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依頼『虚構』
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次の日、私は朝早く家を出た。目的地となる小学校へ行くためだ。
家からの距離はそんなに離れておらず、大人の足で歩いて15分といった所だろうか。
「これが、吹見小学校…」
依頼主に指定されてたどり着いた、吹見(ふきみ)小学校。廃校になってどれくらい経ったのか分からないが、そんなに荒れているような気がしない。
なんなら、今使われていてもおかしくないくらい綺麗だ。
「こんな何もなさそうな所を肝試ししろって事?」
もっと老朽化した建物を想像していただけに、肩透かしを食らったような気分だった。
校庭から黄色い歓声が聞こえたので、様子を伺ってみると、子供たちが何人も遊んでいるのが見えた。
依頼主から、敷地内へ立ち入る許可は取ってあるとは聞いていたが、どうやら地域の子供たちでも自由に出入り出来るよう場所のようだ。
私は昇降口へ回り、校舎内へ足を踏み入れてみる事にした。
「あー、懐かしい」
どこの小学校も似た作りなのだろうか、軽い既視感から自然と懐かしいという言葉が出た。
昇降口は大きな出入口と、沢山の窓から外光が差し込みかなり明るい雰囲気で、天井も高く開放的な作りになっている。
校舎の中にも子供がいるのか、まるで休み時間のような賑わいがある。
ふと、疑問に思った。
…こんなに人が集まるものなのだろうか?
いくら自由に使えるように開放されているとはいえ、廃校がこんなにも活気に満ち溢れているなんて、不自然ではないだろうか?
一度依頼主に連絡を取ってみよう。この学校で合っているのかすら怪しくなってきた。
キーンコーンカーンコーン
「うわっ!びっくりした…」
ガラスが震えるくらいの音量で、チャイムが鳴り始めた。周囲の物は小さくカタカタと揺れている。
鼓膜が破れるかと思うくらいの爆音の中、電話が出来るはずもなく、チャイムが鳴り止むまで待ってからスマートフォンを操作して耳に当てた。
♪~
耳に当てたスマートフォンから聞こえる呼出音。
その他に、すぐ背後で別の音がなっている気がする。
さっきまで騒がしかった小学校全体も、全く音がしなくなっている。
それでも背後からは人の気配と、着信音が鳴り続けている。
恐らく依頼主が到着したのだろう。私が電話をかけて呼び出しているのだから、後ろにいるのは依頼主である事は間違いないはず。
では、何故電話に出てくれないのか?
何故声をかけてこないのか?
さっきまでの学校の雰囲気がガラッと変わってしまったのも相まって、後ろを確認するのがとても怖い気がしてきた。
振り返るしかないこの状況、首から少しずつ後ろを確認するように捻っていく。
私の動きに合わせて、着信音が徐々に近付くように大きくなっていく。
思い切って一気に背後を振り返ると、
ドンドンドン!
という扉をノックする音が聞こえて、耳元でなっているスマートフォンを無意識に手に取った。
「ちょっと、いつまで寝てるの?約束の時間は大丈夫なの?」
母親が部屋の扉越しに声をかけてきた。
「…平気」
冷房をつけ忘れて寝てしまった部屋は、蒸し風呂のような熱気がこもっていた。
窓を開けて換気をすると、部屋の熱い空気が流れて部屋が一瞬涼しくなった気がしたが、残暑の昼時の熱い風によって、結局部屋の暑さは何にも変わらない気がする。
それでもヒヤッとしたのは、着替えるのが億劫で着たまま寝てしまった普段着が、嫌な汗で濡れているからだろう。
今回の仕事の事と、母親から聞いた話、疲れが影響して変な夢を見てしまった。やけに鮮明に覚えている夢の最後、背後に立っていた人物もまた、昨日の出来事に影響されているのかもしれない。
なんとなくだけど、駅前で見たあの女の子だった気がする。
思い出しただけなのに、なんとなく寒気がする。まるで今もすぐ後ろにいて私を見ているような。
「…」
部屋の中から微かに布が擦れるような音が聞こえた。窓に向かって立つ私からは見えないが誰かがいる。
息遣いがすぐ近くに聞こえた。さっきの夢のように振り向けばあの女の子がいるのだろうか。それはつまりその子がこの世の者では無い事になるのだが、もうこれは現実世界の話。振り向いてしまえば私はどうなるのか。
ガチャ
「いつまでも何してるの…って、もう起きてるじゃない」
「あ、うん。お母さん、ありがとう」
部屋の扉を母親が開けるとその気配は消えた。内心助かったと安堵した。
「それにしても、冷房の設定温度どうなってるの?この部屋少し冷やしすぎよ?」
電気代だって馬鹿にならないんだからと、母親は小言を漏らして階下に向かった。無論冷房などつけていなかった。
家からの距離はそんなに離れておらず、大人の足で歩いて15分といった所だろうか。
「これが、吹見小学校…」
依頼主に指定されてたどり着いた、吹見(ふきみ)小学校。廃校になってどれくらい経ったのか分からないが、そんなに荒れているような気がしない。
なんなら、今使われていてもおかしくないくらい綺麗だ。
「こんな何もなさそうな所を肝試ししろって事?」
もっと老朽化した建物を想像していただけに、肩透かしを食らったような気分だった。
校庭から黄色い歓声が聞こえたので、様子を伺ってみると、子供たちが何人も遊んでいるのが見えた。
依頼主から、敷地内へ立ち入る許可は取ってあるとは聞いていたが、どうやら地域の子供たちでも自由に出入り出来るよう場所のようだ。
私は昇降口へ回り、校舎内へ足を踏み入れてみる事にした。
「あー、懐かしい」
どこの小学校も似た作りなのだろうか、軽い既視感から自然と懐かしいという言葉が出た。
昇降口は大きな出入口と、沢山の窓から外光が差し込みかなり明るい雰囲気で、天井も高く開放的な作りになっている。
校舎の中にも子供がいるのか、まるで休み時間のような賑わいがある。
ふと、疑問に思った。
…こんなに人が集まるものなのだろうか?
