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旅立ちの日 エリア003へ
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「エドガー。お前が向こうで住めるように許可をもらえたぞ」
「兄さん…ありがとう」
ライネスは以前世話になっていたエリア003の店に俺が住めるように頼んでいたが、許可を貰えたとの事だった。今回については、兄に対して心の底から感謝していた。
「向こうの店は洋食店なんだっけ」
「ああ、まあそんなに忙しい店じゃ無いし、大丈夫だろ」
俺は料理は最低限のレベルはできるし、配膳に関してもやれない事は無い。勿論、俺には繁盛しているファミレスの店員の様に食器を運ぶのは不可能だったが。
「向こうにはいつ行くんだ。それも連絡しとかないと…」
「8010年11月30日がいいかな」
年末の忙しくなる前に移住したかったので、12月になる直前に移住したかった。勿論、自分の希望が通るとも限らない事は分かっているが。
「向こうの部屋からは街の景色を見渡せるんだよね」
「ああ、それなりにいい景色だぞ」
今住んでいる家の立地が悪い訳では無いが、窓からの景色は普通だった。その為、街の景色を一望できる部屋に住む事が楽しみだった。
「高校の卒業は大丈夫だから…後は予定通りに移住できれば…」
「連絡はしてみるが…向こうの都合にもよるからな」
俺は高校の残りの授業は通信制に変更してもらうように、手続きをしていた。別に卒業式に出る事は強要され無いので、高校に行く必要になる可能性は低くなる。
「出発の予定日まで、まだ時間はあるだろう。それまでどうするんだ?」
「色んな人に会っておくよ」
エリア092で暮らす人々としばらく会えなくなる事は、もう決まっている。親しい仲の人は少ないが、だからこそ会っておきたかったのだ。
「別れの挨拶をして回るのか。ありきたりって感じだな」
「…それ以外に思いつかない」
少し前の俺だったら、知り合いに挨拶するなんて思いつきもしなかっただろう。今の俺は、人との繋がりを少しずつではあるが、意識し始めていた。
「知り合いとの挨拶もいいけど、俺と一緒にもう一回くらいゲームするのもいいと思うぞ」
「それもいいね」
エリア092から向こうへは、自分の携帯ゲーム機だけを持って行くことになっていた。だから兄であるライネスと対戦ゲームをするのは、当分の間はできなくなるのだ。
「心残りの無いようにな」
「分かってる」
別れの挨拶をするだけで名残惜しくなってしまうかもしれないが、それでも後悔はしたくなかった。俺は移住予定日までに、会っておきたい人には挨拶に行く事にした。
「えっ…お前引っ越すの?」
「うん」
8010年11月23日の午後、俺は同じ文芸部の部員であったダニエルに会いに行った。やはりと言うか、ダニエルは驚いた様子を見せていた。
「この話、クラスの連中には伝えたのか」
「いや、伝えたところで意味ないだろうし」
同じクラスの人間には、話したいとは思わなかった。特に親しい人間もいないし、引っ越すと伝えても聞き流されるだけだからである。
「向こうのエリアの学校に通うのか?」
「いや、洋食店に住み込みで働く事になった」
「…お前に接客ができるのか?」
「…そんなに忙しい店じゃ無いと聞いている」
俺がどんな人間か知っているダニエルは不安そうだった。しかし、今の俺は何とか上手くやっていけるのでは無いかと考えていた。楽観的に考えているところは、ダニエルに似てきたのかも知れない。
「エリア003って…でかいソーラーパネルがあるんだっけ」
「そんだけ知ってればいいと思う」
ダニエルはエリア003の事はあまり知らないようだ。俺はライネスから聞いた003の事について、いくつか話した。
「マジか…滅茶苦茶ブラックじゃん」
「うん…僕がやる仕事はそんな事無いだろうけど」
ライネスから聞いたソーラーパネルのメンテナンス業務について話したら、ダニエルも相当驚いていた。大型ソーラーパネルの維持は、全て機械によって行われていると思っていたらしい。
「そう言えば向こうってアニメの放送してんのかな…」
「見れない作品もあると思う」
現在のアニメーション作品の多くは、エリア017で製作されている。漫画のアニメ化や、ゲームにおけるアニメーションのシーンの製作なども、017の企業に委託される場合が多い。
「ダニエルは進学するんだよな」
「ああ、取り敢えずな」
ダニエルはこのまま大学に進学すると決めていた。特にやりたい事がある訳では無く、専門学校という選択肢も外していたらしい。
「アニメーターを目指すのは…」
「アニメーターはブラック環境らしいからヤダ」
ダニエルは即答していたが、まぁそう考えるのも仕方ないとは思う。未だに環境の改善が見られない事は、様々なエリアで深刻視されている。
「でも…ゲーム関係の仕事を目指すのもありかな…」
俺は、ダニエルがゲームもそれなりに遊んでいる事を知っていた。特別数多くの作品をプレイしている訳では無かったが、ゲームが好きなのは明らかだった。
「…シナリオライターでも目指すのか?」
「お前、本気で小説家目指してんだろ?俺もそういう仕事を考えてみようと思ったんだ」
ダニエルは以前とは打って変わって、ゲームのシナリオライターになる事も考えていた。俺は、そこまで特定の作品に思い入れの無い彼だからこそ、いい物語を書けるのでは無いかと思っている。
「じゃあ、向こうでも体を壊さない程度に頑張れよ」
「ああ、じゃあな」
ダニエルと俺は別れの挨拶をして、背中合わせに歩き始めた。所詮、高校時代の友人だから、もう会う事は無いのかも知れない。それでもお互いに、振り返る事は無かった。
8010年11月24日、俺は朝早くに家を出て、OLDstarに来ていた。フードメニューの中に気になる物があって、朝食に食べたいと思っていたのだ。
「カモミールティーとソーセージ&スクランブルエッグサンドを一つで」
俺は頼んでいる物が来る間にも、小説を書き進める。敵である小人族の描写をどうするかについて悩んでいるのだ。
(ここで、敵側の心理描写を入れるのは不自然過ぎる…やはり死亡した後にするしか無いか)
俺は未だに書くのが苦手な、戦闘シーンを書き進めていた。小人族の軍の指揮官が倒されるシーンを書き終えたところに、注文していたカモミールティーとエッグサンドが来た。
(キリもいいし、食べるか)
俺はカモミールティーを一口飲んだ後、エッグサンドを食べ始めた。エッグサンドに挟まっているソーセージパティはしっかりとした食感で、トマトソースやチェダーチーズの味と合っていて、中々に美味しかった。
(さて…負けた側の回想を…)
俺は敵である小人族を悪人として描くのは避ける様にしていた。敵の方にも非道を行う理由があるとしているのだが、それで読者から気に入られるかどうかは分からない。
古の時代の小人族は多種族からの迫害を受けていて、自分達の身を守る事に必死だった。だからこそ他種族の動きに敏感で、いつ自分達の国が侵略されるか分からないと考えている。
