64 / 75
番外編2 第3話 争覇の予感
しおりを挟む
(最近はテロ組織が妙に大人しい…)
レイが巻き込まれたトラブルを解決したネネは、この日もアナザーアースを監視していた。特にテロリストの動向には、目を光らせていなければならない。
(直接ブラックエリアに赴くしかなさそうですね…)
ーー
ブラックエリアの奥深く、そこにはネネが用意した研究施設がある。ネネはそこから直接、ブラックエリア各所の映像にアクセスしていた。
(大規模な組織の殆どが活動していない…)
ネネはこの平穏は明らかな異常事態であると察していた。そしてこの平穏は、嵐の前の静けさでもあった。
ーー
(パスワードも変えておこう…)
ログアウトしたネネは、アカウントの設定をいくつか変えていた。他の悪意あるユーザーによるハッキングを防ぐ為だ。
(敦也にも…)
ーー
『しばらくアナザーアースへのログインを控えなければいけない理由を教えて頂けませんか?』
ネネの指示を受けた敦也だったが、意図が掴めなかった。彼は素直に、彼女に何故なのか理由を聞くメッセージを送った。
(…これは)
返信は時刻と、エリアの何処かを示している番号だった。この地点に向かえという指示だと、敦也は判断した。
(レストラン…)
時刻に合わせて指示された場所に向かった敦也の視界に入ったのは、座敷を模したレストランだった。二百年前の日本の建物を再現して建てられたらしい。
「来ましたね」
レストランの入り口の近くに立っていたのはネネだった。敦也が来た事に気付いた彼女は、相変わらず静かな目をしている。
「取り敢えず、食事にしましょう」
ーー
店内は落ち着いた雰囲気で、騒がしい客はおらず静かだった。観光客と思われる男性も、静かに酒を味わっていた。
席についたネネと敦也は、それぞれ料理の注文をした。ネネが頼んだのはアボカドとエビのサラダ、鯛のカルパッチョとソーセージの盛り合わせで、敦也が頼んだのはシーザーサラダとビーフカツレツだった。
「近いうちに、アナザーアースに良からぬ事が起こります」
「テロ組織に、動きがあったんですか」
食事を済ませて、食後のワインを嗜んでいるネネが話し始めた。日本の銘柄のウイスキーを飲んでいる敦也は、彼女の話を聞いていた。
「逆ですね。異様に静かです」
「準備をしているのでしょうか」
「私には、ただ怯えて縮こまって隠れている様に思えます」
「大きな嵐に、備えている…?」
ネネは神妙な表情で、何かを思い悩んでいる様子だった。常人である敦也は、何が彼女をそこまで悩ませているのか想像出来なかった。
「これからアナザーアースに起こる嵐は、創造者に止められるものではありません」
「…だから、自分達も身を潜める必要があると」
「はい…アナザーアースはもう一つの地球。どれ程地形が変わってしまうのか不安です」
「…分かりました。私のアカウントも、アナザーアースから切り離します」
敦也はネネの勧めに従って、アカウントをログアウトさせる事にした。それでも不安は拭えないし、アナザーアースがどうなるのか不安だった。
「私達は争乱を鑑賞して、楽しみましょう。現実世界の私たちがやるべき事は、それだけです」
レイが巻き込まれたトラブルを解決したネネは、この日もアナザーアースを監視していた。特にテロリストの動向には、目を光らせていなければならない。
(直接ブラックエリアに赴くしかなさそうですね…)
ーー
ブラックエリアの奥深く、そこにはネネが用意した研究施設がある。ネネはそこから直接、ブラックエリア各所の映像にアクセスしていた。
(大規模な組織の殆どが活動していない…)
ネネはこの平穏は明らかな異常事態であると察していた。そしてこの平穏は、嵐の前の静けさでもあった。
ーー
(パスワードも変えておこう…)
ログアウトしたネネは、アカウントの設定をいくつか変えていた。他の悪意あるユーザーによるハッキングを防ぐ為だ。
(敦也にも…)
ーー
『しばらくアナザーアースへのログインを控えなければいけない理由を教えて頂けませんか?』
ネネの指示を受けた敦也だったが、意図が掴めなかった。彼は素直に、彼女に何故なのか理由を聞くメッセージを送った。
(…これは)
返信は時刻と、エリアの何処かを示している番号だった。この地点に向かえという指示だと、敦也は判断した。
(レストラン…)
時刻に合わせて指示された場所に向かった敦也の視界に入ったのは、座敷を模したレストランだった。二百年前の日本の建物を再現して建てられたらしい。
「来ましたね」
レストランの入り口の近くに立っていたのはネネだった。敦也が来た事に気付いた彼女は、相変わらず静かな目をしている。
「取り敢えず、食事にしましょう」
