Welcome to Another Earth

八神獅童

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第10章 第10話 ストリートに響く声

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『マイクテスト中ー、お前らー、聞こえてますかー?』

アナザーアースのストリートに、ナガレの声が響く。ユーザー達は不安そうな表情で、辺りを見回していた。

「スピーカーを乗っ取られてる…ハッキングされたのね」

「現運営は隙だらけだからね~」

鼎と桃香もアナザーアースに来て、ナガレに対して警戒をしていた。このタイミングでの襲撃は、エリア666の崩壊と無関係とは思えない。

『エリア666は滅んじゃったね。でも貴方達が666の人達と同じ様になるかは、これから決まる事だよ』

ナガレの声は恐怖を煽る様なものではなかったが、それが逆にユーザーの不安を駆り立てた。鼎達にとってはもう少し情報が欲しいところだが、他のユーザー達がパニックを起こさないかが心配だった。

『エリア666で起きたのはInversion…反転現象だよ』

(反転現象?…聞いた事ないな…)

鼎は不審に思っていたが、テロ組織が嘘だけを言っているとは思えない。横にいる桃香は、密かにデータを巴に送っていた。

『みんなは宇宙都市計画を覚えているかな』

「何年も前に、中止された計画だね」

桃香は既に図書館でテロ組織の出処について調べていた。彼女も図書館で情報を知るまでは、宇宙都市計画の存在を忘れていた。

『今は皆地上で暮らしてるってのはウソ!実際には宇宙都市に取り残された人達もいたんだよね』

ーー

「大急ぎで宇宙都市計画の記録をまとめるのです!」

エンシャント財団の本部では、秋亜が大急ぎで指示を出していた。各エリアの政府が、宇宙都市計画について隠している事があるかも知れないのだ。

(彼らの目的は、復讐…?)

ーー

『だから貴方達にも、この世界の不平等と不条理を知って欲しいって思ったんだ』

「それでエリア666の人達を殺したのね…」

ナガレによる放送はまだ続いていて、人々は不安を覚えていた。いつ自分達が被害を受けるか分からないからだ。

『巴、放送を中断させたり逆探知する事は出来ない?』

『今やってるけど…変なプログラムを解析するので精一杯』

巴は素早くキーボードを打って対抗していたが、中々打開出来ない。流石にテロ組織も長い期間準備していたらしい。

「いっそのことストリートに来てくれればいいんだけどね~」

「そうなったら大変な事に…」

鼎と巴は警戒していたが、ここで現れるメリットは無いはずだ。しかし直接攻撃を仕掛ける為にストリートを襲撃する可能性はある。

『でも私達に対抗できる人達もいるよね。エンシャント財団とか!』

ーー

「代表、連中は我々を名指ししました。どういたしましょう」

「…無視しましょう」

エンシャント財団にはテロ組織に屈するつもりなど無い。テロ組織がアナザーアースに出没してから叩き潰すつもりだ。

ーー

『あれ?私がどこから放送してるのか、まだ分からないのかな?』

ナガレは煽る様に発言しているが、巴は冷静に逆探知を行う。ブラックエリアを使って映像を流している訳でないのなら…

『鼎、ナガレ達はすぐ近くのオフィスブロックにいる』

「了解…」

鼎と桃香はすぐに行動を開始して、オフィスブロックへ向かった。敵に悟られない様に、警戒しながら動く必要がある。

ーー

「人がまばらだね…」

「ここで戦闘になれば建物が吹き飛ぶ事になる…」

鼎と桃香はオフィスブロックを慎重に進んでいた。テロ組織の構成員と遭遇すれば、狭い通路での戦闘は避けられない。

『鼎、気をつけて。角を曲がった所の区域にナガレがいる』

桃香はデバイスを拳銃型に変形させて、常に撃てる構えをとった。彼女の実力なら、どの角度から攻撃されても応戦できるだろう。

(大量の機材…やはりここから放送してると見て間違いない)

桃香が先行して、テロ組織の構成員の数を確認した。狭い区画に数人の人間がいて、機材を調整している。

(ナガレもいる。本人がここから放送していたのね…)

鼎と桃香は、構成員の中にナガレの姿がある事も確認した。桃香はナガレの頭部に向けて、静かに銃を構えた。

その直後、ナガレは桃香の方を少しも見ずに銃口を向けた。そして一切躊躇する事なく、素早く引金を引いた。

オフィスから凄まじい爆発音が響いた…
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感想 3

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みんなの感想(3件)

蒼月丸
2024.09.21 蒼月丸

良い作品なのでお気に入り登録しました!
お互い書籍化目指して頑張りましょう!

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田村ケンタッキー

アナザーアースの名称が気に入りました。
文体はシンプルながら読み応えがありました。

キャラクターは桃香が気に入りました。報酬を求めないと格好つけたらダッシュで逃げられそうになるシーンと、怯えた子供相手に自分の得意なFPSを勧めちゃうシーンは思わず笑いました。

主人公である鼎もハードボイルドで好きです。科学が高度に発達した近未来の世界でも人情が残っているのがタイプです。廃れた現実世界に戻っても観光スポットになるのではないかと思案するなど彼女のやさしさ人となりが見えてぐっときました。

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2023.03.30 ユーザー名の登録がありません

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