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7 朝日
しおりを挟む翌朝、雨は上がり、澄み切った青空に美しい太陽が登った。
う、眩しい……
私の部屋の薄汚れたカーテンは所々破れており、まばらに朝の日差しが差し込んで来たので、目が覚めた。
昨日、泣き腫らした目が重たくて、視界がまだ濡れている感じがする。
きっと、今、とんでもなくみっともない顔になっているのだろう。
重い瞼や目の横の目やにが気になり、鏡を探すけれど、はたと気づいて手が止まった。
鏡はもう捨てられたんだった。
そうだ……あれは少し前のこと。
「自分の見た目がブッサイクな珍獣だって知ってて鏡見てるのか?
ハハっ、こんなもん、お前には要らないよな?」
ーーバリン!!
鏡を机の上に出していたら、フレディに嘲笑われて、鏡を割られた。
そうだよね、私なんて珍獣……だよね。
箒のようなボサボサの頭、みすぼらしい身体、ボロボロの服。
あれから鏡を見ていない。
でも、基本的にこの離れで1人きりなんだから、誰に見られるわけでもないし……もし、フレディが朝食を持ってくるにしても、まだまだ時間があるはず。
そう思っていると、ゆっくりした足音が近づき、部屋がノックされた。
ーーコンコン
「え……?
は、はい」
予想外の来訪に慌ててしまう。
「エリーゼ様、お飲み物をお持ちしました」
「え……?」
……飲み物?
フレディがそんな用事で私の部屋を訪れたことなんて、一度もない。
「おはようございます、エリーゼ様」
きっちりと執事服に身を包んだフレディが、何か飲み物を乗せたトレーを運んできた。
こんなことはもちろん初めてだ。
「こちら、白湯でございます。
お飲みになられますか?」
フレディはキラキラと爽やかに微笑んでいる。
どんな思惑があるのかは全くわからないけれど、ここは従っておいた方が良さそうだ。
「え……は、はい。
ありがとう、ございます……」
優しく私の手を取って、もう片方の手を背中に当てて、ゆっくり起こされる。
まるで、本物のお嬢様を起こすみたいだった。
「こちらをどうぞ」
いかにも私に不釣り合いな可愛らしい花柄の華奢なカップを恐々と受け取り、高級そうなそれに緊張感が走る。
……なんだろう、この状況。
それにしても、こんな寝起きの姿を見られるなんて……
今の私は絡まったボサボサの髪に、腫れた重い瞼でとても酷い顔をしていると思う。
そのことが堪らなく恥ずかしいし、嫌だった。
また馬鹿にされるかもしれない……
なるべく顔を見られたくなくて、俯きながら白湯を飲む。
きっとフレディには丸まった芋虫にしか見えていないだろう。
あ…………おいしい。
羞恥心の中でも、初めて渡された白湯というものは結構いいものだった。
身体が温まって、なんだかほっとしてくる。
すると、斜め上から視線が注がれていたことに気づいた。
少しだけ見上げるとフレディとバッチリ目が合い、フレディはその目を少し細める。
「なっ……何ですか?」
きっと、馬鹿にされると思って身構えた。
「不躾にもじっと見てしまい、失礼致しました。
こうしてエリーゼ様のお世話ができる日を、ずっと夢見ておりました。
それが、ようやく叶ったと思いまして」
「はっ……?」
フレディが、圧倒的におかしい。
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