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番外編1 第1話 開発者 椎名ネネ
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鼎と桃香が出会う3ヶ月前…
ブラックエリアのさらに奥深く、そこには研究施設があった。プログラマーである椎名ネネが私財を投じて用意したブロックである。
『ううっ…ぎゃあああ!!』
実験室の中、精神を直接刺激されたユーザーが耐えきれずに、悲鳴をあげながら事切れた。ネネはため息をつきながら、アバター内のユーザーデータを消去した。
(また失敗ですか…まあいいでしょう)
ネネは実験が終わった後、抜け殻となったアバターも集めていた。自分が他のエリアで活動する時に、使用するためだ。
(今の設備のままじゃ…25年前に色々あったからな)
彼女はアナザーアースを開発したシステムエンジニアの1人である。アナザーアース完成当時の彼女はまだ15歳だった。
ーー
ネネは子供の頃からプログラミング能力に関して、異常なレベルで優れていた。親の意向もあり、飛び級制度を駆使した彼女は12歳の頃にはプログラマーとして働き始めていた。
(大人ばかりの世界でも、私の事を理解してくれる人はいないのね…)
彼女はプログラミング能力に長ける一方で、他者とコミュニケーションを取る事が難しかった。そのせいで、学校で同年代の女の子と友達になる事が出来なかった。
「メタバースの開発?いいよ、やっても」
ネネは他の6人のシステムエンジニアと共に、仮想現実「アナザーアース」の制作に協力した。どの人物も性格に癖のある人物で、友人としての関係などは形成されなかった。
(…悔しいけど、他の奴らの方が私より優秀だな)
アナザーアース制作の現場においては、他のプログラマーの方がネネより優れている場面が多かった。能力が同程度だとしても、やはり年齢によって経験の差は現れるものである。
補足しておくと、ネネはプログラミング能力の面に於いて、大半の大人よりも優れていた。アナザーアースの開発に関わったシステムエンジニアが特別だっただけで、有象無象のプログラマー達よりもはるかに優秀な人物だった。
ネネはアナザーアースの開発者達の中心になる事は無かったが、そつなく仕事をこなしていた。まだ12歳だったにもかかわらず、実力は他のシステムエンジニア達にも劣らなかったのだ。
そして2095年、仮想現実の進化系であるアナザーアースは完成した。開発者達は功績を認められて、多大な追加報酬を得ることが出来た。
しかしその後、システムアップデート案に関わる争いが発生した。7人の開発者がそれぞれ違う考えの下で、今後の方針を決めようとしたのだ。
特にネネが出した案は、一般ユーザーが使用できる機能に制限をかけるものだった。運営に携わるチームからも反対を受けたが、ネネにはある考えがあった。
「質の悪いユーザーが増えたら、折角のアナザーアースが汚れてしまうでしょう?私達が作った美しい世界なのに…」
アナザーアースの治安を保ちたいと言う気持ちは、他のチームメンバーも同じだった。悪質なユーザーによって、利用者が離れる事は避けたかった。
「ネネ、君の案を採用するのはやはり難しい」
他の開発者達も、ネネが提出した案には苦言を呈した。ユーザーに不自由な思いをさせると、他の既存のメタバースに逆戻りしてしまう可能性があるからだ。
「だったら私は開発チームから離れます。もう口出しするつもりは無いので、好きにしてください」
そう言ったネネは開発チームから脱退して、二度と姿を現さなかった。現実のネネのデータは既に改竄されていたので、誰も彼女の行方を追う事は出来なかった。
この時のネネは、まだ16歳だった。
ーー
その後も運営側の判断に納得できなかった開発チームのメンバーが、次々と離れていった。開発当時のプログラマーが居なくなったせいで、運営は新たなシステムエンジニアを探さなければいけなかった。
無事に代わりとなるプログラマーチームを作る事が出来たが、当時の開発チームの実力には程遠かった。運営側には当時のメンバーに連絡を取る手段が無かったのだ。
革新的なアップデートは出来ていないが、現在はアナザーアースの運営を滞りなく進めている状態だった。多くのユーザーは、開発当時のシステムエンジニアの事など知らない状態で利用している。