(とは言え、これまでの小人族の仕打ちを見てきた読者がどう思うか…)
多くの読者が、既に小人族は悪人として認識している可能性もあり、今更同情を誘うのかと言われる可能性もある。いっその事本編に組み込まず、外伝で描くという案も考えられるが…
(いや、読者がどんな感想を抱いても自由だし本編で描こう)
俺は本編内で、敵役の小人族の描写を書き加える事にした。カモミールティーにはリラックス効果があるらしく、何となく落ち着く事ができた。
(さて…そろそろ帰るか)
エッグサンドを食べ終わり、カモミールティーも飲み終えた俺は、会計を済ませてOLDstarから出て行った。雲ひとつ無い空の下は寒く、冬がすぐ側まで迫っている事を実感させられた。
「エドガー、ゲームでもやらないか?」
「…仕事はいいの?」
家に帰って来て休んでいる俺に、ライネスはゲームをやらないかと声をかけた。今のライネスは、在宅勤務の最中のはずなのだが…
「いや、別にやらなくていい仕事なんだ。そういう仕事を押し付けられる事もあるんだよ」
「なるほどね…」
俺はゲーム機を起動させて、コントローラーを持って来た。俺とライネスは、2人で対戦する準備を始めていた。
「お前は前と同じキャラか?」
「うん」
ライネスも以前と同じで、リュウジを使用するつもりのようだった。俺も前と同じキャラを使って、ライネスと勝負する事にした。
今回の俺は、ライネスと互角に戦う事ができていた。ライネスが手を抜いている訳では無く、俺の実力が上がっていたのだ。
「兄さん、調子悪いの?」
「ああ…そんなところだ」
たが、今日のライネスは明らかに本調子では無かった。俺は兄に何か思うところがあるのか、気になっていた。
「何というか…流石に寂しくなるなって…」
「兄さん隙だらけ」
ライネスは心ここに在らずといった感じだったので、容赦なくライフポイントをゼロにした。ライネスは唖然とした様子で、戦績確認画面を見ていた。
「お前…俺が考え事してる隙を突きやがって…」
「対戦中に考え事する兄さんが悪い」
隙を突かれて憤ったライネスは、ようやく本気を出し始めた。やはり本気のライネスのコマンド入力のキレはかなりの物で、今度は俺が負けてしまった。
「カエデさんとの戦いも経験したんだ…今度は俺が勝つ」
「カエデさんと戦ったのは俺も同じだ!」
今回の対戦はこの前とは違い、俺が一方的に負ける回数が減っていた。カエデの操作スキルを見て、少しでも自分のものにしようと努力したのだ。
「よしっ、俺の勝ちだね」
「こっちだって負けっぱなしじゃねぇぞ…」
対戦を繰り返す内に、俺が勝った試合も増えていった。連敗したライネスは俺に勝つために、今までとは違う工夫をし始めた。
「なっ…」
ライネスが操作するリュウジは、短いコマンドによる速攻を繰り出して来た。本来のキャラクターのセオリーに従った動きでは無いが、こちらも戦略を組み直す必要が出てきた。
その後も何回も戦ったが、勝った回数が最終的に多かったのは俺の方だった。やはりと言うか、ライネスはかなり悔しそうにしていた。
「ライネスは大丈夫なの?仕事に戻らなくて」
「げっ…やばっ」
ライネスに声をかけたのは母さんで、兄は急いでパソコンの前へと戻って行った。母さんは俺とも話したい様子だったので、素直に聞いてみる事にした。
「まさかあなたが一人暮らしを始めるなんてね…」
「俺は、あなたの事は好きじゃ無かった」
俺は正直な気持ちを母さんに伝えたが、やはりショックを受けていた。たが、ここで言っておかないといけない事だったのだ。
「どうして…」
「中学まではやたら成績の事気にしてたのに、高校生になった途端に変わったから。俺の事が期待外れだった?」
俺は思いの丈を母さんにぶつけたが、遮られる事は無かった。母さんは静かに俺の言葉を聞いている様子だった。
「私たちの…私のせいで、あなたは傷ついた?」
「うん。気づかなかったんだね」
母さんは、自分の育て方について反省しようとしているようだ。だが、今更白々しい謝罪を受けるつもりなど、俺には無かった。
「私は、結局分からないままね…」
「そうなんだ」
子育てのやり方で正しいものが何なのか、結局母さんには分からなかったようだ。勿論、親になった事のない子供である俺に聞かれても、分かるわけが無いのだが。
「でも、あなたの事が嫌いな訳でも無い」
「エドガー…」
嫌いじゃないというのも、俺の正直な気持ちの一つだった。母さんは俺の言う事を、不安そうにしながら聞いていた。
「ただ…あなたの事を好きになる事も無いと思う。これはどっちかが悪いとか、そう言う話でもない…家族というものが難しいってだけ」
「そう、ね…そう、かもね」
母さんは俺の言葉を聞いて、度々頷いているみたいだった。母さんなりに、俺の言葉を噛みしめているのだろう。
「父さんと話したい事は…」
「話したい事は無い」
父さんはいつからか俺に対して、明らかに無関心になっていった。俺も父さんの事は無意識のうちに、避ける様になっていった。
「辛い事があったら、誰かに言ってね」
「それくらい分かってる」
俺はもう1人で抱え込まずに、兄であるライネスや爺ちゃんや婆ちゃんに相談すると決めていた。とは言えその中に母さんが含まれているかと言うと、微妙なところではあるが。
「俺は自分の生き方を決めたから」
母さんは、今度は何かを言おうとする事は無かった。俺は自分なりに小説家を目指しながら生きていくと決めたのだ。
この日の夜、出張から帰って来た父親と廊下ですれ違った。俺は声をかけるつもりは無かったが、向こうから声をかけて来た。
「エリア003に引っ越すらしいな」
「うん」
俺の父親…ケンジ・メイソンに聞かれたので、素直に答えた。しかし父親はそのまま会話を続けるつもりは無かったようだ。
「そうか」
興味が無さそうな父親はさっさと歩いて、部屋へと戻って行った。いつもの事なのだが、俺はその様子が気に入らなかった。
(なんだか、筆が乗らない…)
俺は父親の態度にイライラしているせいで、小説を書き進める事ができないでいた。勿論、家庭環境としてはマシな方ではあるのだろうが…
「いつからだったかな…父さん、家族に対してあんな態度を取るようになって」
母さんはそう言ったが俺は、なぜこの人はあんな人間と結婚したんだと思っていた。父親も高校入学までは俺の成績を気にしているような素振りを見せていた。
「あんな風には、なりたく無い…」
俺からすれば、父親は社畜同然の存在に成り果てた男だった。朝から晩まで忙しそうに働いて疲れ果てている様子には、見てる方がうんざりさせられた。
(そう言えば013の出身なんだよな…)
父親がエリア013の出身である事は、俺も知っていた。エリア013で生まれ育った人間が皆あんな感じでは無いのは、俺はカエデを見て知っているのだが…
エドガーの父親であるケンジ・メイソン…013風に旧姓を言えば、佐藤健二はエリア013における中流階級の出身だった。ケンジの家庭は特別貧しい訳では無かったが、親からの愛を十分に受ける事はできなかった。
「おい…誰のおかげでカタギの連中が生きていけると思ってんだ?」
「すみません…今月分です」
ヤクザによって重税を課されて、金を奪われているのはケンジの家も同じだった。ケンジは一度歯向かおうとしたが、結局睨まれただけで無意味に終わった。
「あの人達に逆らうなんて…彼らのお陰で、抗争に巻き込まれずに暮らせているのよ」
「分かってるけど…」
ヤクザを恐れている母親は、ケンジの事を叱るだけだった。常に何かに怯えているように見える父親も、同意見みたいだった。
「ケンジ!エリア092に行くというのは本当なのか?!」
「私達を見捨てて逃げて行くの?!」
高校を卒業したケンジは一人でエリア092に引っ越して、そこの大学に進学した。エリア092でこれから生きていくと決めたケンジは、092の一般企業に就職した。
「エドガーの父さんって、そういう人なんだ。私も013で育ったから、そういう人はいっぱい見てきたよ」
「ケンジはヤクザにずっと支配されている土地で生まれ育った…逆らう事自体が苦手なのかもな」
8010年11月26日の昼、俺はまた爺ちゃんと一緒に喫茶店に来ていた。そこには、待ち合わせをしていたジェームズさん達だけで無く、カエデも来ていた。
「でもカエデさんは、俺の父さんとは…」
「私は少し特別なのかもしれないね」
エリア013では犯罪の被害に遭っても、犯人がヤクザの関係者なら泣き寝入りする事になる。恐怖を以って被害者の声を止める、恐ろしい社会なのだ。
「別のエリアの話か?なら俺の武勇伝を聞かせてやるよ」
「エリア021の話か?」
エリア021と言えば、既に滅んで稼働を停止したエリアのはずだ。ポールさんがどれほど昔の話をするのか、俺は興味を持ち始めていた。
「ちょっと待ってくれ。先にカレーを食べときたい」
ポールさんが食べている物と同じカレーライスを、俺は今回も食べていた。そこまで特徴的な味では無いからこそ、飽きる気配が無いのだ。
「7930年…あの頃はエリア間の戦争も起きていた時期だったな…」
「…その時のゴタゴタで、エリア013の頂点はヤクザのものになった」
俺はその時代の歴史については、よく知っていた。数学は苦手だったが、歴史について学ぶ事は嫌いでは無かった。
「カレーも食い終わったし、あの時代について話すか…」
俺もカレーライスを食べ終わっていたので、ポールさんの話を聞く事にした。実際に戦時中を経験している人の話を聞いた事は、あまり無かったのだ。
7930年頃のエリア021は、他のエリアへの攻撃を行い始めていた。別のエリアの資源を手に入れる為の、侵略行為だった。
「遂に092にも空爆が…」
「ハーマンは無事なのかしら…」
その時代の大戦には092を含む、多くのエリアが巻き込まれる事になった。巻き込まれなかったエリアは、中立のエリアである017や存在感の薄い112くらいしか無かった。
「ハーマンは092で暮らしてるジョンの家にいる…少なくとも今すぐ帰って来れる状況じゃ無い」
ハーマンの両親は経済的な事情で、エリア021で暮らしている父親の弟で、息子にとっては叔父に当たる、ジョンの家にハーマンを預けていた。ジョンは信用に当たる人物だったが、エリア021の上層部を信頼する事はできなかった。
7944年、ハーマンは16歳になってエリア021にある高校に通い始めていた。ハーマンはそこでジェームズ達という、友人を得る事ができていた。
「ジェームズもポールも、少しは落ち着けよ」
「早くしろよ!新作のゲームが売り切れちまうだろ!」
ハーマンはジェームズやポール、そしてハワードと一緒にゲームをしたりしながら遊ぶ毎日を過ごしていた。戦時下ではあったが、楽しみを見つけて生きていく事ができていた。
「戦争は、膠着状態になっているらしい。いつ終わるんだろうな…」
「その内、向こうが降伏するだろ。なぁ、ジェームズ」
「ああ…そうだな」
ハワードやポールが知らず、ジェームズだけが知っている事実があった。戦況は膠着状態になっておらず、エリア021が不利な状況になっているという事だった。
ジェームズの両親は軍属の人間だった為に、ジェームズを戦況を知る事が出来た。今回の戦争に関するある事実を知ったジェームズは、ハーマン達に打ち明ける事にした。
「このままじゃ、021は戦争に負ける。どんな報復が行われるか分からない」
「何だって…?!」
ジェームズは戦況の悪化を、ハーマン達に伝えた。当然ながらハーマン達は動揺して、この後何が起こる可能性があるのかを聞いた。
「他のエリアの軍隊が021に乗り込んでくるかも知れない。そうしたらこのエリアで暮らしている人々にどんな被害が出るか…」
「どうすればいい…どこに逃げればいい?!教えてくれ‼︎」
ジェームズの話を聞いたポールは、すぐ彼に詰め寄ってどうすればいいか聞いた。ジェームズは落ち着くように言ってから、説明を始めた。
「俺が伯父さんに頼んで、別のエリアへの移動の許可をもらう。たが難民の大量発生を防ぐ為にも、俺達と家族の分の許可しか下りないだろう…」
「俺の叔父の説得は無理だが…両親ならエリア092で暮らしている」
「そこに行こう!ハーマンの両親なら、きっと助けてくれるはずだ!」
叔父とその家族を置いて行くという苦渋の決断をしたハーマンの、エリア092に逃げるという計画に、ポールはすぐに乗った。一方でハワードと、状況を説明したジェームズはまだ考えていた。
「俺の妹…エリーゼに、恋人が出来たみたいなんだ」
ハワードの妹であるエリーゼは12歳の大人しく小柄な少女で、中学1年生だった。ハワードはそんな愛らしい妹の初恋の相手を、見捨てたく無かったのだ。
「初恋の相手?中学生の恋愛に本気になる事無いだろ」
「しかしエリーゼは彼の事を…クリスの事を本気で想っているみたいなんだ」
ハワードは、エリーゼがクリスの家に泊まって帰ってきた後に雰囲気が変わった事を知っていた。ハワードと家族はかなり動揺したが、エリーゼがクリスの事を心の底から愛している証だった。
「ハワードの話は後にして、ジェームズの親は?」
「無理だろうな。俺の肉親はいなくなるから、ハーマンの家に世話になるよ」
「まぁ、大丈夫だろう」
ジェームズの両親はこの期に及んで、エリア021の勝利を信じていた。兵士達の気勢が戻ると信じていたのだが、そんな訳は無かった。
エリーゼはハワードの説得に応じる事無く、クリスと一緒にエリア017に逃げて行った。クリスの家族が一緒な上に017は安全な中立地帯だったので、ハワードとその家族は無理に連れ戻そうとはしなかった。
「両親には連絡した。後はエリア092行きの列車に乗るだけだ」
「あばよ…021」
準備を済ませたハーマン達は、すぐにエリア092行きの列車に乗る事にした。本来は移動制限があったが、ジェームズの伯父が許可を出していたので、すぐに移動する事ができた。
ハーマンの両親は、息子とジェームズ達を歓迎してくれた。既に経済的には安定していたので、ジェームズが家に住む事もできた。
「本当に、ありがとうございます」
「いいのよ、ハーマンの友達なんだから」
「しかし、092への攻撃が止んだ訳では無い…心配だ」
しかし、エリア092を含む他のエリアの攻撃はすぐに止んでいった。そして7945年の総攻撃で、エリア021は滅亡する事になる。
それからは時は流れて、ハワードの妹でエリア017に行ったエリーゼはクリスと結婚して、一児の母親となった。そしてジェームズ達はすぐにエリア092に馴染む事ができて、それぞれの生活を続けるうちに、現在に至る…
「とまぁ…021からここに来れたことで、俺たちは生き延びたって訳だ。大体、俺のおかげだな」
「ジェームズを家に住まわせてやったのは、俺の両親だろ」
爺ちゃんとジェームズさん達は、大戦とエリア021についての話を終えた。大戦当時の話を聞く事で断片的ではあるが、俺も当時の大変さを改めて知る事ができた。
「エリーゼさんはどうしてるんですか?」
「まだまだ元気そうだ。息子が結婚して孫も生まれた」
エリア017で暮らしているエリーゼさんの孫は、元気な女の子との事だった。ちなみにエリーゼさんの息子は、アニメの脚本家をやっているらしい。
「ジェームズさんは、大丈夫だったんですか?」
「あまり大丈夫じゃ無かったな。092に逃げたはいいが、伯父には見捨てられて…ハーマンのお陰で助かったぜ」
「もっと感謝して欲しいな」
爺ちゃんとその友人達は無事だったがエリア021が引き起こした戦争によって、多くの人々の命が奪われた。数多くの犠牲者を出した後でようやく、俺たち人間は自らの残酷さに気づいたのだ。
「まぁ…自分は恵まれた存在だと思えって言いたい訳じゃ無い。だが、俺たちがガキだった時代と比べれば、すごく平和だって事は知っていて欲しい」
「ジェームズさん…」
それを聞いて、平和な時代で小説を書く事ができる俺は、まだ幸せな部類なのかも知れないと想った。この世界にはまだ爪痕が残るエリアがあり、苦しんでいる人も大勢いるのだ。
「またなエドガー!たまには連絡してくれよな!」
俺はジェームズさん達と別れて、自分の家に帰って行った。俺がエリア003に向かう日は、確実に近づいていた。
11月30日の朝、俺はエリア092を発つ準備を終えた。母さんは玄関で見送って、兄であるライネスは高速鉄道の駅までついて来る事になった。
「エドガー、無理しちゃダメだからね」
「分かってるよ…行ってきます」
いざ発つとなると、急にこの家も名残惜しくなって来た気がする。しかし、俺は振り向く事はせずに、駅へと向かって行った。
「しかし、お前が一人暮らしを始めるとはな…寂しくなるな」
「兄さん…」
寒空の下を歩いていると、ライネスはしみじみとした様子で言った。俺が言葉を返す事の無いまま、駅に辿り着いた。
「あっ…」
「カエデさんは見送り…って訳じゃ無さそうですね」
改札前まで来た俺達は、全くの偶然だったがカエデに会った。カエデはリュックを背負っていたので、何か仕事があるようだ。
「カエデさんは、仕事ですか?」
「楽曲提供の関係で…向こうから相談したい事があるって言われたから」
カエデは映画とのタイアップの曲についての打ち合わせに行くらしい。どうやら映画制作のスタッフから、曲の方向性についての相談があるようだ。
「じゃあ私も忙しいし…003でも元気でね」
「うん、またいつか」
俺とカエデの別れはあっさりしたものだったが、それはお互いにまた会えると思っていたからかも知れない。そして、俺が乗る事になる列車が到着したアナウンスが聞こえてきた。
「じゃあね兄さん。そっちも元気で」
「ああ!元気が無い時は相談に乗るからな!」
俺はライネスに見送られながら、駅のホームへ向かって行った。寂しい訳では無かったが、名残惜しいと感じていた。
高速鉄道の乗り心地はかなり良く、時速950kmで移動しているにも関わらず揺れは殆ど無かった。俺は列車に乗っている間、個室の窓の外の他のエリアの景色を眺めていた。荒野もあれば森林もあり、見てて飽きるものでは無かった。
(もう13時か…昼飯を食べに行こう)
腹が減り始めた俺は、昼飯を食べる為に個室を出て食堂車へと向かった。そんなに乗客がいなかった事もあり、スムーズに移動する事ができた。
俺はメニューを一通り見て、エリア004産の牛を使った牛丼を注文した。コンビニやチェーン店で売られている物とは違う、本格的な出汁を使った絶品の牛丼だった。
(デザートも食べてみようかな…)
俺はもう一度メニューを見て、チョコレートケーキを追加注文した。注文したチョコレートケーキには、バニラアイスもついて来るようだ。
(これは本当に美味いな…)
チョコレートケーキとバニラアイスはとても美味しく、値段に見合った味だと感じた。昼食を食べ終えた俺は、個室に戻ってリクライニングシートを倒して、003に着くまで仮眠を取る事にした。
俺が目を覚ました時には既に夕方になっていて、荒廃したエリア021の景色が見えた。ここまで来たという事は、エリア003も遠く無い。
俺はまた個室の窓から、外の景色を眺める事にした。エリア017の栄えた街並みや、2本の整備された軌道エレベーターを見る事もできた。
エリア006の辺りに差し掛かると、雪が降り始めた。そして車内アナウンスは、終点であるエリア003にもうすぐ到着すると放送した。
(004の景色は綺麗だな…)
俺は電車を降りる支度をしながら、エリア004の景色を眺めていた。004の遺跡の中にはライトアップされている物もあり、とても幻想的だった。
「あ…」
エリア003に差し掛かり、俺は雪が降っている事に気づいた。取り敢えず俺は、急いで保湿用クリームを塗る事にした。
エリア003に到着して、俺は駅のホームに降りた。すぐに寒風を感じて、既に003は冬なのだと実感した。
(流石に寒いな…)
俺は暑い方より寒い方がマシと考えていて、夏よりも冬の方が好きだった。それでも寒いものは寒いので、足早に俺が住む事を許可してくれた洋食店に向かった。
遠くからも見える、花を象った巨大なソーラーパネル。それを見た俺は、エリア003に来たのだと実感した。
「君がライネスの弟だね。僕はエドワード・アーソ。歓迎するよ」
「ありがとうございます」
俺はエドワードさんが経営している洋食店の2階の部屋に住まわせてもらう事になっていた。荷物を運び終えた時には既に夜8時になっていたが、エドワードさんが俺の分の夕食を作ってくれた。
「これは…美味しいです」
「まぁ、洋食屋だからね」
エドワードさんが作ってくれたのは、オムライスだった。特製のデミグラスソースをかけたオムライスは極端に個性的なものでは無く、安心して食べられる物だった。
オムライスを食べ終わった俺は、自分が住む部屋に向かった。小さな部屋だったが、俺も贅沢を言うつもりなんて無かった。
「おお…」
それにこの部屋からは、エリア003の街並みを眺める事ができるのだ。遠くにはソーラーパネルも見える、美しい雪景色だった。
俺はシャワーを浴びて体を洗った後、エドワードさんにおやすみなさいと伝えて自分の部屋に戻った。
(取り敢えず兄さんには、無事に着いてこれから寝るところだって伝えて…)
俺はライネスに到着してもう眠るとメッセージを送った後、そのままベッドに横になった。長旅でかなり疲れていた俺は、そのまま眠りについた…
「兄さん…ありがとう」
ライネスは以前世話になっていたエリア003の店に俺が住めるように頼んでいたが、許可を貰えたとの事だった。今回については、兄に対して心の底から感謝していた。
「向こうの店は洋食店なんだっけ」
「ああ、まあそんなに忙しい店じゃ無いし、大丈夫だろ」
俺は料理は最低限のレベルはできるし、配膳に関してもやれない事は無い。勿論、俺には繁盛しているファミレスの店員の様に食器を運ぶのは不可能だったが。
「向こうにはいつ行くんだ。それも連絡しとかないと…」
「8010年11月30日がいいかな」
年末の忙しくなる前に移住したかったので、12月になる直前に移住したかった。勿論、自分の希望が通るとも限らない事は分かっているが。
「向こうの部屋からは街の景色を見渡せるんだよね」
「ああ、それなりにいい景色だぞ」
今住んでいる家の立地が悪い訳では無いが、窓からの景色は普通だった。その為、街の景色を一望できる部屋に住む事が楽しみだった。
「高校の卒業は大丈夫だから…後は予定通りに移住できれば…」
「連絡はしてみるが…向こうの都合にもよるからな」
俺は高校の残りの授業は通信制に変更してもらうように、手続きをしていた。別に卒業式に出る事は強要され無いので、高校に行く必要になる可能性は低くなる。
「出発の予定日まで、まだ時間はあるだろう。それまでどうするんだ?」
「色んな人に会っておくよ」
エリア092で暮らす人々としばらく会えなくなる事は、もう決まっている。親しい仲の人は少ないが、だからこそ会っておきたかったのだ。
「別れの挨拶をして回るのか。ありきたりって感じだな」
「…それ以外に思いつかない」
少し前の俺だったら、知り合いに挨拶するなんて思いつきもしなかっただろう。今の俺は、人との繋がりを少しずつではあるが、意識し始めていた。
「知り合いとの挨拶もいいけど、俺と一緒にもう一回くらいゲームするのもいいと思うぞ」
「それもいいね」
エリア092から向こうへは、自分の携帯ゲーム機だけを持って行くことになっていた。だから兄であるライネスと対戦ゲームをするのは、当分の間はできなくなるのだ。
「心残りの無いようにな」
「分かってる」
別れの挨拶をするだけで名残惜しくなってしまうかもしれないが、それでも後悔はしたくなかった。俺は移住予定日までに、会っておきたい人には挨拶に行く事にした。
「えっ…お前引っ越すの?」
「うん」
8010年11月23日の午後、俺は同じ文芸部の部員であったダニエルに会いに行った。やはりと言うか、ダニエルは驚いた様子を見せていた。
「この話、クラスの連中には伝えたのか」
「いや、伝えたところで意味ないだろうし」
同じクラスの人間には、話したいとは思わなかった。特に親しい人間もいないし、引っ越すと伝えても聞き流されるだけだからである。
「向こうのエリアの学校に通うのか?」
「いや、洋食店に住み込みで働く事になった」
「…お前に接客ができるのか?」
「…そんなに忙しい店じゃ無いと聞いている」
俺がどんな人間か知っているダニエルは不安そうだった。しかし、今の俺は何とか上手くやっていけるのでは無いかと考えていた。楽観的に考えているところは、ダニエルに似てきたのかも知れない。
「エリア003って…でかいソーラーパネルがあるんだっけ」
「そんだけ知ってればいいと思う」
ダニエルはエリア003の事はあまり知らないようだ。俺はライネスから聞いた003の事について、いくつか話した。
「マジか…滅茶苦茶ブラックじゃん」
「うん…僕がやる仕事はそんな事無いだろうけど」
ライネスから聞いたソーラーパネルのメンテナンス業務について話したら、ダニエルも相当驚いていた。大型ソーラーパネルの維持は、全て機械によって行われていると思っていたらしい。
「そう言えば向こうってアニメの放送してんのかな…」
「見れない作品もあると思う」
現在のアニメーション作品の多くは、エリア017で製作されている。漫画のアニメ化や、ゲームにおけるアニメーションのシーンの製作なども、017の企業に委託される場合が多い。
「ダニエルは進学するんだよな」
「ああ、取り敢えずな」
ダニエルはこのまま大学に進学すると決めていた。特にやりたい事がある訳では無く、専門学校という選択肢も外していたらしい。
「アニメーターを目指すのは…」
「アニメーターはブラック環境らしいからヤダ」
ダニエルは即答していたが、まぁそう考えるのも仕方ないとは思う。未だに環境の改善が見られない事は、様々なエリアで深刻視されている。
「でも…ゲーム関係の仕事を目指すのもありかな…」
俺は、ダニエルがゲームもそれなりに遊んでいる事を知っていた。特別数多くの作品をプレイしている訳では無かったが、ゲームが好きなのは明らかだった。
「…シナリオライターでも目指すのか?」
「お前、本気で小説家目指してんだろ?俺もそういう仕事を考えてみようと思ったんだ」
ダニエルは以前とは打って変わって、ゲームのシナリオライターになる事も考えていた。俺は、そこまで特定の作品に思い入れの無い彼だからこそ、いい物語を書けるのでは無いかと思っている。
「じゃあ、向こうでも体を壊さない程度に頑張れよ」
「ああ、じゃあな」
ダニエルと俺は別れの挨拶をして、背中合わせに歩き始めた。所詮、高校時代の友人だから、もう会う事は無いのかも知れない。それでもお互いに、振り返る事は無かった。
8010年11月24日、俺は朝早くに家を出て、OLDstarに来ていた。フードメニューの中に気になる物があって、朝食に食べたいと思っていたのだ。
「カモミールティーとソーセージ&スクランブルエッグサンドを一つで」
俺は頼んでいる物が来る間にも、小説を書き進める。敵である小人族の描写をどうするかについて悩んでいるのだ。
(ここで、敵側の心理描写を入れるのは不自然過ぎる…やはり死亡した後にするしか無いか)
俺は未だに書くのが苦手な、戦闘シーンを書き進めていた。小人族の軍の指揮官が倒されるシーンを書き終えたところに、注文していたカモミールティーとエッグサンドが来た。
(キリもいいし、食べるか)
俺はカモミールティーを一口飲んだ後、エッグサンドを食べ始めた。エッグサンドに挟まっているソーセージパティはしっかりとした食感で、トマトソースやチェダーチーズの味と合っていて、中々に美味しかった。
(さて…負けた側の回想を…)
俺は敵である小人族を悪人として描くのは避ける様にしていた。敵の方にも非道を行う理由があるとしているのだが、それで読者から気に入られるかどうかは分からない。
古の時代の小人族は多種族からの迫害を受けていて、自分達の身を守る事に必死だった。だからこそ他種族の動きに敏感で、いつ自分達の国が侵略されるか分からないと考えている。
(とは言え、これまでの小人族の仕打ちを見てきた読者がどう思うか…)
多くの読者が、既に小人族は悪人として認識している可能性もあり、今更同情を誘うのかと言われる可能性もある。いっその事本編に組み込まず、外伝で描くという案も考えられるが…
(いや、読者がどんな感想を抱いても自由だし本編で描こう)
俺は本編内で、敵役の小人族の描写を書き加える事にした。カモミールティーにはリラックス効果があるらしく、何となく落ち着く事ができた。
(さて…そろそろ帰るか)
エッグサンドを食べ終わり、カモミールティーも飲み終えた俺は、会計を済ませてOLDstarから出て行った。雲ひとつ無い空の下は寒く、冬がすぐ側まで迫っている事を実感させられた。
「エドガー、ゲームでもやらないか?」
「…仕事はいいの?」
家に帰って来て休んでいる俺に、ライネスはゲームをやらないかと声をかけた。今のライネスは、在宅勤務の最中のはずなのだが…
「いや、別にやらなくていい仕事なんだ。そういう仕事を押し付けられる事もあるんだよ」
「なるほどね…」
俺はゲーム機を起動させて、コントローラーを持って来た。俺とライネスは、2人で対戦する準備を始めていた。
「お前は前と同じキャラか?」
「うん」
ライネスも以前と同じで、リュウジを使用するつもりのようだった。俺も前と同じキャラを使って、ライネスと勝負する事にした。
今回の俺は、ライネスと互角に戦う事ができていた。ライネスが手を抜いている訳では無く、俺の実力が上がっていたのだ。
「兄さん、調子悪いの?」
「ああ…そんなところだ」
たが、今日のライネスは明らかに本調子では無かった。俺は兄に何か思うところがあるのか、気になっていた。
「何というか…流石に寂しくなるなって…」
「兄さん隙だらけ」
ライネスは心ここに在らずといった感じだったので、容赦なくライフポイントをゼロにした。ライネスは唖然とした様子で、戦績確認画面を見ていた。
「お前…俺が考え事してる隙を突きやがって…」
「対戦中に考え事する兄さんが悪い」
隙を突かれて憤ったライネスは、ようやく本気を出し始めた。やはり本気のライネスのコマンド入力のキレはかなりの物で、今度は俺が負けてしまった。
「カエデさんとの戦いも経験したんだ…今度は俺が勝つ」
「カエデさんと戦ったのは俺も同じだ!」
今回の対戦はこの前とは違い、俺が一方的に負ける回数が減っていた。カエデの操作スキルを見て、少しでも自分のものにしようと努力したのだ。
「よしっ、俺の勝ちだね」
「こっちだって負けっぱなしじゃねぇぞ…」
対戦を繰り返す内に、俺が勝った試合も増えていった。連敗したライネスは俺に勝つために、今までとは違う工夫をし始めた。
「なっ…」
ライネスが操作するリュウジは、短いコマンドによる速攻を繰り出して来た。本来のキャラクターのセオリーに従った動きでは無いが、こちらも戦略を組み直す必要が出てきた。
その後も何回も戦ったが、勝った回数が最終的に多かったのは俺の方だった。やはりと言うか、ライネスはかなり悔しそうにしていた。
「ライネスは大丈夫なの?仕事に戻らなくて」
「げっ…やばっ」
ライネスに声をかけたのは母さんで、兄は急いでパソコンの前へと戻って行った。母さんは俺とも話したい様子だったので、素直に聞いてみる事にした。
「まさかあなたが一人暮らしを始めるなんてね…」
「俺は、あなたの事は好きじゃ無かった」
俺は正直な気持ちを母さんに伝えたが、やはりショックを受けていた。たが、ここで言っておかないといけない事だったのだ。
「どうして…」
「中学まではやたら成績の事気にしてたのに、高校生になった途端に変わったから。俺の事が期待外れだった?」
俺は思いの丈を母さんにぶつけたが、遮られる事は無かった。母さんは静かに俺の言葉を聞いている様子だった。
「私たちの…私のせいで、あなたは傷ついた?」
「うん。気づかなかったんだね」
母さんは、自分の育て方について反省しようとしているようだ。だが、今更白々しい謝罪を受けるつもりなど、俺には無かった。
「私は、結局分からないままね…」
「そうなんだ」
子育てのやり方で正しいものが何なのか、結局母さんには分からなかったようだ。勿論、親になった事のない子供である俺に聞かれても、分かるわけが無いのだが。
「でも、あなたの事が嫌いな訳でも無い」
「エドガー…」
嫌いじゃないというのも、俺の正直な気持ちの一つだった。母さんは俺の言う事を、不安そうにしながら聞いていた。
「ただ…あなたの事を好きになる事も無いと思う。これはどっちかが悪いとか、そう言う話でもない…家族というものが難しいってだけ」
「そう、ね…そう、かもね」
母さんは俺の言葉を聞いて、度々頷いているみたいだった。母さんなりに、俺の言葉を噛みしめているのだろう。
「父さんと話したい事は…」
「話したい事は無い」
父さんはいつからか俺に対して、明らかに無関心になっていった。俺も父さんの事は無意識のうちに、避ける様になっていった。
「辛い事があったら、誰かに言ってね」
「それくらい分かってる」
俺はもう1人で抱え込まずに、兄であるライネスや爺ちゃんや婆ちゃんに相談すると決めていた。とは言えその中に母さんが含まれているかと言うと、微妙なところではあるが。
「俺は自分の生き方を決めたから」
母さんは、今度は何かを言おうとする事は無かった。俺は自分なりに小説家を目指しながら生きていくと決めたのだ。
この日の夜、出張から帰って来た父親と廊下ですれ違った。俺は声をかけるつもりは無かったが、向こうから声をかけて来た。
「エリア003に引っ越すらしいな」
「うん」
俺の父親…ケンジ・メイソンに聞かれたので、素直に答えた。しかし父親はそのまま会話を続けるつもりは無かったようだ。
「そうか」
興味が無さそうな父親はさっさと歩いて、部屋へと戻って行った。いつもの事なのだが、俺はその様子が気に入らなかった。
(なんだか、筆が乗らない…)
俺は父親の態度にイライラしているせいで、小説を書き進める事ができないでいた。勿論、家庭環境としてはマシな方ではあるのだろうが…
「いつからだったかな…父さん、家族に対してあんな態度を取るようになって」
母さんはそう言ったが俺は、なぜこの人はあんな人間と結婚したんだと思っていた。父親も高校入学までは俺の成績を気にしているような素振りを見せていた。
「あんな風には、なりたく無い…」
俺からすれば、父親は社畜同然の存在に成り果てた男だった。朝から晩まで忙しそうに働いて疲れ果てている様子には、見てる方がうんざりさせられた。
(そう言えば013の出身なんだよな…)
父親がエリア013の出身である事は、俺も知っていた。エリア013で生まれ育った人間が皆あんな感じでは無いのは、俺はカエデを見て知っているのだが…
エドガーの父親であるケンジ・メイソン…013風に旧姓を言えば、佐藤健二はエリア013における中流階級の出身だった。ケンジの家庭は特別貧しい訳では無かったが、親からの愛を十分に受ける事はできなかった。
「おい…誰のおかげでカタギの連中が生きていけると思ってんだ?」
「すみません…今月分です」
ヤクザによって重税を課されて、金を奪われているのはケンジの家も同じだった。ケンジは一度歯向かおうとしたが、結局睨まれただけで無意味に終わった。
