先行投資

槇村香月

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先行投資・俺だけの人。

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まとまってみれば、今までが嘘のように樹の腕が心地よい。
ここが、私の居場所なんだと再認識する。
私が安らげる居場所なんだ、と。

樹が、私の誰よりも〝大切〟な人間なんだ、と。

結局、あの後、樹は私がギブアップというまで私の身体を抱き続けた。
今までの離れていたぶんを、補うかのように。
おかげで、こっちは、情事が終わった後も未だに樹のものが入っているような気がしてならないのに。
樹は、情事の最中、何度も私に愛していると囁き、きつくその腕の中に閉じ込めた。
愛情という名の、檻に。


隣に視線をやれば、樹はむにゃむにゃ、と、口元に笑みを浮かべながら、幸せそうに私を抱いて眠っていた。
その腕は、しっかりと私の腰に回されており、簡単に腕からは逃げられそうにない。

まったく。

「樹…」

小さく、樹の名を呟く。
名前を呼んだだけで、ドキドキする。

今まで散々抱き合ったのに、昨日よりも、もっとずっと、樹に対してドキドキと胸が高鳴る。

たぶん、明日はもっと、樹にドキドキするんだろう。
ずっと、ずっと。毎日樹へのスキが大きくなっていくだろう。

樹。
私の、樹。
私の大事な…、恋人。

「いつき…、」

やんわりと、樹のパジャマを握り閉めながら、樹の胸板に顔をよせる。
くしゃり、と、シャツにしわがよった。

「好きだよ…、お前が…」
「…愛してる、は…?」

ぱち、と、開かれた瞳。にやり、と上がる口角。

「また狸寝入りだったのか?」

そう問えば、樹はすりすり、と、私の頬に顔をよせる。
全く…。
狸になったり、わんこになったり、忙しいやつだ。


樹は、上目づかいで、私を見つめながら、甘えたように、

「愛してるって言ってほしい」
と強請る。その口調が、まるで、玩具がほしいといっている、子供のような口調で。
いくつになっても、甘えたな樹にくすりと微笑む。

「甘えただな…」

そういいつつも、クスクスと笑いながら、樹の手を取り、唇を重ねる。
口づけた後、樹に視線をやると、樹は嬉しそうに私を見つめていた。

一生、私はこのわんこに叶いっこない。
愛している。
ほかの、誰よりも。
誰よりも、愛しすぎて、愛おしい。
私の息子で、恋人で、甘えたなわんこ。

「ね、公久さん、ちゅーしよ…」

「…ああ」

やんわりと手を握る。指までからめて。
そっと、キスを交わす。
キラリ、と樹と私の薬指にはめている指輪が視線に映った。

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みんなの感想(1件)

ぴのこっす
2023.03.02 ぴのこっす

ヤンデレのタグがあったので、読み始めてみたら見事にハマってしまって
1日で全部読んじゃいました笑
リクエストなのですが、蒼真がどタイプすぎて
蒼真と結ばれるifルートみたいなものをかいて欲しいです!
地雷だったら全然無視して下さって構わないです!

解除
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