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自己紹介

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「自己紹介」


キーンコーン…カーンコーン…

ついに…ついに、この時がやってきてしまった…。
ホームルーム…
それは、地獄の始まりなのである。
俺は、天野莉真。
この学校に今日転校してきた、声と容姿が女の子っぽい男子だ。
そんな俺は、ついさっき、クラスのムードメーカー的存在の「沙羅」と呼ばれる彼女に、ちょっぴり目をつけられたみたいだ。
さて、地獄の始まりとは?
それは、転校初日の魔の自己紹介である。
ホームルームと一限目を使って、クラス全員自己紹介しなくてはならない。
そんなことを考えながら、先生の朝の話が終わるのをじりじりと待つ。

「──なので、準備しておくように。
さて、今日はもう一つ話がある。新たなクラスメイトとなる、転校生がきたぞ。
さ、天野、こっちに」

さぁ…来たぞ…!!!
俺は黒板の前にたつ。
すると、奥の席で彼女がウィンクした。
もう、恥ずかしすぎる…
また女子って言われるかも…
でも、自己紹介はしよう。
そう思って、俺は口を開けた。

「…天野莉真です。よろしくお願いします」

勇気を振り絞っていい、礼をした。
少し間はあったものの、皆拍手してくれた。
顔をあげると、如何にも興味津々そうな顔が何個も俺に向けられている。
この時、俺は自分が浮いたのを感じた。

「ありがとう。後、天野の席だが、今の席だと個別級の人が座れなくなるから、他にどこかあいている席は…」

…どうしよう、今何か立った気がする…。

「はい!先生、私と光野さんとの間の席、あいてます。」

彼女が手を挙げていった。

「おお、それは良かった。では天野くん、間にどうぞ。」

俺は先生につられ、歩いていった。
席に着くなり、彼女は言った。

「にしし…天野くんと隣の席だね?」

…むぅ、全く、誰のせいだと……
彼女はニッと笑い、

「私は、胡桃沢沙羅。よろしくね♪」

と、自分の名前を口ずさんだ。
胡桃沢沙羅…って言うんだ…

「よ、よろしく…胡桃沢さん」

俺は、なるべく低い声で話した。
すると、彼女はきょとんとした顔で、

「あれ?君、この数分で声変わりした?」

と、俺をにやっと見つめる。

「こ、声変わりじゃないです。高い声聞かれるのが嫌で、なるべく低い声をだそうと…」

俺は、また低い声で答えた。
すると、彼女は笑顔で、

「別に、高い声でも、君は君らしくいれば、それでいいじゃん」

と、俺に笑いかけた。

「あ…ありがと…」

俺はお礼を口にした。
彼女は「いいよいいよ~♪」と笑った。
…待てよ?彼女と隣の席?
彼女=人気者…
人気者=人が集まる…
人が集まる=俺にも注目が=隣だから…
……ヤバいヤバい!!
凄く嫌な予感しかしない…!!!!
俺が頭を抱えていた、その時!

「ねぇねぇ!」

と、とても可愛らしい声が聞こえた。
思わず後ろを振り返ると、ミニツインテールの、これまた胡桃沢さんと同じくらい可愛い女子が。
ん、て言うか、沙羅さんそっくりな気が。
目のライン、口の形、鼻筋、エトセトラ…
思わず呆然としていると、

「もぅ、私にも自己紹介させてよぉ~!」

と、頬を膨らませた。
すると、胡桃沢さんが、

「あ、ごめんごめん、羅衣羅!」

と言った。
「羅衣羅」と呼ばれた女子の方を見ると、

「私は、光野羅衣羅(ひかりのらいら)!莉真くん、よろしくね~!!」

と、バッと手を差し出してきた。
よくよく見ると、袖の部分が手の甲まである。
これが、俗に言う「アザト可愛い」ってやつか…。
確か、妹も「これが流行り!」とか言ってやってたな?
そんな事を考えていると、

「お~い?りーまーくーん!」

と、声をかけられた。

「あ、ごめん!考え事してた…」

む~、と、光野さんはまたほっぺたを膨らませている。
コホン、と咳払いしたかと思いきや、笑顔で

「改めて、光野羅衣羅です!天野莉真くん、よろしくね!」

と言ってくれた。
俺も、

「光野さん、これからもよろしくお願いします!」

と、頭を下げた。
…自己紹介は上手くできたのはいいものの、これからの俺の学園生活は、どうなることやら…。
俺は、キャッキャと騒ぐ教室を見回して、ため息をついた。


昼。
俺は、自分の弁当を食べようと、鞄をあさっていた。
すると、光野さんが、

「りーまーくん!一緒にお昼食~べよ?」

と、可愛らしいお弁当箱を持ってきた。
しょ、初日に女子とお昼…
これは、雷でも落ちるのでは…!?
すると、反対側から、

「天野くん、お昼、一緒に食べよう?」

と、胡桃沢さんの声が。
すると、光野さんが

「むぅ~、沙羅ちん、うち先客~!」

と、頬を膨らませた。
すると、胡桃沢さんが、

「あ、先客付き!じゃ、皆でお昼行こ!」

と 光野さんの腕を引いた。

「あ、いいね、それ~!莉真くんも行こっ♪」

と、俺も腕を引かれた。

「う、うん…」

「場所は、羅衣羅どこがいい?」

「うちは~、ん~、屋上かな!」

「じゃ、屋上行こ!」

と、トントン拍子で決まっていく。
えええ~…!!!!
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