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4 しとしとの雨
しおりを挟む酷く疲れていた。
折れた鎖骨と脛骨は痛むけれど、些末なことだった。
いろんなことが限界を迎えていた。
私の人生の今も過去も未来も、真っ暗だ。
こんな孤独な悲しい人生は、もうやめる。
……これで、何もかも終わり。
すっかり暗くなった外は、しとしとと雨音がする。
その音だけを聴いていた。
すると人の気配が近づき、扉を叩く音がする。
「エリーゼ様、夕食をお持ちしました」
しとしとと、雨の音。
屋根に当たって跳ねる水音。
「エリーゼ様?入ってもよろしいですか?」
庭の植物の葉に当たって跳ねる雨音。
生命の循環の始まりから終わりの音。
「エリーゼ様?失礼致します」
ドアが開いた気配があった。
「え……………………」
ヒュッと息を飲む音が聞こえる。
ゆらゆらと揺れるつま先。
「なんてことを!!」
そんな忌々しい声を聴いて、溜飲が下がる。
「エリーゼ様!今下ろします!」
もう、何も見えない。
ただ音が聴こえるだけ。
梁に引っ掛けたロープが切られて、落ちていく。
「エリーゼ様、目を、開けてください!」
もう、戻る気はない。
全てを手放して、私は召される。
「エリーゼ様、ああ……そんな、エリーゼ様……」
これで終わり。
しかし、最後の一言だけ、聞こえてしまった。
「エリーゼ様、私が必ずお助けします。
……私の人生を貴女に捧げます」
……え……今、フレディは…………
……なんて、言ったの?
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