33 / 77
第4章 第2話 汐音と探偵と猫耳少女
しおりを挟む
(この顔…やっぱりお姉ちゃんと同じだよね)
汐音はまとめサイトの記事にあった写真と、昏睡状態の姉の顔を見比べていた。髪の色は明らかに違っていたが、その可愛らしい顔は姉とそっくりだった。
(これは確かめるしかない…!)
ーー
(アナザーアースへのログイン自体、久しぶりだな…)
汐音のアバターは、狼の耳がついた少女の姿だった。汐音は動物好きで、アナザーアースでも動物の意匠を持つアバターを選択していた。
(lunar eclipse project…聞いた事のないゲームだな)
美来に似たNPCの目撃情報があったのは、マイナーなゲームだった。検索しても公式サイトと、もう更新されていない攻略サイトしかヒットしなかった。
(自分でプレイしてみるしかない)
ーー
(このゲーム全然プレイヤーいないけど大丈夫なの…?)
汐音は月食エリアの広場にいたが、プレイヤーの数が少なく閑散としていた。他のゲームならもっと人がいる時間帯のはずなのだが…
(NPCが何処にいるかも分からないし…またストリートに戻るか)
ーー
汐音は2010年代の東京を模したエリアにある、カフェに来ていた。時間帯は丁度昼、多くの客で賑わっている様子だった。
(ここで食事しても、ご飯食べた事にはならないんだよね…)
アナザーアース内には“食事”を楽しめるレストランもある…が、現実の肉体は何も摂取していない。健康の為にも、現実世界でご飯を食べる必要がある。
(じゃあログインしたまま、一度自分の部屋に戻って…)
「鼎サーン…今日はルナプロ行かないんですか?」
「あんまり依頼来ないけど、私は探偵なの。ゲームばっかり出来ないから…」
(ルナプロ…lunar eclipse projectの事?)
汐音は近くにいた女性達の会話を偶々聞いたが、明らかに気になる内容だった。ゲーム初心者でもある汐音は、彼女達に話を聞いてみる事にした。
「あの、ルナプロ…やってるんですか?急にすみません…」
「ルナプロ?やってるよ。あっ、ひょっとして他のプレイヤー探してたの?」
猫耳の少女は、汐音を怪しむ事なく質問に答えた。どうやら、警戒すべき対象では無いと思ったらしい。
「はい…またログインする様になって…」
「それでオンラインゲームを始めてみたの?」
「そうなんですが…あまりにも他のプレイヤーが少なくて…」
「もっと色々オンラインゲームあるのに、何でルナプロ?あのゲームの過疎っぷりすごいよ?」
鼎と呼ばれていた女性が気になった点を指摘すると、汐音はすぐに答えられなくなってしまった。猫耳の少女はそれを見て、汐音に対して明るく接した。
「興味持って始めたカンジ?きっかけは何かな?」
「桃香、その子何か話しづらい事があるのかも…」
鼎は、汐音が唯のオンラインゲーム初心者では無いと判断していた。引っ込み思案なだけの少女には見えなかったのだ。
「流石、名探偵だね。まだあんまり話して無いのに、彼女の心の機微に気づくのはすごいよ」
「私は小説に出て来るような探偵じゃない。それに、桃香だって気づいてたでしょ…それじゃあ、出来るだけ細かく教えてくれる?」
「はい。あっ、私の名前は汐音です」
ーー
鼎達は汐音の話を聞いて、彼女の姉が意識不明になっている事を知った。そしてlunar eclipse projectのNPCの顔と、姉の顔が似ているという事も聞いた。
「その噂については私達も知ってるよ」
「でも確証も無いし単なる噂話だし、ボク達もそこまで本気にしてないな」
「比較してる画像を見て下さい」
鼎と桃香は、汐音の姉とlunar eclipse projectのNPCの顔が並んでいる画像を見せてもらった。確かに髪や瞳の色以外は、偶然で片付けられない程に似ていた。
「この子、ミクちゃんにそっくりだね…」
「美来という名前なんですか?そこも姉と同じです…」
「ミクはNPCとは思えない程感情豊かな子で、今は桃香のギルドに身を寄せている。会ってみる?」
「はい!お願いします!」
ーー
「それじゃ汐音チャンも、ボク達のギルドに入る?」
「はい…え、何ですかこのギルド名…」
「ごめんね…気にしないで」
汐音は"アルティメット気持ち良すぎだろギャラクシー”というギルド名を見て、明らかに引いていた。鼎は申し訳ないと思っていたが、桃香には名前を変える気がないので仕方ない。
「あの、カナエさん…でしたっけ?依頼が来てるなら、そっちを優先した方が良いんじゃ…」
「大丈夫。アナザーアースにログインしたまま目覚め無くなった子の方が深刻だから…あ、お金は取らないから」
鼎は目の前にいる、狼の耳がついた少女から金を取ろうとは思っていなかった。鼎は他人の命がかかっている事態になれば、金への執着を捨てるタイプだった。
「それじゃあ汐音チャン…姉かも知れない人に会いに行こう」
汐音はまとめサイトの記事にあった写真と、昏睡状態の姉の顔を見比べていた。髪の色は明らかに違っていたが、その可愛らしい顔は姉とそっくりだった。
(これは確かめるしかない…!)
ーー
(アナザーアースへのログイン自体、久しぶりだな…)
汐音のアバターは、狼の耳がついた少女の姿だった。汐音は動物好きで、アナザーアースでも動物の意匠を持つアバターを選択していた。
(lunar eclipse project…聞いた事のないゲームだな)
美来に似たNPCの目撃情報があったのは、マイナーなゲームだった。検索しても公式サイトと、もう更新されていない攻略サイトしかヒットしなかった。
(自分でプレイしてみるしかない)
ーー
(このゲーム全然プレイヤーいないけど大丈夫なの…?)
汐音は月食エリアの広場にいたが、プレイヤーの数が少なく閑散としていた。他のゲームならもっと人がいる時間帯のはずなのだが…
(NPCが何処にいるかも分からないし…またストリートに戻るか)
ーー
汐音は2010年代の東京を模したエリアにある、カフェに来ていた。時間帯は丁度昼、多くの客で賑わっている様子だった。
(ここで食事しても、ご飯食べた事にはならないんだよね…)
アナザーアース内には“食事”を楽しめるレストランもある…が、現実の肉体は何も摂取していない。健康の為にも、現実世界でご飯を食べる必要がある。
(じゃあログインしたまま、一度自分の部屋に戻って…)
「鼎サーン…今日はルナプロ行かないんですか?」
「あんまり依頼来ないけど、私は探偵なの。ゲームばっかり出来ないから…」
(ルナプロ…lunar eclipse projectの事?)
汐音は近くにいた女性達の会話を偶々聞いたが、明らかに気になる内容だった。ゲーム初心者でもある汐音は、彼女達に話を聞いてみる事にした。
「あの、ルナプロ…やってるんですか?急にすみません…」
「ルナプロ?やってるよ。あっ、ひょっとして他のプレイヤー探してたの?」
猫耳の少女は、汐音を怪しむ事なく質問に答えた。どうやら、警戒すべき対象では無いと思ったらしい。
「はい…またログインする様になって…」
「それでオンラインゲームを始めてみたの?」
「そうなんですが…あまりにも他のプレイヤーが少なくて…」
「もっと色々オンラインゲームあるのに、何でルナプロ?あのゲームの過疎っぷりすごいよ?」
鼎と呼ばれていた女性が気になった点を指摘すると、汐音はすぐに答えられなくなってしまった。猫耳の少女はそれを見て、汐音に対して明るく接した。
「興味持って始めたカンジ?きっかけは何かな?」
「桃香、その子何か話しづらい事があるのかも…」
鼎は、汐音が唯のオンラインゲーム初心者では無いと判断していた。引っ込み思案なだけの少女には見えなかったのだ。
「流石、名探偵だね。まだあんまり話して無いのに、彼女の心の機微に気づくのはすごいよ」
「私は小説に出て来るような探偵じゃない。それに、桃香だって気づいてたでしょ…それじゃあ、出来るだけ細かく教えてくれる?」
「はい。あっ、私の名前は汐音です」
ーー
鼎達は汐音の話を聞いて、彼女の姉が意識不明になっている事を知った。そしてlunar eclipse projectのNPCの顔と、姉の顔が似ているという事も聞いた。
「その噂については私達も知ってるよ」
「でも確証も無いし単なる噂話だし、ボク達もそこまで本気にしてないな」
「比較してる画像を見て下さい」
鼎と桃香は、汐音の姉とlunar eclipse projectのNPCの顔が並んでいる画像を見せてもらった。確かに髪や瞳の色以外は、偶然で片付けられない程に似ていた。
「この子、ミクちゃんにそっくりだね…」
「美来という名前なんですか?そこも姉と同じです…」
「ミクはNPCとは思えない程感情豊かな子で、今は桃香のギルドに身を寄せている。会ってみる?」
「はい!お願いします!」
ーー
「それじゃ汐音チャンも、ボク達のギルドに入る?」
「はい…え、何ですかこのギルド名…」
「ごめんね…気にしないで」
汐音は"アルティメット気持ち良すぎだろギャラクシー”というギルド名を見て、明らかに引いていた。鼎は申し訳ないと思っていたが、桃香には名前を変える気がないので仕方ない。
「あの、カナエさん…でしたっけ?依頼が来てるなら、そっちを優先した方が良いんじゃ…」
「大丈夫。アナザーアースにログインしたまま目覚め無くなった子の方が深刻だから…あ、お金は取らないから」
鼎は目の前にいる、狼の耳がついた少女から金を取ろうとは思っていなかった。鼎は他人の命がかかっている事態になれば、金への執着を捨てるタイプだった。
「それじゃあ汐音チャン…姉かも知れない人に会いに行こう」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
空虚な時計塔 -Broken Echo Tides-
るてん
SF
SF小説です。タイムリープというありきたりな設定を踏襲しつつちょっと変わった感じを目指してます。
設定が荒っぽい部分もあるので、そのあたりはご了承下さい・・・
二部編成を予定していますが、分量はあまり長くしないつもりです。
あらすじ(仮
核戦争後の荒廃した2100年代。絶滅の危機に瀕した人類は、北極圏の小さな生存圏で細々と生き延びていた。人類最後の天才科学者と呼ばれた男は、不完全なシンギュラリティと評した科学の限界を超え、滅亡を回避する方法を探る。しかし、その道はあまりにも無謀で危険な賭けだった――。

専業ネカマの生態
magnet
SF
36歳プロヒキニートが推しの宣伝によりゲームを始めることを決意。コツコツお金を貯め一ヶ月遅れでようやくゲームを始めるも、初心者狩りにカモられ、キャラを削除されてしまう。そんな失意の中、復習に燃える主人公(デブメガネオタク)は二度目のログイン時に前回には無かったキャラクリエイト画面を発見する。そこでは詳細な顔だけでなく、生体認証により選択できなかった性別すら変更可能で……
人生オワコン男性による怒涛の人生逆転劇!

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる