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プロローグ

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8010年5月24日、その日は俺…エドガー・メイソンの18歳の誕生日だった。その日に俺が所属していた文芸部が、部員が足りない事により正式に廃部となった。
俺が通っているエリア092アカデミーでは、圧倒的に運動部の方が人気で、人が集まらない文化部の中でも、文芸部は物凄く不人気だった。
という訳で元々覚悟ができていたためか、いざ廃部になっても特に悲しくは無かった。自分が部活を続けていた理由にも惰性があったので、そう言った意味ではスッキリしたと言えるかもしれない。
「よぉ…文芸部…潰れちまったな」
「ダニエル…」
話しかけて来たのはダニエル・ナカタニ、俺と同じ文芸部に所属している三年生だった。文化祭の度に、二次創作とはいえ作品を発表して顧問からの評価が高かった記憶がある。
「引退する前に部が無くなったのは残念だけど…これで受験に専念できるな」
「受験…ね」
俺の将来のビジョンは、まだぼんやりとしたものだった。一応、俺は小説家になりたいという願望を心の内側に秘めていて、それもあって文芸部に入部したのだ。
「そう言えば…ダニエルはどうするか決めたのか?」
「うーん…取り敢えず進学しようとは思ってるけど」
ダニエルの書いていた作品は全て二次創作だったが、文章のバリエーションに関しては俺よりも多彩だった。文化祭で発表した時には、俺が書いたオリジナルのファンタジー戦記ものはそもそも読まないか途中で読むのをやめていた人が多くて、誰も感想カードを書かなかったのに対して、ダニエルが書いたアニメ作品の二次創作の小説は最後まで読む人が多くて、感想カードが多く寄せられていた。読み比べて分かったが、単純にダニエルの書いた作品の方が面白かったのだ。
「小説は書き続けるのか?」
「いや?もう書かないぞ。文芸部潰れたし」
俺からすればダニエルがもう小説を書かないというのは、とても勿体無い事のように思えた。俺の中では、二次創作においても既存のキャラクターに対する理解が深く、文章を書く才能もある彼は「物語」を作る人を目指すのだと思っていた。
「小説家にならなくても…アニメの脚本家とか、ゲームのシナリオライターとかは目指さないのか」
「うん。それやって成功するか分からないし、成功しても金になるかどうかも分からないからな」
金。君もそのワードを出すのか。俺はショックを受けていた。同時に、世の中の人間の大半が金を稼ぐために、"生きる為に"生きている事を思い出した。

ダニエルの別れて家に帰った俺はしばらく悶々としていたが、部活が無くなって暇ができたと分かった。思い立った俺は、アルバイトの量を増やす事にした。
結局、俺も金を稼ぐために生きているのだ。
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