Welcome to Another Earth

八神獅童

文字の大きさ
上 下
23 / 75

番外編1 第2話 開発者とテロ組織

しおりを挟む
「ここが奴らの本拠地です」

ネネと敦也は、テロ組織のアジトの裏に回り込んでいた。敦也の案内で、壁の裏側に張り巡らされている道を通ったのだ。

「奴らの装備は?」

「スポーツ用のビームライフルをベースにした、殺傷能力の高い銃がメインです」

「楽勝ですね」

「はい。こちらの装備は様々な戦況に対応可能な銃型デバイスM200です。こちらにとって有利な条件ですね」

ネネ達は装備を確認して、アジトへの潜入の準備を整えた。アジトの構造を念入りにチェックして、警備が薄い場所は何処かを突き止めた。

「ここから突入して、敵を一人ずつ始末します。分かりましたね?」

「了解です、油断せず行きましょう」

ーー

「なぁ…次の攻撃作戦の内容、無茶過ぎじゃね?」

「ホントな…ナガレの奴、俺達のこと単なる捨て駒だと思ってるだろ」

裏口付近の通路で、テロ組織のメンバーが愚痴を言っていた。捨て石同然に使われる下っ端達は、こうして文句を言ってストレスを発散することしか出来ない。

「文句言っててもしょうがないけど…って、おいどうした?」

2人いたメンバーの片方が、もう片方が黙っている事に気づいた。不審に思った瞬間に敦也の攻撃を受けて、アバターを破壊された。

「ひとまず、安全圏を確保しました」

「ご苦労でした。ここからは手早く済ませましょう」

2人のアバターを素早く破壊したのは、壁にグリッチによる穴を発生させて侵入した敦也だった。音も立てずに侵入して来た敦也とネネに気付く者はいなかった。

ーー

もう裏口付近にテロ組織の気配を感じないと判断したネネ達は、他のメンバーに気づかれないようにアジトに潜入した。待ち伏せを織り交ぜながら、アジトの奥深くへと侵入していくのだ。

(よし…敵に気付かれずに始末できているな)

ネネと敦也はテロリスト達の背後や頭上から攻撃して、敵に認識される事を防いでいた。こうすれば、アバターを壊される前に警報を鳴らされる事も無い。

「構成員の練度はかなり低いですね」

「ええ。テロリストの下っ端なんて、こんなものでしょう」

テロリストの構成員は、元々はチンピラだった者も多い。そうした連中は、アジト内にいる時に緊張感が緩む事も多いのだ。

「奥の制御室さえ押さえてしまえば、こちらの勝利はほぼ確定します」

「分かりました。行きましょう」

ーー

「おい、どうなっている?警備員のアバターか破壊されているぞ」

「チッ…誰も侵入者に気づかなかったのかよ」

制御室でゴシップ誌を読みながら監視カメラを見ていた男が、ようやく異常に気づいた。苛つきながら映像記録を確認し始めたが、既に手遅れだった。

「がっ?!」

「おいどうし…」

監視記録を見ていたメンバーが悲鳴を上げて即座に異変を感じたが、その次の瞬間に敦也の攻撃を受けた。監視室にいた2人の男は動かなくなり、制圧は完了した。

「さてと…後はここから警備システムを操作して、残りの構成員を攻撃するだけですね」

「…えげつないですね」

ネネは警備システムを直接操作してテロ組織の構成員のアバターを、銃器などで破壊した。大半の構成員は死角からの銃撃を避ける事は出来なかったが…

「敦也、警戒してください。1人、死角からの銃撃を回避した構成員がいます」

「手練れという事ですね」

警備システムによる銃撃を回避したのは、18歳くらいと思われる少女だった。幹部クラスの構成員では無さそうだが、実力者なのは間違いないだろう。

「警備システムをハッキングして銃撃を行ったので、制御室が押さえられている事にもおそらく気づかれています。注意してください」

「了解しまし…!彼女がすぐそこまで迫って来ています!このまま扉を破壊するつもりのようです!」

ガァン!