「あの人達に逆らうなんて…彼らのお陰で、抗争に巻き込まれずに暮らせているのよ」
「分かってるけど…」
ヤクザを恐れている母親は、ケンジの事を叱るだけだった。常に何かに怯えているように見える父親も、同意見みたいだった。
「ケンジ!エリア092に行くというのは本当なのか?!」
「私達を見捨てて逃げて行くの?!」
高校を卒業したケンジは一人でエリア092に引っ越して、そこの大学に進学した。エリア092でこれから生きていくと決めたケンジは、092の一般企業に就職した。
「エドガーの父さんって、そういう人なんだ。私も013で育ったから、そういう人はいっぱい見てきたよ」
「ケンジはヤクザにずっと支配されている土地で生まれ育った…逆らう事自体が苦手なのかもな」
8010年11月26日の昼、俺はまた爺ちゃんと一緒に喫茶店に来ていた。そこには、待ち合わせをしていたジェームズさん達だけで無く、カエデも来ていた。
「でもカエデさんは、俺の父さんとは…」
「私は少し特別なのかもしれないね」
エリア013では犯罪の被害に遭っても、犯人がヤクザの関係者なら泣き寝入りする事になる。恐怖を以って被害者の声を止める、恐ろしい社会なのだ。
「別のエリアの話か?なら俺の武勇伝を聞かせてやるよ」
「エリア021の話か?」
エリア021と言えば、既に滅んで稼働を停止したエリアのはずだ。ポールさんがどれほど昔の話をするのか、俺は興味を持ち始めていた。
「ちょっと待ってくれ。先にカレーを食べときたい」
ポールさんが食べている物と同じカレーライスを、俺は今回も食べていた。そこまで特徴的な味では無いからこそ、飽きる気配が無いのだ。
「7930年…あの頃はエリア間の戦争も起きていた時期だったな…」
「…その時のゴタゴタで、エリア013の頂点はヤクザのものになった」
俺はその時代の歴史については、よく知っていた。数学は苦手だったが、歴史について学ぶ事は嫌いでは無かった。
「カレーも食い終わったし、あの時代について話すか…」
俺もカレーライスを食べ終わっていたので、ポールさんの話を聞く事にした。実際に戦時中を経験している人の話を聞いた事は、あまり無かったのだ。
7930年頃のエリア021は、他のエリアへの攻撃を行い始めていた。別のエリアの資源を手に入れる為の、侵略行為だった。
「遂に092にも空爆が…」
「ハーマンは無事なのかしら…」
その時代の大戦には092を含む、多くのエリアが巻き込まれる事になった。巻き込まれなかったエリアは、中立のエリアである017や存在感の薄い112くらいしか無かった。
「ハーマンは092で暮らしてるジョンの家にいる…少なくとも今すぐ帰って来れる状況じゃ無い」
ハーマンの両親は経済的な事情で、エリア021で暮らしている父親の弟で、息子にとっては叔父に当たる、ジョンの家にハーマンを預けていた。ジョンは信用に当たる人物だったが、エリア021の上層部を信頼する事はできなかった。
7944年、ハーマンは16歳になってエリア021にある高校に通い始めていた。ハーマンはそこでジェームズ達という、友人を得る事ができていた。
「ジェームズもポールも、少しは落ち着けよ」
「早くしろよ!新作のゲームが売り切れちまうだろ!」
ハーマンはジェームズやポール、そしてハワードと一緒にゲームをしたりしながら遊ぶ毎日を過ごしていた。戦時下ではあったが、楽しみを見つけて生きていく事ができていた。
「戦争は、膠着状態になっているらしい。いつ終わるんだろうな…」
「その内、向こうが降伏するだろ。なぁ、ジェームズ」
「ああ…そうだな」
ハワードやポールが知らず、ジェームズだけが知っている事実があった。戦況は膠着状態になっておらず、エリア021が不利な状況になっているという事だった。
ジェームズの両親は軍属の人間だった為に、ジェームズを戦況を知る事が出来た。今回の戦争に関するある事実を知ったジェームズは、ハーマン達に打ち明ける事にした。
「このままじゃ、021は戦争に負ける。どんな報復が行われるか分からない」
「何だって…?!」
ジェームズは戦況の悪化を、ハーマン達に伝えた。当然ながらハーマン達は動揺して、この後何が起こる可能性があるのかを聞いた。
「他のエリアの軍隊が021に乗り込んでくるかも知れない。そうしたらこのエリアで暮らしている人々にどんな被害が出るか…」
「どうすればいい…どこに逃げればいい?!教えてくれ‼︎」
ジェームズの話を聞いたポールは、すぐ彼に詰め寄ってどうすればいいか聞いた。ジェームズは落ち着くように言ってから、説明を始めた。
「俺が伯父さんに頼んで、別のエリアへの移動の許可をもらう。たが難民の大量発生を防ぐ為にも、俺達と家族の分の許可しか下りないだろう…」
「俺の叔父の説得は無理だが…両親ならエリア092で暮らしている」
「そこに行こう!ハーマンの両親なら、きっと助けてくれるはずだ!」
叔父とその家族を置いて行くという苦渋の決断をしたハーマンの、エリア092に逃げるという計画に、ポールはすぐに乗った。一方でハワードと、状況を説明したジェームズはまだ考えていた。
「俺の妹…エリーゼに、恋人が出来たみたいなんだ」
ハワードの妹であるエリーゼは12歳の大人しく小柄な少女で、中学1年生だった。ハワードはそんな愛らしい妹の初恋の相手を、見捨てたく無かったのだ。
「初恋の相手?中学生の恋愛に本気になる事無いだろ」
「しかしエリーゼは彼の事を…クリスの事を本気で想っているみたいなんだ」
ハワードは、エリーゼがクリスの家に泊まって帰ってきた後に雰囲気が変わった事を知っていた。ハワードと家族はかなり動揺したが、エリーゼがクリスの事を心の底から愛している証だった。
「ハワードの話は後にして、ジェームズの親は?」
「無理だろうな。俺の肉親はいなくなるから、ハーマンの家に世話になるよ」
「まぁ、大丈夫だろう」
ジェームズの両親はこの期に及んで、エリア021の勝利を信じていた。兵士達の気勢が戻ると信じていたのだが、そんな訳は無かった。
エリーゼはハワードの説得に応じる事無く、クリスと一緒にエリア017に逃げて行った。クリスの家族が一緒な上に017は安全な中立地帯だったので、ハワードとその家族は無理に連れ戻そうとはしなかった。
「両親には連絡した。後はエリア092行きの列車に乗るだけだ」
「あばよ…021」
準備を済ませたハーマン達は、すぐにエリア092行きの列車に乗る事にした。本来は移動制限があったが、ジェームズの伯父が許可を出していたので、すぐに移動する事ができた。
ハーマンの両親は、息子とジェームズ達を歓迎してくれた。既に経済的には安定していたので、ジェームズが家に住む事もできた。
「本当に、ありがとうございます」
「いいのよ、ハーマンの友達なんだから」
「しかし、092への攻撃が止んだ訳では無い…心配だ」
しかし、エリア092を含む他のエリアの攻撃はすぐに止んでいった。そして7945年の総攻撃で、エリア021は滅亡する事になる。
