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序章 第2話 ブラックエリアの賭場
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九重鼎は仮想現実"アナザーアース"で活動している探偵である。インターネットや仮想現実で発生したトラブルの際に、依頼者の代わりに調査をするのだ。
(とても"名探偵"とは言えないけど…)
鼎は推理小説に登場する名探偵に憧れて、探偵になりたいと思った。実際にやる事は推理小説とは違ったが、バイタリティがある彼女には向いている仕事だった。
「今回は賭場に怪しいものが運び込まれた事件ですよね」
紺色の髪を肩の辺りまで伸ばした16歳の少女、水瀬愛莉は鼎の助手を自称している。以前鼎が、ある事件に巻き込まれて、多額の金を要求されてる困っていた彼女を助けて以来の付き合いだった。
最初は何者か分からない私立探偵である鼎の事をあまり信用していなかったが、彼女は金を請求する男から愛理を引き離す事に成功して、結果的に事件も明るみになり解決した。愛莉は自分を助けてくれた鼎の事を尊敬して、勝手について行っているのだ。
「うん、賭場にアバターの抜け殻が大量に運び込まれたらしいんだ」
どんな世界にもアンダーグラウンドというものは存在している。アナザーアースにおいては、ブラックエリアがそれだった。
ブラックエリアは数多くの犯罪組織のテリトリーがある危険地帯である。表には出回らない物品の取り引きが行われ、現実では大っぴらに商売できない者達の店もある。
「アバターの抜け殻って…」
「大半が女性型のアバターだね」
「女性型アバターの抜け殻の取り引き…」
「碌でもない奴らが取り引きしてるんでしょうね」
切実な理由でアバターの抜け殻を求める人もいるが、賭場に女性型アバターを求めてやって来るのは、猥雑な目的で求める男ばかりである。アバターの抜け殻を、ストレスの捌け口として使うのだ。
「どうしたのアイリ?」
「いや…あの女の子、こっちにずっと視線を向けてる気がして」
愛莉が気にしている小柄な女の子は濃いピンク色の髪で、猫耳がついていた。鼎も確かに、ニヤニヤしながらこちらを見ているように感じられた。
「ブラックエリアが云々の話が聞こえてきて、興味が湧いたんでしょ。気にしない気にしない」
「はぁ…そういうものでしょうか」
「改めて…今回の依頼は賭場で怪しい取り引きが行われていないかどうかのチェックってところね」
「怪しい取り引きって…ブラックエリアはそんなの当たり前って分からない方なんですかね?」
「それでも受けた方がいいの。小さな仕事もやっておいた方が、信頼獲得も早くなるし」
「まあそうですけど…どうやって調べるんです?大した知識も無いのに立ち入るのは危険ですよ」
鼎達はブラックエリアについて、博識という訳ではない。安易に立ち入れば、危険な目に遭う事は分かっていた。
「賭場に詳しい人に捜査協力を依頼したいけど…」
「それなら、早速探しましょう!まずはこのカフェに来てる客から聞いてみます!」
「ちょっとま…いいか」
ーー
「賭場?お前らみたいな綺麗な顔の女が興味本位で立ち入る場所じゃねえよ。やめときな」
「ちょっと待ってください!私はちゃんとした探偵の助手で…」
「そう簡単には協力してくれる人なんて見つからないよ。後、アイリの場合"自称"助手でしょ」
私立探偵に捜査に協力する人間というのは、ほとんどいない。いたとしても、かなりの報酬を求めてくる人が多い。
「協力する見返りとして、依頼報酬からかなり持ってかれるんだよね…だから、お金が無くて依頼も少なくて、大変な時期が長いんだよ」
だが、今回のケースは協力者がいないとかなり時間がかかってしまう。法外な報酬を求められない限りは、協力者は誰でもいいのだが…
「ちょっとー…なんでボクには声をかけないのさ~」
「え…あなたは…」
鼎に声をかけたのは、先程彼女達に怪しい視線を向けていた、猫耳の少女だった。
(とても"名探偵"とは言えないけど…)
鼎は推理小説に登場する名探偵に憧れて、探偵になりたいと思った。実際にやる事は推理小説とは違ったが、バイタリティがある彼女には向いている仕事だった。
「今回は賭場に怪しいものが運び込まれた事件ですよね」
紺色の髪を肩の辺りまで伸ばした16歳の少女、水瀬愛莉は鼎の助手を自称している。以前鼎が、ある事件に巻き込まれて、多額の金を要求されてる困っていた彼女を助けて以来の付き合いだった。
最初は何者か分からない私立探偵である鼎の事をあまり信用していなかったが、彼女は金を請求する男から愛理を引き離す事に成功して、結果的に事件も明るみになり解決した。愛莉は自分を助けてくれた鼎の事を尊敬して、勝手について行っているのだ。
「うん、賭場にアバターの抜け殻が大量に運び込まれたらしいんだ」
どんな世界にもアンダーグラウンドというものは存在している。アナザーアースにおいては、ブラックエリアがそれだった。
ブラックエリアは数多くの犯罪組織のテリトリーがある危険地帯である。表には出回らない物品の取り引きが行われ、現実では大っぴらに商売できない者達の店もある。
「アバターの抜け殻って…」
「大半が女性型のアバターだね」
「女性型アバターの抜け殻の取り引き…」
「碌でもない奴らが取り引きしてるんでしょうね」
切実な理由でアバターの抜け殻を求める人もいるが、賭場に女性型アバターを求めてやって来るのは、猥雑な目的で求める男ばかりである。アバターの抜け殻を、ストレスの捌け口として使うのだ。
「どうしたのアイリ?」
「いや…あの女の子、こっちにずっと視線を向けてる気がして」
愛莉が気にしている小柄な女の子は濃いピンク色の髪で、猫耳がついていた。鼎も確かに、ニヤニヤしながらこちらを見ているように感じられた。
「ブラックエリアが云々の話が聞こえてきて、興味が湧いたんでしょ。気にしない気にしない」
「はぁ…そういうものでしょうか」
「改めて…今回の依頼は賭場で怪しい取り引きが行われていないかどうかのチェックってところね」
「怪しい取り引きって…ブラックエリアはそんなの当たり前って分からない方なんですかね?」
「それでも受けた方がいいの。小さな仕事もやっておいた方が、信頼獲得も早くなるし」
「まあそうですけど…どうやって調べるんです?大した知識も無いのに立ち入るのは危険ですよ」
鼎達はブラックエリアについて、博識という訳ではない。安易に立ち入れば、危険な目に遭う事は分かっていた。
「賭場に詳しい人に捜査協力を依頼したいけど…」
「それなら、早速探しましょう!まずはこのカフェに来てる客から聞いてみます!」
「ちょっとま…いいか」
ーー
「賭場?お前らみたいな綺麗な顔の女が興味本位で立ち入る場所じゃねえよ。やめときな」
「ちょっと待ってください!私はちゃんとした探偵の助手で…」
「そう簡単には協力してくれる人なんて見つからないよ。後、アイリの場合"自称"助手でしょ」
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「協力する見返りとして、依頼報酬からかなり持ってかれるんだよね…だから、お金が無くて依頼も少なくて、大変な時期が長いんだよ」
だが、今回のケースは協力者がいないとかなり時間がかかってしまう。法外な報酬を求められない限りは、協力者は誰でもいいのだが…
「ちょっとー…なんでボクには声をかけないのさ~」
「え…あなたは…」
鼎に声をかけたのは、先程彼女達に怪しい視線を向けていた、猫耳の少女だった。
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