オープンから25年が経ち、アナザーアースの開発者達はそれぞれの思惑で活動していた。既に表舞台を去った者も多いが、プログラマーとしては健在だった。
ーー
(アナザーアースは既に停滞しつつある…)
現実のネネの体は既に40歳になっている…はずだった。現実のネネの事は彼女自身しか知らないので、本当に歳をとっているのかも分からない。
(私の実験の邪魔にならないからいいけど)
ネネは正体を悟られない様に、普段使いのアバターも頻繁に変更していた。今は小柄な少女のアバターを使用しているが、少し前は成人男性の姿のアバターを使っていた。
(この程度の量じゃダメだ。もっと多くのサンプルを集めないと…)
ネネは様々な手段を使って、ユーザーデータを集めていた。彼女の計画には、少しでも多くのユーザーの存在が必要なのだ。
(抜け殻も増えたけど…使い道はあるから処分しないで置くか)
抜け殻はアバターとは違い、神経に当たるものが存在しない。その為、ダメージを無視して行動できる場面が多いのだ。
(ユーザーが意識不明になってる事件…表沙汰になる事は少ないな)
運営もアナザーアースにログインしたまま、意識不明になっているユーザーの存在は既に知っている。しかし件数が多くない事を理由にして、対策をせずに放置しているのだ。
ーー
「ただいま戻りました」
ネネの研究室に入ってきたのは井上敦也、ネネの部下である男性だった。ネネは基本的に他人を信用していないので、人間の部下と言えるのは彼ぐらいだった。
「テロ組織の様子はどうだった?」
ネネは敦也に、アナザーアース内で活動している危険な組織の情報を調べさせていた。最近勢力を増している組織が、アナザーアースにログインした形跡を確認したのだ。
「現在はブラックエリアをテリトリーにしている様子です」
ブラックエリアはアナザーアースのアンダーグラウンドで、現実の犯罪者などが出入りしている危険なブロックである。運営は表に犯罪者が出てこないように、敢えて放置しているとの事だ。
「派手な事をされると面倒です。私が行きます」
ネネはテロ組織が活発化する前に、自ら対処する事に決めた。彼女はアバターを男性に変更して、敦也と共にブラックエリアにあるテロ組織のテリトリーへ向かった。
ブラックエリアのさらに奥深く、そこには研究施設があった。プログラマーである椎名ネネが私財を投じて用意したブロックである。
『ううっ…ぎゃあああ!!』
実験室の中、精神を直接刺激されたユーザーが耐えきれずに、悲鳴をあげながら事切れた。ネネはため息をつきながら、アバター内のユーザーデータを消去した。
(また失敗ですか…まあいいでしょう)
ネネは実験が終わった後、抜け殻となったアバターも集めていた。自分が他のエリアで活動する時に、使用するためだ。
(今の設備のままじゃ…25年前に色々あったからな)
彼女はアナザーアースを開発したシステムエンジニアの1人である。アナザーアース完成当時の彼女はまだ15歳だった。
ーー
ネネは子供の頃からプログラミング能力に関して、異常なレベルで優れていた。親の意向もあり、飛び級制度を駆使した彼女は12歳の頃にはプログラマーとして働き始めていた。
(大人ばかりの世界でも、私の事を理解してくれる人はいないのね…)
彼女はプログラミング能力に長ける一方で、他者とコミュニケーションを取る事が難しかった。そのせいで、学校で同年代の女の子と友達になる事が出来なかった。
「メタバースの開発?いいよ、やっても」
ネネは他の6人のシステムエンジニアと共に、仮想現実「アナザーアース」の制作に協力した。どの人物も性格に癖のある人物で、友人としての関係などは形成されなかった。
(…悔しいけど、他の奴らの方が私より優秀だな)
アナザーアース制作の現場においては、他のプログラマーの方がネネより優れている場面が多かった。能力が同程度だとしても、やはり年齢によって経験の差は現れるものである。
補足しておくと、ネネはプログラミング能力の面に於いて、大半の大人よりも優れていた。アナザーアースの開発に関わったシステムエンジニアが特別だっただけで、有象無象のプログラマー達よりもはるかに優秀な人物だった。
ネネはアナザーアースの開発者達の中心になる事は無かったが、そつなく仕事をこなしていた。まだ12歳だったにもかかわらず、実力は他のシステムエンジニア達にも劣らなかったのだ。