それからは時は流れて、ハワードの妹でエリア017に行ったエリーゼはクリスと結婚して、一児の母親となった。そしてジェームズ達はすぐにエリア092に馴染む事ができて、それぞれの生活を続けるうちに、現在に至る…
「とまぁ…021からここに来れたことで、俺たちは生き延びたって訳だ。大体、俺のおかげだな」
「ジェームズを家に住まわせてやったのは、俺の両親だろ」
爺ちゃんとジェームズさん達は、大戦とエリア021についての話を終えた。大戦当時の話を聞く事で断片的ではあるが、俺も当時の大変さを改めて知る事ができた。
「エリーゼさんはどうしてるんですか?」
「まだまだ元気そうだ。息子が結婚して孫も生まれた」
エリア017で暮らしているエリーゼさんの孫は、元気な女の子との事だった。ちなみにエリーゼさんの息子は、アニメの脚本家をやっているらしい。
「ジェームズさんは、大丈夫だったんですか?」
「あまり大丈夫じゃ無かったな。092に逃げたはいいが、伯父には見捨てられて…ハーマンのお陰で助かったぜ」
「もっと感謝して欲しいな」
爺ちゃんとその友人達は無事だったがエリア021が引き起こした戦争によって、多くの人々の命が奪われた。数多くの犠牲者を出した後でようやく、俺たち人間は自らの残酷さに気づいたのだ。
「まぁ…自分は恵まれた存在だと思えって言いたい訳じゃ無い。だが、俺たちがガキだった時代と比べれば、すごく平和だって事は知っていて欲しい」
「ジェームズさん…」
それを聞いて、平和な時代で小説を書く事ができる俺は、まだ幸せな部類なのかも知れないと想った。この世界にはまだ爪痕が残るエリアがあり、苦しんでいる人も大勢いるのだ。
「またなエドガー!たまには連絡してくれよな!」
俺はジェームズさん達と別れて、自分の家に帰って行った。俺がエリア003に向かう日は、確実に近づいていた。
11月30日の朝、俺はエリア092を発つ準備を終えた。母さんは玄関で見送って、兄であるライネスは高速鉄道の駅までついて来る事になった。
「エドガー、無理しちゃダメだからね」
「分かってるよ…行ってきます」
いざ発つとなると、急にこの家も名残惜しくなって来た気がする。しかし、俺は振り向く事はせずに、駅へと向かって行った。
「しかし、お前が一人暮らしを始めるとはな…寂しくなるな」
「兄さん…」
寒空の下を歩いていると、ライネスはしみじみとした様子で言った。俺が言葉を返す事の無いまま、駅に辿り着いた。
「あっ…」
「カエデさんは見送り…って訳じゃ無さそうですね」
改札前まで来た俺達は、全くの偶然だったがカエデに会った。カエデはリュックを背負っていたので、何か仕事があるようだ。
「カエデさんは、仕事ですか?」
「楽曲提供の関係で…向こうから相談したい事があるって言われたから」
カエデは映画とのタイアップの曲についての打ち合わせに行くらしい。どうやら映画制作のスタッフから、曲の方向性についての相談があるようだ。
「じゃあ私も忙しいし…003でも元気でね」
「うん、またいつか」
俺とカエデの別れはあっさりしたものだったが、それはお互いにまた会えると思っていたからかも知れない。そして、俺が乗る事になる列車が到着したアナウンスが聞こえてきた。
「じゃあね兄さん。そっちも元気で」
「ああ!元気が無い時は相談に乗るからな!」
俺はライネスに見送られながら、駅のホームへ向かって行った。寂しい訳では無かったが、名残惜しいと感じていた。
高速鉄道の乗り心地はかなり良く、時速950kmで移動しているにも関わらず揺れは殆ど無かった。俺は列車に乗っている間、個室の窓の外の他のエリアの景色を眺めていた。荒野もあれば森林もあり、見てて飽きるものでは無かった。
(もう13時か…昼飯を食べに行こう)
腹が減り始めた俺は、昼飯を食べる為に個室を出て食堂車へと向かった。そんなに乗客がいなかった事もあり、スムーズに移動する事ができた。
俺はメニューを一通り見て、エリア004産の牛を使った牛丼を注文した。コンビニやチェーン店で売られている物とは違う、本格的な出汁を使った絶品の牛丼だった。
(デザートも食べてみようかな…)
俺はもう一度メニューを見て、チョコレートケーキを追加注文した。注文したチョコレートケーキには、バニラアイスもついて来るようだ。
(これは本当に美味いな…)
チョコレートケーキとバニラアイスはとても美味しく、値段に見合った味だと感じた。昼食を食べ終えた俺は、個室に戻ってリクライニングシートを倒して、003に着くまで仮眠を取る事にした。
俺が目を覚ました時には既に夕方になっていて、荒廃したエリア021の景色が見えた。ここまで来たという事は、エリア003も遠く無い。
俺はまた個室の窓から、外の景色を眺める事にした。エリア017の栄えた街並みや、2本の整備された軌道エレベーターを見る事もできた。
エリア006の辺りに差し掛かると、雪が降り始めた。そして車内アナウンスは、終点であるエリア003にもうすぐ到着すると放送した。
(004の景色は綺麗だな…)
俺は電車を降りる支度をしながら、エリア004の景色を眺めていた。004の遺跡の中にはライトアップされている物もあり、とても幻想的だった。
「あ…」
エリア003に差し掛かり、俺は雪が降っている事に気づいた。取り敢えず俺は、急いで保湿用クリームを塗る事にした。
エリア003に到着して、俺は駅のホームに降りた。すぐに寒風を感じて、既に003は冬なのだと実感した。
(流石に寒いな…)
俺は暑い方より寒い方がマシと考えていて、夏よりも冬の方が好きだった。それでも寒いものは寒いので、足早に俺が住む事を許可してくれた洋食店に向かった。
遠くからも見える、花を象った巨大なソーラーパネル。それを見た俺は、エリア003に来たのだと実感した。
「君がライネスの弟だね。僕はエドワード・アーソ。歓迎するよ」
「ありがとうございます」
俺はエドワードさんが経営している洋食店の2階の部屋に住まわせてもらう事になっていた。荷物を運び終えた時には既に夜8時になっていたが、エドワードさんが俺の分の夕食を作ってくれた。
「これは…美味しいです」
「まぁ、洋食屋だからね」
エドワードさんが作ってくれたのは、オムライスだった。特製のデミグラスソースをかけたオムライスは極端に個性的なものでは無く、安心して食べられる物だった。
オムライスを食べ終わった俺は、自分が住む部屋に向かった。小さな部屋だったが、俺も贅沢を言うつもりなんて無かった。
「おお…」
それにこの部屋からは、エリア003の街並みを眺める事ができるのだ。遠くにはソーラーパネルも見える、美しい雪景色だった。
俺はシャワーを浴びて体を洗った後、エドワードさんにおやすみなさいと伝えて自分の部屋に戻った。
(取り敢えず兄さんには、無事に着いてこれから寝るところだって伝えて…)
俺はライネスに到着してもう眠るとメッセージを送った後、そのままベッドに横になった。長旅でかなり疲れていた俺は、そのまま眠りについた…
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