いくら自由に使えるように開放されているとはいえ、廃校がこんなにも活気に満ち溢れているなんて、不自然ではないだろうか?
一度依頼主に連絡を取ってみよう。この学校で合っているのかすら怪しくなってきた。
キーンコーンカーンコーン
「うわっ!びっくりした…」
ガラスが震えるくらいの音量で、チャイムが鳴り始めた。周囲の物は小さくカタカタと揺れている。
鼓膜が破れるかと思うくらいの爆音の中、電話が出来るはずもなく、チャイムが鳴り止むまで待ってからスマートフォンを操作して耳に当てた。
♪~
耳に当てたスマートフォンから聞こえる呼出音。
その他に、すぐ背後で別の音がなっている気がする。
さっきまで騒がしかった小学校全体も、全く音がしなくなっている。
それでも背後からは人の気配と、着信音が鳴り続けている。
恐らく依頼主が到着したのだろう。私が電話をかけて呼び出しているのだから、後ろにいるのは依頼主である事は間違いないはず。
では、何故電話に出てくれないのか?
何故声をかけてこないのか?
さっきまでの学校の雰囲気がガラッと変わってしまったのも相まって、後ろを確認するのがとても怖い気がしてきた。
振り返るしかないこの状況、首から少しずつ後ろを確認するように捻っていく。
私の動きに合わせて、着信音が徐々に近付くように大きくなっていく。
思い切って一気に背後を振り返ると、
ドンドンドン!
という扉をノックする音が聞こえて、耳元でなっているスマートフォンを無意識に手に取った。
「ちょっと、いつまで寝てるの?約束の時間は大丈夫なの?」
母親が部屋の扉越しに声をかけてきた。
「…平気」
冷房をつけ忘れて寝てしまった部屋は、蒸し風呂のような熱気がこもっていた。
窓を開けて換気をすると、部屋の熱い空気が流れて部屋が一瞬涼しくなった気がしたが、残暑の昼時の熱い風によって、結局部屋の暑さは何にも変わらない気がする。
それでもヒヤッとしたのは、着替えるのが億劫で着たまま寝てしまった普段着が、嫌な汗で濡れているからだろう。
今回の仕事の事と、母親から聞いた話、疲れが影響して変な夢を見てしまった。やけに鮮明に覚えている夢の最後、背後に立っていた人物もまた、昨日の出来事に影響されているのかもしれない。
なんとなくだけど、駅前で見たあの女の子だった気がする。
思い出しただけなのに、なんとなく寒気がする。まるで今もすぐ後ろにいて私を見ているような。
「…」
部屋の中から微かに布が擦れるような音が聞こえた。窓に向かって立つ私からは見えないが誰かがいる。
息遣いがすぐ近くに聞こえた。さっきの夢のように振り向けばあの女の子がいるのだろうか。それはつまりその子がこの世の者では無い事になるのだが、もうこれは現実世界の話。振り向いてしまえば私はどうなるのか。
ガチャ
「いつまでも何してるの…って、もう起きてるじゃない」
「あ、うん。お母さん、ありがとう」
部屋の扉を母親が開けるとその気配は消えた。内心助かったと安堵した。
「それにしても、冷房の設定温度どうなってるの?この部屋少し冷やしすぎよ?」
電気代だって馬鹿にならないんだからと、母親は小言を漏らして階下に向かった。無論冷房などつけていなかった。
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