そして2095年、仮想現実の進化系であるアナザーアースは完成した。開発者達は功績を認められて、多大な追加報酬を得ることが出来た。
しかしその後、システムアップデート案に関わる争いが発生した。7人の開発者がそれぞれ違う考えの下で、今後の方針を決めようとしたのだ。
特にネネが出した案は、一般ユーザーが使用できる機能に制限をかけるものだった。運営に携わるチームからも反対を受けたが、ネネにはある考えがあった。
「質の悪いユーザーが増えたら、折角のアナザーアースが汚れてしまうでしょう?私達が作った美しい世界なのに…」
アナザーアースの治安を保ちたいと言う気持ちは、他のチームメンバーも同じだった。悪質なユーザーによって、利用者が離れる事は避けたかった。
「ネネ、君の案を採用するのはやはり難しい」
他の開発者達も、ネネが提出した案には苦言を呈した。ユーザーに不自由な思いをさせると、他の既存のメタバースに逆戻りしてしまう可能性があるからだ。
「だったら私は開発チームから離れます。もう口出しするつもりは無いので、好きにしてください」
そう言ったネネは開発チームから脱退して、二度と姿を現さなかった。現実のネネのデータは既に改竄されていたので、誰も彼女の行方を追う事は出来なかった。
この時のネネは、まだ16歳だった。
ーー
その後も運営側の判断に納得できなかった開発チームのメンバーが、次々と離れていった。開発当時のプログラマーが居なくなったせいで、運営は新たなシステムエンジニアを探さなければいけなかった。
無事に代わりとなるプログラマーチームを作る事が出来たが、当時の開発チームの実力には程遠かった。運営側には当時のメンバーに連絡を取る手段が無かったのだ。
革新的なアップデートは出来ていないが、現在はアナザーアースの運営を滞りなく進めている状態だった。多くのユーザーは、開発当時のシステムエンジニアの事など知らない状態で利用している。
オープンから25年が経ち、アナザーアースの開発者達はそれぞれの思惑で活動していた。既に表舞台を去った者も多いが、プログラマーとしては健在だった。
ーー
(アナザーアースは既に停滞しつつある…)
現実のネネの体は既に40歳になっている…はずだった。現実のネネの事は彼女自身しか知らないので、本当に歳をとっているのかも分からない。
(私の実験の邪魔にならないからいいけど)
ネネは正体を悟られない様に、普段使いのアバターも頻繁に変更していた。今は小柄な少女のアバターを使用しているが、少し前は成人男性の姿のアバターを使っていた。
(この程度の量じゃダメだ。もっと多くのサンプルを集めないと…)
ネネは様々な手段を使って、ユーザーデータを集めていた。彼女の計画には、少しでも多くのユーザーの存在が必要なのだ。
(抜け殻も増えたけど…使い道はあるから処分しないで置くか)
抜け殻はアバターとは違い、神経に当たるものが存在しない。その為、ダメージを無視して行動できる場面が多いのだ。
(ユーザーが意識不明になってる事件…表沙汰になる事は少ないな)
運営もアナザーアースにログインしたまま、意識不明になっているユーザーの存在は既に知っている。しかし件数が多くない事を理由にして、対策をせずに放置しているのだ。
ーー
「ただいま戻りました」
ネネの研究室に入ってきたのは井上敦也、ネネの部下である男性だった。ネネは基本的に他人を信用していないので、人間の部下と言えるのは彼ぐらいだった。
「テロ組織の様子はどうだった?」
ネネは敦也に、アナザーアース内で活動している危険な組織の情報を調べさせていた。最近勢力を増している組織が、アナザーアースにログインした形跡を確認したのだ。
「現在はブラックエリアをテリトリーにしている様子です」
ブラックエリアはアナザーアースのアンダーグラウンドで、現実の犯罪者などが出入りしている危険なブロックである。運営は表に犯罪者が出てこないように、敢えて放置しているとの事だ。
「派手な事をされると面倒です。私が行きます」
ネネはテロ組織が活発化する前に、自ら対処する事に決めた。彼女はアバターを男性に変更して、敦也と共にブラックエリアにあるテロ組織のテリトリーへ向かった。
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