見せた方が良いだろう。


「私……綺麗にしてもらえるのが楽しいです。
他にレイアに頼める美容はありますか?」


「そうですね、エステはいかがでしょう?」


「エステ?
何ですかそれは?」


「エステとは、身体のお手入れのことです。
皮膚を美しくしたり、体型を整えたりすることができます」


「ぜひお願いしたいです」


「かしこまりました。
施術は浴室で行います」


「なっ、それでは見張りが……」


事の成り行きを聞いていたフレディが、慌てて制止しようとした。


「フレディ、レイアの……えっと、なんでしたっけ?あ…悪魔とか呪いみたいなものは解けたんです。
だから、見張りは必要ありません」


「では、扉の前で待機致します。
何かあればお声がけください」


よし!


思惑通りに事が進み、心の中で踊っていた。


浴室でレイアと2人きりになれば、殺される可能性はかなり上がる。


私は妙な高揚感で浴室に入った。


そこからの流れはこうだ。


レイアは本邸から最高級の洗髪セットとボディーソープを持ってきて、髪と体をピカピカに洗ってくれた。


そして、何か泥のようなもので全身をパックされ、さらにピカピカに洗われて、オイルを塗り込まれた。


そして、真新しいバスローブに身を包まれ、髪を風魔法で乾かしてもらい終了した。


「エリーゼ様、いかがでしょうか?」


「これが……私?」


脱衣所の椅子に座りながら鏡を見せてもらうと、顔の肌のトーンが上がった私がいた。


もう瞼もブヨブヨではないし、肌もいくらかマシになっている。


先ほどとは違いちょっと不健康そうな顔のツヤツヤしたおしゃれなショートカットの自分がそこにいた。


「これは、すごいわ!」


全く違う狙いで頼んだ事だったのに、なぜか大満足だった。


「お気に召していただき、ありがとうございます」


晴れやかな顔のレイアは、つり目がちな目を優しげに細める。


「レイア、あなたは天才ですね。
バケモノだった私を、ここまで治してくれた」


フレディのレイアのことを「優秀なメイド」と言っていたのは、それは本当のことだった。


朝の醜悪な姿からは想像できないほど、奇跡のような変貌を遂げた。


「エリーゼ様……申し訳ありません。
その暴言につきましては撤回させていただきます。
エリーゼ様はそのようなものではございません。
ですが、お手入れが必要だったのは間違いありませんでした。
こうして、エリーゼ様の美容に携われて本当に良かったと思っております。
また、エリーゼ様に危害を加えようとしたにも関わらず、私を信じてくださった……そのお心の大きさに感服致しました。
お手入れは毎日必要ですので、今後も参らせていただきたいと思っております。
よろしくお願い致します」


レイアはとても美しい礼を取った。


すごい……できた人だ。


こんな風に扱われたことが無かったので、驚き固まってしまった。


「美容って……すごいですね。
見た目が良くなるのが、こんなに楽しいことだったなんて……初めて知りました」


美容というものに初めて触れた嬉しさが、じんわり心の中に広がっていく。


レイアの手つきはとても丁寧だったし、安心できた。


なんなら、やすらぎすら覚えるくらいだった。


……同じ手が私の首を刺そうとしたなんて、思えないくらいに。


「そんなふうに喜んでもらったことは、初めてです。
明日も参りますね」


「本当に?いいんですか?」


「もちろんです、エリーゼ様」


嬉しくて、レイアをキラキラした目で見てしまった。


明日が来て欲しいと思うことは、初めてだった。


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