ーー
店内は落ち着いた雰囲気で、騒がしい客はおらず静かだった。観光客と思われる男性も、静かに酒を味わっていた。
席についたネネと敦也は、それぞれ料理の注文をした。ネネが頼んだのはアボカドとエビのサラダ、鯛のカルパッチョとソーセージの盛り合わせで、敦也が頼んだのはシーザーサラダとビーフカツレツだった。
「近いうちに、アナザーアースに良からぬ事が起こります」
「テロ組織に、動きがあったんですか」
食事を済ませて、食後のワインを嗜んでいるネネが話し始めた。日本の銘柄のウイスキーを飲んでいる敦也は、彼女の話を聞いていた。
「逆ですね。異様に静かです」
「準備をしているのでしょうか」
「私には、ただ怯えて縮こまって隠れている様に思えます」
「大きな嵐に、備えている…?」
ネネは神妙な表情で、何かを思い悩んでいる様子だった。常人である敦也は、何が彼女をそこまで悩ませているのか想像出来なかった。
「これからアナザーアースに起こる嵐は、創造者に止められるものではありません」
「…だから、自分達も身を潜める必要があると」
「はい…アナザーアースはもう一つの地球。どれ程地形が変わってしまうのか不安です」
「…分かりました。私のアカウントも、アナザーアースから切り離します」
敦也はネネの勧めに従って、アカウントをログアウトさせる事にした。それでも不安は拭えないし、アナザーアースがどうなるのか不安だった。
「私達は争乱を鑑賞して、楽しみましょう。現実世界の私たちがやるべき事は、それだけです」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
専業ネカマの生態
magnet
SF
36歳プロヒキニートが推しの宣伝によりゲームを始めることを決意。コツコツお金を貯め一ヶ月遅れでようやくゲームを始めるも、初心者狩りにカモられ、キャラを削除されてしまう。そんな失意の中、復習に燃える主人公(デブメガネオタク)は二度目のログイン時に前回には無かったキャラクリエイト画面を発見する。そこでは詳細な顔だけでなく、生体認証により選択できなかった性別すら変更可能で……
人生オワコン男性による怒涛の人生逆転劇!
未来に住む一般人が、リアルな異世界に転移したらどうなるか。
kaizi
SF
主人公の設定は、30年後の日本に住む一般人です。
異世界描写はひたすらリアル(現実の中世ヨーロッパ)に寄せたので、リアル描写がメインになります。
魔法、魔物、テンプレ異世界描写に飽きている方、SFが好きな方はお読みいただければ幸いです。
なお、完結している作品を毎日投稿していきますので、未完結で終わることはありません。
冴えない理系大生はVRゲーム作って一山当てたい!
千華あゑか
SF
祝日を合わせて4日間の連休。その初日。
もう昼過ぎだというのにカーテンを閉め切った薄暗い部屋。バネの飛び出たベッドの上でVRヘッドセットを付けて、トランクスとTシャツ姿で横になっている男がいた。「レストランで美味しいシーフードを振舞えば美女もイチコロって本当かよ!」などと一人興奮している男"ルパート・アビエス"。
一方、真面目を誇張"体現"したかのように、朝から息が詰まりそうな学術書や論文の数々を開き、コーヒー片手に勉学に没頭する"デイヴィッド・デイヴィス"。
神様が気まぐれを起こさなければ、交わることなんてなさそうなこの二人。一応、エリート校に通う天才たちではあるのだが。どうも、何かが何処かでどういう訳かオカシクなってしまったようで……。
「吸い込まれそうな彼女の青い瞳には、もう君しか映っていない!?」なんて適当な商売文句に興奮しているトランクス姿の残念な男によって、胃もたれしてもまだお釣りが返ってきてあり余るくらいに、想定外で面倒で面倒なことになるなんて。きっと後者の彼は思いもよらなかったでしょう。
絵に描いたような笑いあり、涙あり、恋愛あり?の、他愛ないキャンパスライフをただ送りたかった。そんな、運命に"翻弄"されてしまった2人の物語。さてさてどうなることやら……。
※ただいま改装中です。もしお読みになられる際は、プロローグからアクセス権限が解除された話数までに留めておかれることをお勧めします。
※改修しはじめましたが、現在プライベートとの兼ね合いにより定期更新がむずかしい状態にあります。ですが打ち止めとするつもりは毛頭ありませんので、あまり構えず気長にお付き合い頂けますと嬉しいです。
[Truth Release Code]
※No access rights
Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる