鬼畜狼と蜂蜜ハニー

槇村焔

文字の大きさ
上 下
27 / 33
2章

しおりを挟む

「宮根先生」
「盗みぎぎかい?
感心しないな…。天音里桜くん」

「絶対に気づいてましたよね。先生は俺がずっと保健室のドアで聞き耳をたてていたこと。ちらちら視線をこちらに向けてましたよね。」
「あ、ばれてたか。
昔から君は鈴ちゃんと違って、ほんとそういう
こと聡いよね。鈴ちゃんと違って。
本当に双子なの?って昔から思ってたよ」


春彦はそういうと、里桜を保健室に招き、珈琲を入れてくれた。


「君との初めての出会いは…先輩の家にいったときだったよね」
「ずいぶん昔のことなのに、よく覚えてますね」
「記憶力には自信があるからね
それに君との出会いは衝撃的だったもの。
君は、当時先輩とつきあっていたボクのストーカーしてたよね。
今思い返しても笑えるほど、尾行してます!ってバレバレの追跡してさ。
んで、声をかけたら、『どうしたら隼人さんが僕を相手にしてくれますか』だもの…。

小学生がそんなこと言うんだよ。そりゃ、なかなか忘れられない思い出になるでしょ」

ふふふと妖艶に笑う春彦。
あの頃から、春彦は綺麗な人だった。
隼人の隣にたってもおかしくないと思うくらい、釣り合った二人だったのだ。


「昔のことです…」
「それから、色々な話をしたよね…。君の事、鈴君の事、色々聞いた。ほんと、コンプレックスの塊みたいな性格だったよね。君は。

隼人先輩は…あの頃から、誰かを常に思っていた。何人も夜の相手がいる状態で、僕もその一人だった。先輩は、手に届かない誰かの代わりに僕らを代用品にしているようだった。
しょせん、僕は身代わりだったんだよ。
先輩の本当に欲しかった人が…あの天真爛漫な鈴ちゃんだとは最近まで知らなかったけどね。
まさか先輩がロリ好きだとは思わなかった…。
でも、僕は君に言ったよね」

春彦は、投げかける。


「『君と僕とはもう会わない方がいいよ。だって、僕らはただの代用品同志なんだから
あえばお互い惨めになるだろ。だから…ね…』って言われましたね」

「そうだね…君、記憶力イイね」

そうでもありません…、と里桜は顔をふせた。
現に、今まで忘れていたのだ。
鈴が…本当の弟ではないということも。
なにもかも。
記憶の彼方に封印していた。


「今でも、好きなの…?」
「わかりません」
「わからない…?」
「はい…」

好きだった。
好きだと、欲しいと思っていたのだ。ちゃんと。


「俺、隼人さんが好きでした。でも、それは、隼人さんが、あの人の面影に似ていたからかもしれません」
「あの人…?」
「ええ…。
俺が、殺してしまった、お父さんです」

一瞬の静寂があたりを包む。
先に口を開いたのは里桜のほうで

「聞かないんですね…俺の事」
「聞く必要がないし…。人それぞれだからね。
それを聞く役目は僕じゃないと思うしね…」

必要以上に相手の事を聞かなければ、干渉もしない。
まさに春彦は隼人が〝身代わり〟に望んだうってつけの相手だったのだろう。


「ところでさ…」
「はい…?」
「さっき、隼人先輩と一緒に保健室にやってきた、スポーツ刈りの威勢のいい子…可愛いと思わない?
多分俺の知り合いの高橋の弟だと思うんだけど…。ねらっても大丈夫かな?僕、先輩みたいな危ない男より忠実なわんこタイプの方が好きなんだよね。更にいうなら若くてぴちぴちした子!うぶうぶな子を調教するのっていいよね!」

とてもいい笑顔で物騒なことを言う春彦に里桜は、それまでのシリアスな表情を一転させ、ひきつった笑みを見せるのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください

ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。 ※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【R18】ありえない恋。

羽村美海
恋愛
♪゜・*:.。. .。.:*・♪ 『いじわるドクター』のスピンオフですが単独で読んで頂けます。 ※大人表現ありの設定をしております。苦手な方はご注意下さい。 【※無断転載禁止】 ♪゜・*:.。. .。.:*・♪ 食品加工会社、松岡フーズの品質管理部主任で次期社長の直樹は、腹違いの弟と結婚、退社した部下への告げることなく散ってしまった想いを引き摺っていた。 そこへ部下と入れ替わるようにして入社してきたのは、美人で仕事は出来るが、ことあるごとに上司である直樹に突っかかってくる超絶生意気な女だった。 素直で可愛いい女が好きだった筈なのに……。 まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかった。 直樹に色々な受難が降りかかる? そんな、ありえない恋。 *焦れ焦れ大人の純愛story* 甘く切なくもどかしい不器用でハチャメチャな恋♪ 直樹と愛それぞれの視点で交互に展開しています。 ♪゜・*:.。. .。.:*・♪ <松岡直樹・マツオカナオキ>28歳 腹違いの弟に掻っ攫われた恋を引きずった、ちょっと強引で俺様気質な御曹司        VS <黒木愛・クロキアイ>22歳 いつも上司に突っかかってばかりで、男に媚びないツンデレ全開女子 ♪゜・*:.。. .。.:*・♪ ⚠「Reproduction is prohibited.(転載禁止)」 ※初期の作品です。読みにくいと思いますがご容赦いただけますと幸いです🍀

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...