扉が吹き飛び瓦礫が飛び散り、敦也は即座にグリッチによるバリアを発生させる。瓦礫と細かい塵は完全に防がれて、ネネ達に届く事はなかった。

「随分妙なバリアを張ってますね~そんな能力、普通のアバターは使えないはずだけど」

「悪いな、私とネネさんのは普通のアバターじゃ無いんだ」

少女は即座に大量の砲塔を召喚して、ネネ達を包囲した。敦也のグリッチバリアでは防げない射程範囲だった。

「…こうなるのなら、アバターじゃなくて抜け殻を着てくるべきでしたね」

「抜け殻を着る…?まぁ、今更手遅れですけどね。私は神谷流、覚えなくて良いですよ」

砲塔から一斉にビームが放たれるが、ネネと敦也は間一髪で回避する。このままでは、ビームで薙ぎ払われる結末になるのは確実だった。

「敦也、ここは一気に攻めに回った方が良いでしょう」

「分かりました!」

ネネと敦也は壁や天井を飛び跳ねる様に移動し始めた。流は彼らの行動に驚いたが、冷静に銃撃で彼らのアバターを狙った。

「なんて運動能力…銃弾が1発も当たらない」

「このまま突っ込みますよ!」

ネネはそのまま流にタックルをして、彼女の体勢を崩す。倒れそうな流に対して、敦也がさらに打撃を加える。

「ぐっ…まだっ!」

流は咄嗟に敦也に対して蹴りによる反撃を行うが、効果は薄かった。蹴りを受け止めた敦也は、渾身の一撃で流を吹っ飛ばす。

「がはっ…仕方ない!」

既にダメージが蓄積していた流は、袖に隠していたスイッチを押した。敦也は咄嗟に彼女のスイッチを叩き落としたが、既に手遅れだった。

近くのモニターに数字が表示される…

01:00 00:59 

ズンッ…

「ネネさん!今押されたのはアジトを爆破する起爆装置のスイッチです!」

「…分かりました。脱出しましょう」

ネネは素早く判断して、すぐにアジトの入り口を目指す。敦也も彼女と一緒に脱出しようとするが、動かない流の方に視線を送る。

「彼女の捕縛は諦めます!急いでください!」

ネネに急かされた敦也は、流を放置してアジトからの脱出を目指す。敦也には、動く気配の無い流を気にする余裕は無かった。

ーー

「気をつけてください敦也。既に大部分が脆くなっています!」

「うわっ…破片が」

ネネは、敦也に爆発で飛んで来た破片を、グリッチで無害な形状に変換させながら逃げていた。敦也は急ぎつつも冷静に、自分達の障害になる物を排除しながら脱出を急いだ。

「カウントは?!」

「まだ30秒あります!」

敦也は壁にグリッチを発生させて穴を作り、ネネはそこに突っ込んで行った。アジトの外に繋がる穴に、敦也も急いで飛び込む。

「外に出れましたが、できるだけ離れましょう!」

00:15 00:14…

00:02 00:01

その瞬間、アジトを中心に凄まじい爆発が起こった。

ーー

「はぁ…はぁ….意外と危ない目に遭いましたね」

「まさかあんな派手に爆発するとは…」

ネネ達は爆炎で燃え盛る、アジトの跡を眺めていた。外を巻き込む様爆発ではなかったが、アジトは跡形もなくなってしまった。

「アジトに残されていたアバターは、木っ端微塵になってしまったみたいです」

「…ナガレは、おそらく無事でしょう」

「え…こんなに派手に爆発したのに、逃げ延びたのですか?」

「おそらくあの状態でも、ログアウトは可能でしょう」

あの時の流はアバターに大ダメージを受けていたが、その場から動く事以外の操作は容易だった。他の構成員とは違い、ログアウトして現実に戻った可能性は高い。

「テロ組織のログインと壊滅については、運営チームに報告しましょう」

こちらから敵では無いということを伝えれば、運営側からの信用も得られる。妙な動きを知られても、すぐにチェックが入る事は無くなるはずだ。

ーー

(テロ組織の前線基地も破壊できた…これで計画に集中できる…)

ネネの計画に必要なユーザーデータは、まだ質も量も足りていない。今までより、効率的なデータ収集手段が必要になっていた。

(ブラックエリア…利用できる連中がいるかも知れない)
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

専業ネカマの生態

magnet
SF
36歳プロヒキニートが推しの宣伝によりゲームを始めることを決意。コツコツお金を貯め一ヶ月遅れでようやくゲームを始めるも、初心者狩りにカモられ、キャラを削除されてしまう。そんな失意の中、復習に燃える主人公(デブメガネオタク)は二度目のログイン時に前回には無かったキャラクリエイト画面を発見する。そこでは詳細な顔だけでなく、生体認証により選択できなかった性別すら変更可能で…… 人生オワコン男性による怒涛の人生逆転劇!

未来に住む一般人が、リアルな異世界に転移したらどうなるか。

kaizi
SF
主人公の設定は、30年後の日本に住む一般人です。 異世界描写はひたすらリアル(現実の中世ヨーロッパ)に寄せたので、リアル描写がメインになります。 魔法、魔物、テンプレ異世界描写に飽きている方、SFが好きな方はお読みいただければ幸いです。 なお、完結している作品を毎日投稿していきますので、未完結で終わることはありません。

冴えない理系大生はVRゲーム作って一山当てたい!

千華あゑか
SF
祝日を合わせて4日間の連休。その初日。  もう昼過ぎだというのにカーテンを閉め切った薄暗い部屋。バネの飛び出たベッドの上でVRヘッドセットを付けて、トランクスとTシャツ姿で横になっている男がいた。「レストランで美味しいシーフードを振舞えば美女もイチコロって本当かよ!」などと一人興奮している男"ルパート・アビエス"。  一方、真面目を誇張"体現"したかのように、朝から息が詰まりそうな学術書や論文の数々を開き、コーヒー片手に勉学に没頭する"デイヴィッド・デイヴィス"。  神様が気まぐれを起こさなければ、交わることなんてなさそうなこの二人。一応、エリート校に通う天才たちではあるのだが。どうも、何かが何処かでどういう訳かオカシクなってしまったようで……。  「吸い込まれそうな彼女の青い瞳には、もう君しか映っていない!?」なんて適当な商売文句に興奮しているトランクス姿の残念な男によって、胃もたれしてもまだお釣りが返ってきてあり余るくらいに、想定外で面倒で面倒なことになるなんて。きっと後者の彼は思いもよらなかったでしょう。  絵に描いたような笑いあり、涙あり、恋愛あり?の、他愛ないキャンパスライフをただ送りたかった。そんな、運命に"翻弄"されてしまった2人の物語。さてさてどうなることやら……。 ※ただいま改装中です。もしお読みになられる際は、プロローグからアクセス権限が解除された話数までに留めておかれることをお勧めします。 ※改修しはじめましたが、現在プライベートとの兼ね合いにより定期更新がむずかしい状態にあります。ですが打ち止めとするつもりは毛頭ありませんので、あまり構えず気長にお付き合い頂けますと嬉しいです。 [Truth Release Code] ※No access rights

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

処理中です...