Welcome to Another Earth

八神獅童

文字の大きさ
上 下
20 / 77

第2章 第11話 テロ組織の襲撃 少女の名はナガレ

しおりを挟む
「車が爆発したぞー‼︎」

「これはテロだ!間違いない!」

「テロ…?!早く逃げないと!」

「おいなんだ…やめろ押すな!」

ーー

「パニックだ…色々言いたい事はあるけど、今は騒ぎを止めないと!」

鼎達は爆発が発生した場所の近くのカフェにいたが、咄嗟に遮蔽物の陰に隠れたので爆風を受ける事は無かった。鼎はすぐに犯人達を探そうとしたが、彼らは向こうから姿を現した。

「かなりの重装備…あれは本格的なテロ組織だね。アンタは本当に知らないの?」

桃香は研究施設の管理人を疑っていたが、彼は本当に困っている様子になっていた。管理人は素早く仮想空間の変化を計測して、苦々しい顔になっていた。

「私は知りませんが…今の爆発プログラムによって、この辺りのエリアは汚染状態になりました。あなた方も、早く離れた方が良いと思います」

「嫌だね。逃げる前にアンタをあの連中の前に突き出してやる」

桃香は管理人を拘束しようとした…が、管理人はうまく体を逸らして、桃香から距離を空けた。逃げようとした管理人だったが、偵察していたテロ組織の一員と目が合ってしまった。

ーー

数分前…

テロ組織のメンバー達は、防護服の上からアーマーを身につけていた。防護服は見た目だけでは無く、有害なプログラムからアバターを守る機能が備わっている物だった。

「アナザーアースの開発者の1人が、このストリートの何処かに潜んでいる筈だ。徹底的に調べろ」

「はい!」

「みんな、頑張ってね~」

「ナガレ、他の者達だけでなく君も頑張らないといけない…分かっているな?」

テロ組織はすぐにアナザーアースの開発者を探し始めた。パニックに陥った群衆の中で、邪魔になりそうなアバターには容赦なく攻撃を加えた。

「まったく、わざわざこんな人が多い時間にやらなくても…って」

愚痴を言いながら捜索していた新人だったが、頭が透き通ったスーツ姿の男が視界に入った。スーツ姿の男と目が合った瞬間に、新人はナガレにメッセージを送信した。

ーー

「離して下さい!早く逃げないとマズイ…」

「見つけた…ネネ、今回は逃がさないよ!」

困惑している隙を突かれて、腕を掴まれた管理人の前に降り立ったのは、テロ組織の一員でナガレと呼ばれていた少女だった。普段は穏やかなナガレだったが管理人の事をネネと呼び、明確な敵意を向けていた。

「ネネ…?こいつの名前?」

「知りませんよ、人違いではないでしょうか!」

鼎は管理人に確認しようとしたが、彼は必死に知らないフリをしていた。しかし発言がわざとらし過ぎたので、桃香は管理人がネネという人物で間違い無いと判断した。

「いやそんな変なアバター使ってるからいけないんでしょ。人違いならちゃんとあの子に説明したら?」

「いや、話し合いでどうにかなる状況じゃないです。離してください!」

管理人は桃香を乱暴に振り払って逃げ出そうとしたが、彼の前に向けられたのは浮遊する6丁の銃だった。ナガレとしても、彼をこのまま逃すつもりなど無かった。

「どこに行こうとしてるの?私達について来てもらうよ!」

「先程は遅れを取ってしまいましたが、もう止められませんよ」

桃香と距離を取った管理人のアバターは、再び特殊機能を使える様になった。今なら銃弾を喰らっても、ほとんどダメージは無いだろう。

「くっ…」ダダダダッ!

「リロードはかなり早いみたいですが、やはり何発撃っても抜け殻相手には効果は無いでしょうね」

管理人は普段は他者が放棄したアバターである"抜け殻"を用いて活動している。現実世界における死体同然の抜け殻に対しては、打撃はほとんど意味を成さないのだ。

「では、私は帰らせてもらいましょう。貴方も暴れるのは程々にした方がいいと思いますよ」

「…今回は、そう言われて素直に退く訳無いんだよね」

管理人は余裕を取り戻していたが、ナガレは直ぐにテロ組織のメンバーに指示を出した。すぐに管理人の周囲に向かって、組織のメンバーが集まり始めた。

「おっと…無理矢理取り押さえるつもりですね」

「死体である事以外に、特異性は無いんでしょ?」

管理人は驚くこともなく、冷静に周囲を見回してテロ組織のメンバーの数を確認していた。向こうが動かないと判断したナガレはデバイスで指示を出し、組織のメンバーが一斉に管理人を取り押さえようとした。

「その程度で私を止められると思うな!」

管理人が力任せにテロ組織の前衛を吹っ飛ばすと、即座に後衛が発砲する。しかし銃弾を喰らっても、管理人は気にしていなかった。

「やっぱり効かない…!」

「甘かったのは貴方の方ですね。私はこれで失礼させて貰いますよ」

管理人はそう言うと素早く跳躍して、ビルの上へと去っていった。ナガレ達はすぐには後を追わず、他のエリアで待機しているメンバーにメッセージを送信した。

「まだ近くに隠れているはず!邪魔な建物は破壊しても構わない、何としても拘束するよ!」

「ちょっと待て、ストリートを更地にするのは論外!」

ーー

管理人…ネネを探そうとするナガレの前に立ち塞がったのは、桃香と鼎だった。ナガレにとっては彼女達はよく知らない邪魔者でしかなかった。

(猫耳の子供とこれと言って特徴のない女…私1人でも対処出来る)

ナガレは複数の砲塔を召喚して、一斉に弾丸を射出した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...