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9 朝食

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朝の申し送りの後、身支度をするために古く建て付けの悪いクローゼットをギィィと開ける。


クローゼットの中の服は2着だけ。


私は毛玉だらけの古いパジャマを脱ぐと、いつもの黄ばんだ白い綿のワンピースに着替える。


……新しい服、楽しみだなぁ。


心の中でスキップしてしまう。


手櫛で髪を解かしてみるけれど、毛先の方はほとんど縮れて固まっているので、そこはもう諦めた。


よし、これで身支度は終了だ。


すると、部屋のドアがノックされて、朝食のトレーを持ったフレディが入ってきた。


「失礼致します。
朝食をお持ちしました」


颯爽と現れるフレディはこの物置小屋のような離れの雰囲気の中では眩しすぎて、浮いて見えた。


いい匂いのするトレーをハイテーブルに置くとこちらに振り返る。


フレディを見過ぎていたからかと羞恥に下を向くけれど、その足音は確実に私の方に歩いてきていた。


当然のような顔をして私に手を伸ばし、抱え上げようとする。


「も、もう歩けますから、大丈夫です」


それを慌てて静止すると、フレディは抱えようとした手をエスコートの手に変えて、私をハイテーブルの椅子に座らせた。


部屋内のたった数歩の移動なのに、わざわざエスコートしてくれるなんて……


……あの意地悪なフレディが、どうして……


トレーには素晴らしい朝食が乗っていた。


温かいスープといい香りのパン、またお洒落なサラダ、よくわからない卵料理……それになんだか食器まで綺麗。


今までのパンとスープから比べると、どう考えたって豪華だ。


「美味しそう……」


「どうぞ、召し上がってください」


フレディにすすめられて、自然とフォークが進んだ。


ぱくっ


……美味しい!!


その美味しさに、衝撃を受けた。


サラダのドレッシングの味がなんともオシャレな味、何が入っているかなんて見当もつかないけれど、とてもいい香り。


こんなに素晴らしい朝食をいただけるなんて、夢みたいだ。


このクリームポタージュも、このパンも。


フォークは進み、美味しくてあっという間に完食してしまった。


「ご……ごちそうさまです」


怒涛の勢いで食べてしまったのが恥ずかしくて、語尾が小さくなる。


しかし、フレディは満足げだった。


「完食していただけて、安心致しました。
エリーゼ様はあまりにも細すぎるので、まずはたくさん食べて栄養を摂ることが、今の一番のお仕事でございます」


そんなフレディを、穴が開くほど見つめてしまう。


「・・・」


いや……おかしすぎる。



その反応は、おかしすぎる。


今までのフレディだったら「チッ……きったねえな。豚の方がもっとマシだろ」くらい言いそうなのに。


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