32 / 77
第4章 第1話 エリア013 目覚めない姉
しおりを挟む
(この後雨降るんだっけ…)
汐音はエリア013の空を見上げて、湿気を感じていた。予報通り、曇りのち雨になりそうだったので、急いで家に帰った。
彼女は帰る最中も、ストリートを歩く人々を見ていた。013では、ガラの悪そうな大人達がうろついている光景は日常の一部となっている。
(この人達も貧困に苦しんでるのかな…)
エリア013は福祉制度が碌に整備されておらず、貧困層の不満が募っていた。治安も年々悪くなっており、暮らしにくいと言われている。
(…あんまりキョロキョロしてるのも、良くないよね)
妙な姿を見せていると、どんな事を言われて絡まれるか分からない。汐音はとにかく早く家に帰る為に、出来るだけ急いだ。
ーー
「ただいま…」
汐音が暮らしている家は、013の中では比較的大きい方である。貧困層が多いエリア013は、郊外のスラムで暮らしている住民も多い。
汐音の両親は朝から晩まで働いて、必死になって金を稼いでいる。別にブラック企業と言う訳では無く、013ではそれが当たり前という話だった。
ーー
「お姉ちゃん…まだ帰って来て無いのね」
2階にある部屋では、汐音の姉である美来がベッドで寝ていた。僅かに寝息は聞こえて来るが、起きる気配は無い。
美来は、アナザーアースにログインしたまま目覚めなくなったユーザーの1人である。エリア013では、こうしたユーザーがかなり多い。
(エリアリーダーは何の対応もしてくれないし…)
それぞれのエリアにはリーダーに当たる役職の人間がいるが、013のエリアリーダーは無能だった。アナザーアースのユーザー達が昏睡状態になっていても、一切知らない振りをしている。
『頼人教授も原因は分からない、という事ですね?』
医療従事者がニュース番組に出ていたが、役に立つ情報は無さそうだった。アナザーアースにログインしたまま意識不明になる現象についての研究は、ほとんど進んでいなかった。
(ごめんね…何もしてあげられなくて)
アナザーアースから帰って来ない人を患者として受け入れる病院は少ない。医学的な観点が関係しているらしいが、医者達に何も出来ない状況であるのも事実である。
その結果、家で意識不明の家族の面倒を見る必要になる。医療器具等は提供してもらえるが、それでも負担は大きい。
「お金の面でだいぶ苦しいし…これもいつまで続けられるか…」
汐音は自分で出来る範囲で、アナザーアースにログインしたまま昏睡状態になる事件について調べていた。それも手詰まりになりつつあり、彼女は無力感に苛まれていた。
ーー
(ん…ゲームのNPCが実は人間?)
まとめサイトを見ていた汐音は、ある記事に興味を惹かれた。とあるゲームのNPCは、人間を元に作られているのかも知れないという噂だ。
(オカルト系の記事か…)
汐音がその記事を見ると、NPCキャラの画像が表示された。汐音はそこにいたキャラクターの中に、明らかに見覚えのある顔の少女を見つける。
(え…お姉ちゃん?!)
汐音はエリア013の空を見上げて、湿気を感じていた。予報通り、曇りのち雨になりそうだったので、急いで家に帰った。
彼女は帰る最中も、ストリートを歩く人々を見ていた。013では、ガラの悪そうな大人達がうろついている光景は日常の一部となっている。
(この人達も貧困に苦しんでるのかな…)
エリア013は福祉制度が碌に整備されておらず、貧困層の不満が募っていた。治安も年々悪くなっており、暮らしにくいと言われている。
(…あんまりキョロキョロしてるのも、良くないよね)
妙な姿を見せていると、どんな事を言われて絡まれるか分からない。汐音はとにかく早く家に帰る為に、出来るだけ急いだ。
ーー
「ただいま…」
汐音が暮らしている家は、013の中では比較的大きい方である。貧困層が多いエリア013は、郊外のスラムで暮らしている住民も多い。
汐音の両親は朝から晩まで働いて、必死になって金を稼いでいる。別にブラック企業と言う訳では無く、013ではそれが当たり前という話だった。
ーー
「お姉ちゃん…まだ帰って来て無いのね」
2階にある部屋では、汐音の姉である美来がベッドで寝ていた。僅かに寝息は聞こえて来るが、起きる気配は無い。
美来は、アナザーアースにログインしたまま目覚めなくなったユーザーの1人である。エリア013では、こうしたユーザーがかなり多い。
(エリアリーダーは何の対応もしてくれないし…)
それぞれのエリアにはリーダーに当たる役職の人間がいるが、013のエリアリーダーは無能だった。アナザーアースのユーザー達が昏睡状態になっていても、一切知らない振りをしている。
『頼人教授も原因は分からない、という事ですね?』
医療従事者がニュース番組に出ていたが、役に立つ情報は無さそうだった。アナザーアースにログインしたまま意識不明になる現象についての研究は、ほとんど進んでいなかった。
(ごめんね…何もしてあげられなくて)
アナザーアースから帰って来ない人を患者として受け入れる病院は少ない。医学的な観点が関係しているらしいが、医者達に何も出来ない状況であるのも事実である。
その結果、家で意識不明の家族の面倒を見る必要になる。医療器具等は提供してもらえるが、それでも負担は大きい。
「お金の面でだいぶ苦しいし…これもいつまで続けられるか…」
汐音は自分で出来る範囲で、アナザーアースにログインしたまま昏睡状態になる事件について調べていた。それも手詰まりになりつつあり、彼女は無力感に苛まれていた。
ーー
(ん…ゲームのNPCが実は人間?)
まとめサイトを見ていた汐音は、ある記事に興味を惹かれた。とあるゲームのNPCは、人間を元に作られているのかも知れないという噂だ。
(オカルト系の記事か…)
汐音がその記事を見ると、NPCキャラの画像が表示された。汐音はそこにいたキャラクターの中に、明らかに見覚えのある顔の少女を見つける。
(え…お姉ちゃん?!)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる