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第3章 第4話 lunar eclipse project 通称月食
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「遊んでみて…って言われても、私MMORPGとかやった事ない」
「まぁまぁ、散々チンピラとかもっとヤバい奴らと戦って来たでしょ。アレと同じ感じでやれば大丈夫だよ」
確かに鼎は探偵としてブラックエリア関係の依頼を受けるうちに、チンピラや開発者の娘やテロリストと戦う羽目になった。そうしているうちに、鼎もある程度は戦えるようになってしまったのだ。
「それにしてもlunar eclipse project…聞いた事なかったな。もっと色んなニュース見た方が良いのかな…」
「いやここの広報、本当に宣伝が下手だから…マイナーになるのも仕方ないよ」
プレイ人口もメジャーな作品と比べてそこまで多くない。やり込んでいるコアなゲーマーが多いので、サービス終了の危機にはなっていない様だ。
「このゲーム…プレイして調べてみたけど、あちこちに妙なプログラムが組み込まれてるんだ」
「普通のゲームには使われないもの?」
「オンラインゲームにしては強力すぎるセキュリティや、トラップシステムだよ。脆弱性を見つけようとしたけど、全然上手く行かなくて…」
「ゲームのセキュリティの脆弱性を探す事自体どうかと思うけど」
鼎は桃香の行いに少し引いていたが、桃香は気にしていなかった。彼女はそのまま話を進めて、怪しんでいる理由に話題が移る。
「lunar eclipse project…通称月食はオンラインゲームとしては、強固なセキュリティで守られているんだ…現在のアナザーアースよりも強力なプログラムでね」
「え…仮想現実よりも強力なセキュリティのオンラインゲーム…?」
「うん。そんなのを組める優秀なプログラマーだったら、アナザーアース運営がスカウトしてもおかしくない…」
「スカウト出来ない事情がある…相手が表向きは行方不明になってるアナザーアース開発者だから…?」
もちろん運営側としては、かつてのアナザーアースの開発者に戻って来て欲しいという思いもあるだろう。しかし、ずっと隠れてきた相手に交渉、接触を仕掛けるのはかなり難しいだろう。
「アナザーアースの開発者も相当ヤバい事をしている…ひょっとしたら、愛莉チャンや他の行方不明者がどうなったかも分かるかも知れない」
「ちょっと飛躍しすぎじゃない?開発者がゲーム内に分かりやすいヒントを残すとは思えないし」
鼎からすれば、桃香の話はかなり疑わしいものだった。マイナーだとしてもアナザーアースの一般ユーザーがプレイできるゲームに、妙な仕掛けは仕込めないと思っていたのだ。
「でもテロ組織もこのゲームをプレイしてる。しかも数名じゃ無くて大量にユーザーを作っている。個々人が趣味でやってるんじゃ無くて、何らかの作戦だよ。こいつらが何かしないように、見張った方が良い」
「…分かったよ。しばらくしても、特に事件が起きる様子が無かったらやめるから」
鼎は半信半疑だったが、lunar eclipse projectを始める事にした。何らかの手がかりを得られる可能性がある以上は、やってみる価値はある。
「それじゃあしばらくは、ボクの家に居てよ。アドバイスとかも直接伝えたいし」
「え…予備のヘッドデバイスあるの?」
鼎にとっては、アナザーアースにログインする為の頭部に装着するデバイスはかなり高額な物である。まあ裕福そうなので、お金の余裕はありそうだが。
「ヘッドデバイスは複数台持ってるよ。それぞれ性能差もあるし」
「私はその辺、特にこだわり無いから…」
桃香はかなりの数のログイン用デバイスを持っていたので、交代でログインする必要は無さそうだ。これなら、効率よく開発者の手がかりを探す事ができる。
「で、本当にこの家に寝泊まりしていいの?」
「うん。この家大きいし、好きな部屋使ってよ。あ、掃除は手伝ってね」
「着替え…服は」
「ボクが持ってる服の中から、適当に着てよ。後、その内鼎サンの服を買いに行くから」
この家には来客用と思われる部屋もいくつかあったので、鼎はその部屋を使わせてもらう事にした。これでlunar eclipse projectを調査する準備は出来た。
「そう言えばアンタ…いや、何でもない」
「…どうしたの。ボクが"何者"か、気になるの?」
アッシュグレーの髪、小柄な体格、綺麗な顔立ちをしている桃香。鼎が見ても誰が見ても、桃香の性別を一目見ただけで判断するのは不可能だろう。
「やっぱり、それが原因なの…アナザーアースのブラックエリアで」
「やめやめ…ボク、暗い話苦手なんだよ」
「…ごめん」
「ボク、現実ではそれなりに折り合いをつけて生きているつもり…でも、自分なりの理想が欲しいから、アナザーアースの開発者の技術を盗みたいんだよ」
「そうか…あなたなりに、必死なのね」
「これで必死に見えるの?まぁ、辛そうな表情を顔に出してない自覚はあるけど」
鼎はこれ以上は踏み込んでは行けない事を分かっていた。桃香もかなりの事を打ち明けた以上、根掘り葉掘り聞くのは酷というものだろう。
「それじゃあこれから…しばらくの間だけど、よろしく」
「ああ、頼むね」
こうして桃香の家での共同生活、そしてlunar eclipse project…月食の調査を行う事になった…
(桃香との生活…まあ大丈夫でしょ)
「まぁまぁ、散々チンピラとかもっとヤバい奴らと戦って来たでしょ。アレと同じ感じでやれば大丈夫だよ」
確かに鼎は探偵としてブラックエリア関係の依頼を受けるうちに、チンピラや開発者の娘やテロリストと戦う羽目になった。そうしているうちに、鼎もある程度は戦えるようになってしまったのだ。
「それにしてもlunar eclipse project…聞いた事なかったな。もっと色んなニュース見た方が良いのかな…」
「いやここの広報、本当に宣伝が下手だから…マイナーになるのも仕方ないよ」
プレイ人口もメジャーな作品と比べてそこまで多くない。やり込んでいるコアなゲーマーが多いので、サービス終了の危機にはなっていない様だ。
「このゲーム…プレイして調べてみたけど、あちこちに妙なプログラムが組み込まれてるんだ」
「普通のゲームには使われないもの?」
「オンラインゲームにしては強力すぎるセキュリティや、トラップシステムだよ。脆弱性を見つけようとしたけど、全然上手く行かなくて…」
「ゲームのセキュリティの脆弱性を探す事自体どうかと思うけど」
鼎は桃香の行いに少し引いていたが、桃香は気にしていなかった。彼女はそのまま話を進めて、怪しんでいる理由に話題が移る。
「lunar eclipse project…通称月食はオンラインゲームとしては、強固なセキュリティで守られているんだ…現在のアナザーアースよりも強力なプログラムでね」
「え…仮想現実よりも強力なセキュリティのオンラインゲーム…?」
「うん。そんなのを組める優秀なプログラマーだったら、アナザーアース運営がスカウトしてもおかしくない…」
「スカウト出来ない事情がある…相手が表向きは行方不明になってるアナザーアース開発者だから…?」
もちろん運営側としては、かつてのアナザーアースの開発者に戻って来て欲しいという思いもあるだろう。しかし、ずっと隠れてきた相手に交渉、接触を仕掛けるのはかなり難しいだろう。
「アナザーアースの開発者も相当ヤバい事をしている…ひょっとしたら、愛莉チャンや他の行方不明者がどうなったかも分かるかも知れない」
「ちょっと飛躍しすぎじゃない?開発者がゲーム内に分かりやすいヒントを残すとは思えないし」
鼎からすれば、桃香の話はかなり疑わしいものだった。マイナーだとしてもアナザーアースの一般ユーザーがプレイできるゲームに、妙な仕掛けは仕込めないと思っていたのだ。
「でもテロ組織もこのゲームをプレイしてる。しかも数名じゃ無くて大量にユーザーを作っている。個々人が趣味でやってるんじゃ無くて、何らかの作戦だよ。こいつらが何かしないように、見張った方が良い」
「…分かったよ。しばらくしても、特に事件が起きる様子が無かったらやめるから」
鼎は半信半疑だったが、lunar eclipse projectを始める事にした。何らかの手がかりを得られる可能性がある以上は、やってみる価値はある。
「それじゃあしばらくは、ボクの家に居てよ。アドバイスとかも直接伝えたいし」
「え…予備のヘッドデバイスあるの?」
鼎にとっては、アナザーアースにログインする為の頭部に装着するデバイスはかなり高額な物である。まあ裕福そうなので、お金の余裕はありそうだが。
「ヘッドデバイスは複数台持ってるよ。それぞれ性能差もあるし」
「私はその辺、特にこだわり無いから…」
桃香はかなりの数のログイン用デバイスを持っていたので、交代でログインする必要は無さそうだ。これなら、効率よく開発者の手がかりを探す事ができる。
「で、本当にこの家に寝泊まりしていいの?」
「うん。この家大きいし、好きな部屋使ってよ。あ、掃除は手伝ってね」
「着替え…服は」
「ボクが持ってる服の中から、適当に着てよ。後、その内鼎サンの服を買いに行くから」
この家には来客用と思われる部屋もいくつかあったので、鼎はその部屋を使わせてもらう事にした。これでlunar eclipse projectを調査する準備は出来た。
「そう言えばアンタ…いや、何でもない」
「…どうしたの。ボクが"何者"か、気になるの?」
アッシュグレーの髪、小柄な体格、綺麗な顔立ちをしている桃香。鼎が見ても誰が見ても、桃香の性別を一目見ただけで判断するのは不可能だろう。
「やっぱり、それが原因なの…アナザーアースのブラックエリアで」
「やめやめ…ボク、暗い話苦手なんだよ」
「…ごめん」
「ボク、現実ではそれなりに折り合いをつけて生きているつもり…でも、自分なりの理想が欲しいから、アナザーアースの開発者の技術を盗みたいんだよ」
「そうか…あなたなりに、必死なのね」
「これで必死に見えるの?まぁ、辛そうな表情を顔に出してない自覚はあるけど」
鼎はこれ以上は踏み込んでは行けない事を分かっていた。桃香もかなりの事を打ち明けた以上、根掘り葉掘り聞くのは酷というものだろう。
「それじゃあこれから…しばらくの間だけど、よろしく」
「ああ、頼むね」
こうして桃香の家での共同生活、そしてlunar eclipse project…月食の調査を行う事になった…
(桃香との生活…まあ大丈夫でしょ)
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